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淡々三国志  作者: ンバ
呉書第一、孫討逆(孫策)伝
205/603

註十、袁術へ九つの戒め

孫策から袁術への書状です。


いつぞやの法正の手紙よりも

更に長ったらしい。


袁術伝に載っている孫策の絶縁状は

ここを参考にして訳したので、

比較してご覧になってみてください。




註10.

吳錄載策使張紘為書曰:「蓋上天垂司過之星,聖王建敢諫之鼓,設非謬之備,急箴闕之言,何哉?凡有所長,必有所短也。去冬傳有大計,無不悚懼;旋知供備貢獻,萬夫解惑。頃聞建議,復欲追遵前圖,即事之期,便有定月。益使憮然,想是流妄;設其必爾,民何望乎?曩日之舉義兵也,天下之士所以響應者,董卓擅廢置,害太后、弘農王,略烝宮人,發掘園陵,暴逆至此,故諸州郡雄豪聞聲慕義。神武外振,卓遂內殲。元惡旣斃,幼主東顧,俾保傅宣命,欲令諸軍振旅,然河北通謀黑山,曹操放毒東徐,劉表稱亂南荊,公孫瓚炰烋北幽,劉繇決力江滸,劉備爭盟淮隅,是以未獲承命櫜弓戢戈也。今備、繇旣破,操等饑餒,謂當與天下合謀,以誅醜類。捨而不圖,有自取之志,非海內所望,一也。昔成湯伐桀,稱有夏多罪;武王伐紂,曰殷有罪罰重哉。此二王者,雖有聖德,宜當君世;如使不遭其時,亦無由興矣。幼主非有惡於天下,徒以春秋尚少,脅於彊臣,若無過而奪之,懼未合於湯、武之事,二也。卓雖狂狡,至廢主自與,亦猶未也,而天下聞其桀虐,攘臂同心而疾之,以中土希戰之兵,當邊地勁悍之虜,所以斯須游魂也。今四方之人,皆玩敵而便戰鬬矣,可得而勝者,以彼亂而我治,彼逆而我順也。見當世之紛若,欲大舉以臨之,適足趣禍,三也。天下神器,不可虛干,必須天贊與人力也。殷湯有白鳩之祥,周武有赤烏之瑞,漢高有星聚之符,世祖有神光之徵,皆因民困瘁於桀、紂之政,毒苦於秦、莽之役,故能芟去無道,致成其志。今天下非患於幼主,未見受命之應驗,而欲一旦卒然登即尊號,未之或有,四也。天子之貴,四海之富,誰不欲焉?義不可,勢不得耳。陳勝、項籍、王莽、公孫述之徒,皆南面稱孤,莫之能濟。帝王之位,不可橫兾,五也。幼主岐嶷,若除其偪,去其鯁,必成中興之業。夫致主於周成之盛,自受旦、奭之美,此誠所望於尊明也。縱使幼主有他改異,猶望推宗室之譜屬,論近親之賢良,以紹劉統,以固漢宗。皆所以書功金石,圖形丹青,流慶無窮,垂聲管弦。捨而不為,為其難者,想明明之素,必所不忍,六也。五世為相,權之重,勢之盛,天下莫得而比焉。忠貞者必曰宜夙夜思惟,所以扶國家之躓頓,念社稷之危殆,以奉祖考之志,以報漢室之恩。其忽履道之節而彊進取之欲者,將曰天下之人非家吏則門生也,孰不從我?四方之敵非吾匹則吾役也,誰能違我?盍乘累世之勢,起而取之哉?二者殊數,不可不詳察,七也。所貴於聖哲者,以其審於機宜,慎於舉措。若難圖之事,難保之勢,以激羣敵之氣,以生衆人之心,公義故不可,私計又不利,明哲不處,八也。世人多惑於圖緯而牽非類,比合文字以恱所事,苟以阿上惑衆,終有後悔者,自往迄今,未嘗無之,不可不深擇而熟思,九也。九者,尊明所見之餘耳,庶備起予,補所遺忘。忠言逆耳,幸留神聽!」


典略云張昭之辭。臣松之以為張昭雖名重,然不如紘之文也,此書必紘所作。



(訳)

呉録ごろくに載録されている

孫策が張紘ちょうこうしたためさせた書状にいう、


けだし上天が司過の星

(人々の罪過を見守る星)を垂れ

聖王が敢諫かんかんの太鼓を鳴らし

謬錯びゅうさく(過ち)の備えを設けて、

欠点を戒める言葉を急くのは

どうしてでございましょうか?


凡そ、長所があるということは

必ず短所もあるからです。


昨冬に大計を伝え聞いて

(袁術が即位するという事を聞いて)

悚懼しょうく(恐れ戦く)せぬ者はありませんでしたが

すぐさま朝廷に貢物を献上された事を知って

万夫の疑惑は解けたのでございます。


ですが、近頃の建議を聞きますれば

再び以前の計画を実行なされようとして、

事の期日は既に月まで定められているとか。


ますます我々を憮然とさせますが、

思うにこれは、でたらめな

流言飛語でございましょう。


しかし、もし事実であったとすれば

民衆は如何に思うでしょうか?


昔日に義兵を挙げられた時

天下の士が挙って響応したのは

董卓が勝手に(官職を)廃置し

何太后・弘農王を害し

宮女を略奪し、陵墓を盗掘して

その暴虐が事ここに至った故であり

諸州郡の英雄、豪傑たちが声を聞き、

義を慕っ(て集まっ)てきたのです。


神のごとき勇武が外敵へと振るわれ

とうとう董卓は内より滅びました。


元凶は既に斃され

幼主は東方を顧みられて

保傅ほふ(守役)を遣わし宣命されて

(董卓打倒に集まった)諸軍に

兵を整えて凱旋するよう命じられました。


しかし、河北(袁紹)は黒山の賊と通謀し

曹操は東部の徐州にて害毒を放ち

劉表は南部の荊州にて乱を起こし

公孫瓚こうそんさんは北部の幽州にて

炰烋ほうこう(驕り高ぶる)し

劉繇りゅうようは長江の滸で勢力を分かち

劉備は淮水の隅で盟主を争い

こうして、未だに(天子の)命を奉じて

弓をしまい矛を収める事が出来ずにおります。


今、劉備と劉繇は既に破られ

曹操らは饑渇しており、

天下の士とともに謀を同じくして

醜悪なる者共を誅滅すべきかと存じます。


この事を捨て置いて図らず、

自立の志を持たれるのは

海内の人々の望む所ではございません。

これが第一です。


昔、いん湯王とうおう桀王けつおうの討伐を成した時

『夏には多くの罪がある』と称し、


しゅう武王ぶおうが殷の紂王ちゅうおうを伐った時

『殷には重い罪と罰がある』と述べました。


この二人の王者は聖徳を有すると雖も

そのような暴君の時代に遭遇しなければ

また興隆する理由も無かったのです。


幼主は天下に悪事を有さず、

ただ、御年齢が尚(わか)くあられるために

強臣に脅えていただけの事で、

もし過失も無き主から権力を奪われたなら

湯王・武王の事例と

合致しないのではないかと懼れます。

これが第二です。


董卓は狂暴で狡猾と雖も、主君を廃して

自ら取って代わろうとはしませんでしたが

それでも天下の人々はその悪虐ぶりを聞き

攘臂じょうひ(腕まくりをして)し

心を同じくして董卓めを憎み、

中原の戦慣れしていない兵を以って

僻地の精悍な兵に当たりて虜とし、

かくして須臾しゅゆのうちに

遊魂(魂が彷徨う)する事になったのです。


今、四方の人間は皆敵をもてあそび、

戦闘に慣れてしまっておりますから

勝利を得ることが出来ますのは

敵が乱れ、味方が治まっている場合と

敵が逆、味方が順の場合であります。


当世の紛若ふんじゃくを見るに

多勢を以ってこれに臨もうとなされても

わざわいに足を踏み入れるだけでございます。

これが第三です。


天下の神器は妄りに犯すことはできず、

必ず天のたすけと、人々の協力が必要です。


殷の湯王には白い鳩の瑞祥が、

周の武王には赤い烏の瑞祥があり、

漢高祖(高帝・劉邦)には

星が集まるという符瑞があり

世祖(光武帝・劉秀)には

神秘的な光の吉微がありました。


みな、けつ王・ちゅう王の悪政に民が困憊し、

秦や王莽おうもうの賦役の害毒に苦しんでいた故に

無道の者らを除き去って

その志を成就させるに至りました。


今天下は、幼主に患わされているわけでなく

天命を受けた(新しい王者の)応験おうけん

あらわれているわけでもありませんのに、

ある日卒然と尊号にかれ登極されますは

これまでに類を見ない事です。

これが第四です。


天子の貴、四海の富を

誰が欲さぬことがありましょう?

しかし大義は許さず、情勢から言っても

(即位する事は)不可能です。


陳勝ちんしょう項籍こうせき王莽おうもう公孫述こうそんじゅつといった輩は

みな南面して天子を称しましたが、

全うする事が出来た者は居りませんでした。

帝王の位は、欲しいままに

望んではならぬもので、これが第五です。


幼主は岐嶷いこよかで、

もしその偪側ひょくそく(天子を圧迫する者)を

除いて、硬骨こうこつの士を追い出せれば

必ずや中興の事業は成し遂げられます。


ご主君を盛り立て

周の成王の如き隆盛を招致させ

自ら周公旦しゅうこうたん召公奭しょうこうせきの美点を

受け継いでいただくこと、

これが誠に、尊明あなた

望むところなのでございます。


たとえ幼主が他者に帝位を改めても

なお宗室の系譜の方を推戴し、

近親者のうちで賢良なる者を論じて

劉主の血統をがせ、

漢の宗廟を固められん事を望みます。


すべて、あなたの金石の功を書き記し、

そのお姿を丹青たんせい(絵の具)にて描かれ

慶事を無窮に流布されて

管弦にてその芳名が

響き渡るようにする所以です。


これらの事を捨て置かれて

難儀されますのは、

あなたの明哲なる資質を鑑みますに

決して忍ばざる所でございましょう。

これが第六です。


(袁家は)五世代に渡って宰相となられ

権力の重さ、勢力の盛んさは

天下に比べる者がきほどです。


忠貞なる者は必ずや述べるでしょう。


夙夜しゅくや(朝な夕な)思惟しい

国家の躓きを扶助、社稷の危難を想念して

祖先への孝の志を奉じ、漢室の恩に報いる』


そうしたみ行うべき道義に違え、

強大にならんとして、自ずから

権力を手に入れようとする者は

こう述べるでしょう。


『天下の人間は、

我が家の吏(召使い)

に非ざれば、則ち門生(子弟)だ。

いずれが我に従わざるか?


四方の敵は、吾に並ばざれば

則ち、吾の役(手下)である。

誰が我に逆らえようか?


けだし、世代をかさねた権勢に乗じて

事を起こし、天下を取れぬことがあろうか』


二者(忠義者と野心家)の

寿命の差異について、詳細に

考察せぬ事がありませぬように。

これが第七です。


聖哲なる者を貴びますのは、

彼らが時宜(その時々の情勢)に詳しく、

慎重に行動を起こすためです。


もし難事を企図されても

その勢いを保つことは難しく、

群がる敵の気勢を刺激し

衆人の不安を引き起こしてしまいます。


公義の点でもとより許されず

私的に計りてもやはり利はなく、

明哲の処するところではございません。

これが第八です。


世人の多くは図讖としんに惑わされ

類を見ない文書に引き摺られて

文字を組み合わせ、引き合いに出し

(あなたには天子になる徴が

顕れている、などと言いながら)

事える者を悦ばせております。


いやしくも上におもねり、衆人を惑わして

結局後悔することになった者は

古今を通じて絶えぬ事がなく、

熟慮して慎重に事を選ばぬ事が

なきようにしてくださいませ。

これが第九です。


以上の九点、

尊明のご見識に置かれまして

余計な事を申し上げましたが

諸事に備え、自己を啓発されて

遺漏・盲点のございます所の

補填としてくださいますよう。


忠言は耳に逆らいましょうが、

神聴にお留めいただれば幸いでございます!」



「典略」では、この書状を

張昭ちょうしょうが辞したものだとする。


わたくし松之の意見、

張昭の名声は重いと雖も

張紘ちょうこうのような文章は書けなかった。

この書はきっと、張紘の作であろう。


(註釈)

資治通鑑しじつがんによると

この書状が送られたのは

196年の終わり頃?


皇帝に即位しようとした袁術へ

孫策が9つの難点を箇条書きにして

諫言しています。


袁紹や曹操が勝手気ままに

動いている事態を無視するんですか?

あまつさえ、自分も反逆して

天子になろうなんて、

みんなから総スカンをくらうよ。


湯王や武王は暴君をやっつけて

新しい時代を築いたけれど、

今の帝はそんな悪い事してないよ。

ただ、まだ子供だったから

董卓に手が出せなかっただけなんだよ。



あの董卓ですら、自分が

皇帝になろうとまではしなかったけど

それでも天下の人から恨まれて死んだ。

大義を得た弱兵が強兵を破ることがあるんだ。

董卓のせいでみんな戦慣れしてるから、

兵力に勝ってるだけじゃ不安だよ。


天下取りには天の時と人の力が必要だよ。

新しい王者が登場する時には

暴君がみんなを困らせていたり、

それ相応の瑞兆が現れるだろうけど

どちらも起きてないよね。


勝手に天子を名乗った

陳勝ちんしょう、項羽、王莽おうもう公孫述こうそんじゅつらが

どんな末路を辿ったか、思い出してね。


天子をいじめる奴らをやっつけて

周公旦しゅうこうたん召公奭しょうこうせきのような

名臣として後世に名を残した方がいいよ。

頭のいいあなたには、

言うまでもないことだけど。


あなたの家は漢王朝で栄えてきた

名門中の名門だよね?

国家のことを一生懸命考えて

漢室の恩に報いようとする人間と、

邪な野心を抱いて天下の人々を

自分の手下だと思うような人間とでは

どっちが生き残るかな。


賢者は、情勢をよくわきまえて

慎重に行動する人のことだよ。

無計画で周りをいたずらに

刺激したりするのは、公に言っても

オレ個人から見てもダメだよ。


予言の書にハマってるやつらは

自分の主に都合のいいところ見つけて

ゴマをすりたいだけなんだよ。

昔も今も、それで失敗した奴が沢山いるよ。





こうして見ると、袁術と

絶交したというよりは、かなり優しく

諌めているように感じられます。


特に第6の、


袁術さんの功績が書き記されて

あなたの肖像画が描かれるようになって、

あなたの名声が永遠に思い起こされて

あなたの名前が歌に歌われるようにしたいよ。


ってところ、

孫策、袁術めっちゃ好きなんじゃん!

って感じがします。


資治通鑑では、

袁術は、孫策が必ず味方してくれると

思ったので、愁いて涙を流したと

書いてあります。



皇帝に即位したことで、

さすがに距離を置かざるを

得なかったかもしれませんが

やっぱり孫策は、袁術と

絶縁するまで行ってないに一票。


というか、江表伝が

話をややこしくしてる。



「君みたいな息子がいればなぁ」って

可愛がってないと出てこないセリフよね?

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