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淡々三国志  作者: ンバ
魏書第十、荀彧伝
299/603

註十三後、伏皇后の密謀と荀彧との確執?

註13-3.

彧德行周備,非正道不用心,名重天下,莫不以爲儀表,海內英儁咸宗焉。司馬宣王常稱書傳遠事,吾自耳目所從聞見,逮百數十年間,賢才未有及荀令君者也。前後所舉者,命世大才,邦邑則荀攸、鍾繇、陳羣,海內則司馬宣王,及引致當世知名郗慮、華歆、王朗、荀恱、杜襲、辛毗、趙儼之儔,終爲卿相,以十數人。取士不以一揆,戲志才、郭嘉等有負俗之譏,杜畿簡傲少文,皆以智策舉之,終各顯名。荀攸後爲魏尚書令,亦推賢進士。太祖曰:「二荀令之論人,久而益信,吾沒世不忘。」鍾繇以爲顏子旣沒,能備九德,不貳其過,唯荀彧然。或問繇曰:「君雅重荀君,比之顏子,自以不及,可得聞乎?」曰:「夫明君師臣,其次友之。以太祖之聦明,每有大事,常先諮之荀君,是則古師友之義也。吾等受命而行,猶或不盡,相去顧不遠邪!」


(訳)

荀彧は徳、行いともあまねく備わり

正道でなくば心を動かさなかった。


その名は天下に重く、

儀表(手本)とせぬ者は莫く、

海内の英俊はみな彼を中心とした。


司馬宣王(司馬懿)は常に


「書物に伝えられた事や遠くの出来事で

吾が耳目にて聞いたり見たりしてきたものは

百数十年間に及ぶが、賢才において

いまだ荀令君に及ぶ者はいない」


と称えていた。


前後に渡って推挙した者は

世に冠たる大才ばかりであり、

同郷の者は則ち荀攸じゅんゆう鍾繇しょうよう陳羣ちんぐん

海内からは司馬宣王、及び

当世において名を知られた

郗慮ちりょ華歆かきん王朗おうろう荀悦じゅんえつ杜襲としゅう辛毗しんぴ趙儼ちょうげん

といったともがらを招致し、

最終的に卿相となった者は十数人であった。


士を選び取る際は

(評価基準が)一律ではなく、

戯志才ぎしさい郭嘉かくからは世俗に背いて

誹謗を受けており、

杜畿ときは傲慢で文飾は少なかったが

皆、智謀の士として推挙され、

最終的にはそれぞれ名を顕らかにした。


荀攸はその後、魏の尚書令となり

彼もまた賢人や進士を推挙した。


太祖は


「二荀(荀彧と荀攸)が論じた人物評は

久しくしてからますます信頼感が出てくる。


吾は世を去っても

(荀彧と荀攸の言葉を)忘れないぞ」


鍾繇は顔子がんし顔淵がんえん)が没して以来

よく九徳を備え、過失が二つとない者は

ただ荀彧だけであるとした。


或る者が鍾繇に問いて言った。


「君はつねに荀君を重んじ

顔子に比されて、自らの

及ぶ所ではないとしておりますが、

そのわけをお聞かせください」


鍾繇は答えた。


「そもそも名君は臣下を師とし、

臣下を友とするのがそれに次する。


太祖の聡明さを以ってしても

大事が起こるたび、常に

まず荀君に諮問するが、これは則ち

古の師友の道義なのだよ。


吾らが命を受けて実行しても

なお盡くは達成出来ない事があるのに

(全くミスすらしない荀彧と我々の)

互いに離れている事は、

思うになんと遠きことか!」



(註釈)

あの司馬懿をして

「荀彧さんより頭いい人見たことない」


鍾繇をして

「九徳を修め、二つと失敗がないのは

顔回を除けば荀彧だけだ。


あの曹操様がいつも真っ先に

荀彧に意見を聞きに行くのは

彼を師友と見なしているから。


後から指示を受ける俺たちでも

命令を遂行できない事あるのに

荀彧は手落ちが全くない、化け物だよ」


曹操、

「荀彧と荀攸の言葉は死んでも忘れない!」


「荀彧別伝」とはいえ、物凄いアゲっぷり。


三国志全編含めても荀彧をdisってるのは

へそ曲がりの禰衡だけですね


註13-4.

獻帝春秋曰:董承之誅,伏后與父完書,言司空殺董承,帝方爲報怨。完得書以示彧,彧惡之,久隱而不言。完以示妻弟樊普,普封以呈太祖,太祖陰爲之備。彧後恐事覺,欲自發之,因求使至鄴,勸太祖以女配帝。太祖曰:「今朝廷有伏后,吾女何得以配上,吾以微功見錄,位爲宰相,豈復賴女寵乎!」彧曰:「伏后無子,性又凶邪,往常與父書,言辭醜惡,可因此廢也。」太祖曰:「卿昔何不道之?」彧陽驚曰:「昔已嘗爲公言也。」太祖曰:「此豈小事而吾忘之!」彧又驚曰:「誠未語公邪!昔公在官渡與袁紹相持,恐增內顧之念,故不言爾。」太祖曰:「官渡事後何以不言?」彧無對,謝闕而已。太祖以此恨彧,而外含容之,故世莫得知。至董昭建立魏公之議,彧意不同,欲言之於太祖。及齎璽書犒軍,飲饗禮畢,彧留請閒。太祖知彧欲言封事,揖而遣之,彧遂不得言。彧卒於壽春,壽春亡者告孫權,言太祖使彧殺伏后,彧不從,故自殺。權以露布於蜀,劉備聞之,曰:「老賊不死,禍亂未已。」


(訳)

献帝けんてい春秋しゅんじゅうにいう、


董承とうじょうが誅殺された際、

(後漢の献帝の)ふく皇后が

父の伏完ふくかんに書状を与えて

「司空(曹操)が董承を殺し

帝は報讐を為さんとしている」と述べた。


伏完が書状を荀彧に見せると

荀彧はこれをにくみ、

久しく隠して、口にしなかった。


伏完が妻の弟の樊普はんふに(書状を)見せると

樊普は封をして太祖に進呈し、

太祖は密かに備えを設けた。


荀彧は後になって

(黙認していた)事が発覚するのを恐れ、

自らこの事を告発しようとして

使者となる事を求めて鄴へ向かい、

太祖に娘を帝と配偶させるよう勧めた。


太祖は言った。


「今、朝廷には伏皇后がおろうに

我が娘がどうしてお上の配偶者となれよう。


吾は微功を以て御禄をいただき

位は宰相となっておるが、

どうして更に娘への寵愛を頼ろうぞ!」


荀彧は言った。


「伏皇后には子が無く、

性格もまた凶暴・邪悪であり、

常に父親と手紙を行き交わして

その言辞は醜悪にございます。

この事に因み、彼女を廃するべきです」


太祖は言った。


「卿はどうしてもっと前に

この事を言わなかったのだ?」


荀彧はわざと驚いたふりをして言った。


「もうすでに公にはお話ししましたが」


太祖が言った。


「これは果たして、吾が忘れてしまうほど

些細な問題であろうか

(そんな訳ないだろうが)!?」


荀彧は再度驚いたふりをして言った。


「本当は、公にはいまだ

申し上げておりませんでした!


かつて、公が官渡におり

袁紹と対峙していた際の出来事ですので、

内顧の念を強くなされるのではと恐れ、

故に、申し上げなかったのでございます」


太祖が言った。


「官渡の事が終わった後に

なぜ言わなかった!?」


荀彧は応答する事ができず、

闕失を謝るばかりであった。


太祖はこの件で荀彧を恨んだが、

外面的にはこれを許容したため、

世間に(曹操と荀彧の不和が)

知られる事は莫かった。


董昭とうしょうが(曹操の)魏公就任を

建議する段階に至って、

荀彧は賛同の意を持てず、

太祖に言上しようとした。


璽書じしょ(詔勅)をもたら

軍をねぎらいに訪れた際、

飲食の饗宴の礼を畢えてから

荀彧は留って

(曹操との話し合いの)時間を要請した。


太祖は、荀彧が封爵の事について

言いたい事があるのだと察知し、

一揖(会釈)して彼を遣ったので

荀彧は結局、具申する事が出来なかった。


荀彧が寿春じゅしゅんにて卒すると、

寿春から逃亡した者が孫権に告げ、

太祖が荀彧に伏皇后を殺害させようとしたが

荀彧は従わず、故に自殺したのだ、と話した。


孫権が蜀にこの事を布告し、

劉備はこれを聞くと、言った。


「老賊が死なねば、禍乱は已まぬ」



(註釈)

樊普ハンフリー「泊まっていけよ」

(いいえ一択


2ページ前の説⑥にあたります。


漢室と曹操との間での

板挟みに苦しむ荀彧。


事の発覚を恐れた荀彧が

言い抜けをして曹操を

ごまかそうとしているなど、

荀彧伝初のサゲ記事らしい内容です。


裴松之のツッコミが入ります↓


註13-5.

臣松之案獻帝春秋云彧欲發伏后事而求使至鄴,而方誣太祖云「昔已嘗言」。言旣無徵,迴託以官渡之虞,俛仰之間,辭情頓屈,雖在庸人,猶不至此,何以玷累賢哲哉!凡諸云云,皆出自鄙俚,可謂以吾儕之言而厚誣君子者矣。袁暐虛罔之類,此最爲甚也。


(註釈)

わたくし松之が勘案するに、

「献帝春秋」は、荀彧が

伏皇后の事を告発せんとして

使いになる事を求めてぎょうへと至り、

太祖をあざむいて

「以前すでに申し上げました」

と云っている。


その言葉に裏付けが無いとわかった後で

官渡での心配事に託け、

俯仰ふぎょうの間(僅かな間)に

陳情が頓挫しているが、

凡庸な人物であろうとも

なおここまで(見苦しい様)には至るまい。


どうして賢哲をかさねて

侮辱しようとするのか!!


凡そ諸々の云うこと云うこと

すべて鄙俚(卑しい勘ぐり)から

出たものであり、自分の判断基準で

君子を深く辱めたと謂うべきだろう。


袁暐(献帝春秋の著者)の

虛罔デタラメの類は

これが最も甚だしい!



(註釈)


案外当たってると思うんだけどなぁ。


曹操と蜜月だった荀彧が、

急に捨てられちゃった理由が

采配のミスとかではなく、

重大な秘密を黙ってた上に

嘘を重ねて誤魔化そうとした事で

曹操の信頼を著しく損なったから……


と考えると、割と説得力ある気がします。


曹操は絶対自分の味方してくれると思った

荀彧に裏切られたことで、超落胆した。


荀彧も言葉に詰まったんじゃなくて

曹操の悲痛な様子に、これ以上

嘘を言うのに忍びなかったとか。


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