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淡々三国志  作者: ンバ
魏書第十、荀彧伝
296/603

註十二、上奏文、二

註12.

彧別傳曰:太祖又表曰:「昔袁紹侵入郊甸,戰於官渡。時兵少糧盡,圖欲還許,書與彧議,彧不聽臣。建宜住之便,恢進討之規,更起臣心,易其愚慮,遂摧大逆,覆取其衆。此彧覩勝敗之機,略不世出也。及紹破敗,臣糧亦盡,以爲河北未易圖也,欲南討劉表。彧復止臣,陳其得失,臣用反斾,遂吞凶族,克平四州。向使臣退於官渡,紹必鼓行而前,有傾覆之形,無克捷之勢。後若南征,委棄兖、豫,利旣難要,將失本據。彧之二策,以亡爲存,以禍致福,謀殊功異,臣所不及也。是以先帝貴指蹤之功,薄搏獲之賞;古人尚帷幄之規,下攻拔之捷。前所賞錄,未副彧巍巍之勳,乞重平議,疇其戶邑。」彧深辭讓,太祖報之曰:「君之策謀,非但所表二事。前後謙沖,欲慕魯連先生乎?此聖人達節者所不貴也。昔介子推有言『竊人之財,猶謂之盜』。況君密謀安衆,光顯於孤者以百數乎!以二事相還而復辭之,何取謙亮之多邪!」太祖欲表彧爲三公,彧使荀攸深讓,至于十數,太祖乃止。


(訳)

荀彧別伝にいう、

太祖はまたこのように上表している。


「昔、袁紹が郊甸(城外)に

侵入して参った際には

官渡かんとに於いて交戦いたしました。


この時、兵は少なく糧は尽き果て、

きょへ帰還せんと図っておりまして、

書状を荀彧に与えて議しましたところ、

荀彧は臣の意見を聞き入れませんでした。


留まる事の便宜を建て、

進撃・討伐の謀を盛んにして

更たに臣の心を奮い立たせ、

その愚見を変えてくれまして、

遂には大逆(袁紹)を挫き

その軍勢を覆し、攻め取る事が叶いました。


このように、荀彧の

勝敗の機微を見極める眼力は

殆ど不世出のものであると申せましょう。


袁紹が撃破され、敗走するに及んで

臣の糧もまた尽きてしまいまして、

河北はいまだ容易には図れぬものとして

南へ劉表を討伐しようと考えておりました。


荀彧は再び臣を諫止して

その得失を陳べてくれまして、

臣ははたを翻して遂に凶賊を併呑し

四州を平定する事が叶いました。


あの時に臣が官渡に於いて退却していれば

袁紹は必ずや太鼓を鳴らして前進し、

傾覆の形勢となって、

勝利の勢いを得られなかったでしょう。


後に、もしも南征して

兗州・豫州を委棄していれば、

勝利する事は困難の上に

本拠地を失っていたでしょう。


荀彧の二策は、

滅亡を存立と為し、わざわいを福へと転じ、

謀計は殊更にて功績は特異なもので、

臣の及ぶ所ではございませぬ。


かくて先の時代の帝王は

指縦(狩猟の指揮者)の功績を貴び、

搏獲(実動する猟犬)の恩賞を

薄くしたのでございます。


古人は帷幄のはかりごととうとび、

攻伐の勝利を下と致しました。


以前に賞録なさいました所は

荀彧の巍々《ぎぎ》たる功勲に

副うてはおりませぬ。


どうか、重ねて公平な論議の上、

彼の封邑を疇昔ちゅうせき(古代)と

ひとしくされますよう」


荀彧は深く辞退したが、

太祖は彼に報せて述べた。


「君の策謀は、上表した

二件だけには留まらない。


前後の謙沖(謙虚さからの辞退)は、

※魯連先生を敬慕しようとしておるのかね?


(※魯仲連=戦国時代の説客。

趙や斉の劣勢を論説で救ったが、

前後に渡る恩賞を受け取らなかった)


それは、聖人や節義に達した者の

貴ぶ所ではないぞ。


かつての介子推の言葉にあろう、

『人の財貨をぬすむこともなお盗人と謂う』


況してや君の密謀は衆人を安んじ、

孤を光り輝かせた事は百を数える!


件の二件(の恩賞)を返還し、

更にこれを辞退するとは、何と

謙虚な態度の多い事か!」


太祖は上表して荀彧を

三公にしようとしたものの、

荀彧が荀攸じゅんゆうを遣わして深く謙譲させることが

十数度に至ると、太祖はかくて取り止めた。



(註釈)


帷幄のはかりごと、のくだりは張良。

猟犬より人間、のくだりは蕭何でしょうか。


曹操は人を褒める時

故事を引用しますね。

気づいてないだけで他にもいっぱいありそう。



石勒せきろくは要請を9回断って

趙王になりましたが、

荀彧は10回以上断って

曹操が折れる形になってます。

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