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淡々三国志  作者: ンバ
呉書第九、周瑜伝
238/603

七、赤壁の戦い

7.

時劉備為曹公所破,欲引南渡江。與魯肅遇於當陽,遂共圖計,因進住夏口,遣諸葛亮詣權。權遂遣瑜及程普等與備並力逆曹公,遇於赤壁。時曹公軍眾已有疾病,初一交戰,公軍敗退,引次江北。瑜等在南岸。瑜部將黃蓋曰:「今寇眾我寡,難與持久。然觀操軍船艦,首尾相接,可燒而走也。」乃取蒙沖鬥艦數十艘,實以薪草,膏油灌其中。裹以帷幕,上建牙旗,先書報曹公,欺以欲降。 又豫備走舸,各系大船後,因引次俱前。曹公軍吏士皆延頸觀望,指言蓋降。蓋放諸船,同時發火。時風盛猛,悉延燒岸上營落。頃之。煙炎張天,人馬燒溺死者甚眾,軍遂敗退,還保南郡。備與瑜等復共追。曹公留曹仁等守江陵城。逕自北歸。


(訳)

当時の劉備は曹公に破られた所で、

軍を引いて長江を南へ渡らんとしていた。


劉備は魯粛ろしゅく当陽とうようにおいて遇し

かくて共に計を図り、夏口かこうへと進駐すると

諸葛亮を遣わして孫権を詣でさせた。


孫権はかくて周瑜、及び程普ていふらに

劉備と協力させて曹公を迎え撃たせ、

赤壁せきへきに於いて(曹操と)遭遇した。


この時曹公の軍の者たちは

已に疫病にかかっており、

初めに一度交戦して敗退し、

退却して長江の北に宿営した。


周瑜らは南岸に在り、

周瑜の部将の黄蓋こうがいが言った。


「今、賊は多勢で我々は寡勢かせいであり

久しく持ち堪えるのは難しいかと思う。

然るに曹操軍の戦艦を観るに

その首尾は互いに交接しておる。

火を放てば、敗走させることができよう」


そうして蒙沖もうちゅう鬥艦とうかん数十艘を取り次ぐと

薪や草を中核にして、膏油こうゆをその中へ注いだ。


(黄蓋はそれを)帷幕まんまくつつみ、

その上に牙旗がきを建てて

先に書状にて曹公に報せ

欺いて投降しようとした。


一方で走舸そうか(機動力のある船)を予め準備して

各々を大船の後に繋げておき、

引き次いで並進させた。


曹公の軍の役人や士卒は皆

くびを延ばして観望し、黄蓋を指して

「(あれは)投降者だ」と言った。


黄蓋は諸々の船を放ち、同時に火を点けた。

この時、風の勢いが強く

岸上の屯営に悉く延焼していった。


しばらくすると、煙と炎は天に張り詰め

人馬は焼かれ、溺死者は甚だ多数にのぼり

曹公の軍はとうとう敗退し、

引き返して南郡なんぐんを保った。


劉備は周瑜らと復た共同して追撃した。


曹公は曹仁そうじんらを留めて江陵こうりょう城を守らせ

自らはまっすぐ北へと帰還した。



(註釈)

その時、歴史が動いた。


孫権軍の黄蓋こうがい

曹操軍に降るとウソついて

油を仕込んだ船を並進させ、一気に着火!


その炎は風に煽られてどんどん広がり

曹操軍の戦艦・将士を

焼き尽くしていきました。

(その割に有力武将が誰一人として

欠けていないのがちょっと不自然)


かくて、劉備・孫権連合軍の大勝利!



この赤壁の戦い、

演義では大幅なアレンジを加えられ、


曹操軍の船が連結されていたことは

スパイとして潜り込んでいた

諸葛亮の同窓生・龐統ほうとうによる

連環れんかんの計」という形に翻案され、


黄蓋が投降するまでの流れは

苦肉くにくの策」とカッコいい名前が付き、

周瑜が、黄蓋と仲違いして

彼を鞭打つという名演技のもとに

「宿将の黄蓋が降伏する」事への

信憑性を持たせるという

周瑜主導の計略に変わり、


「風が強かった」部分は

諸葛亮が超常的なパワーにより

「東南の風」を巻き起こしたという

かなり荒唐無稽な描写になっています。


すごくハッタリが効いていて

お話としてはメチャクチャ面白いので

さすがとしか言いようがありません。



「十万本の矢」の元ネタは

いずれ呉主伝でご紹介いたします。


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