九、赤ずきんソモ
9.
堅移屯梁東,大為卓軍所攻,堅與數十騎潰圍而出。堅常著赤罽幘,乃脫幘令親近將祖茂著之。卓騎爭逐茂,故堅從閒道得免。茂困迫,下馬,以幘冠冢閒燒柱,因伏草中。卓騎望見,圍繞數重,定近覺是柱,乃去。堅復相收兵,合戰於陽人,大破卓軍,梟其都督華雄等。是時,或閒堅於術,術懷疑,不運軍糧。
(訳)
孫堅が梁東に移って屯営すると
董卓の大軍から攻められる所となり、
孫堅は数十騎とともに
囲みを破って脱出した。
孫堅はいつも
赤い罽幘(毛織の頭巾)を被っており、
この時、幘を脱いで
側近の武将の祖茂に命じて
これを被らせていた。
董卓の騎兵は
(赤い頭巾を孫堅と勘違いして)
争って祖茂を追ってきたので、
孫堅は間道を伝って逃げ延びる事が出来た。
祖茂は追い詰められて下馬し、
孫堅の幘を家の間の焼けた柱に被せ
草の中へと伏せ隠れた。
董卓の騎兵は遠くから
(赤い頭巾を)眺めやって
幾重にもこれを取り囲んだが
近付いて初めてただの柱である事がわかり
そうして立ち去っていった。
孫堅は再び兵を収集させ
陽人にて合戦し、董卓の軍を大破して
その都督の華雄らを破り、獄門に晒した。
この時、孫堅と袁術の仲を割くものがあり、
袁術は懐疑して、軍糧を送らなくなった。
(註釈)
馬鹿野郎ぉおお!!
数が多すぎるんだよぉお!!
っていう孫堅の叫びが聞こえてきそう。
孫堅は赤い頭巾がトレードマークで、
三國志シリーズでも大体毎回
赤い頭巾を被っております。
なんて骨太な赤ずきんちゃん。
当然そのことは敵にも伝わっており、
孫堅軍が衆寡敵せずの状況に陥ったとき
董卓軍の部将らは、赤い頭巾を目掛け
我先にと殺到してくるのでした。
孫堅は、側近の祖茂に
トレードマークの赤ずきんを被せ
要は自分の身代わりにして逃げ出しました。
追い詰められた祖茂は
赤ずきんを放棄して
なんとかやり過ごしますが、
この後いっさい出てきません。
なので演義では、いっそのこと
ここで孫堅を庇って
華々しく討ち死にした方が
キャラが立つだろう、と判断したのか
祖茂は華雄に討ち取られる形に
翻案されています。
その華雄は演義オリジナルキャラの
兪渉や藩鳳を秒殺したのち
我らが関羽に瞬殺されます。
華雄が倒した相手って
みんな架空の人物なのか?と思いきや
祖茂はちゃんと正史にも出てくるので
注意が必要です。
華雄をやっつけたのは
演義では関羽ですが、
正史では孫堅、
蒼天航路では夏侯惇になっています。
しかし、焼けた柱に
孫堅の赤ずきんが引っかかってるだけで
なかなか近付けないとか、
孫堅はメチャクチャ恐れられてますね。
このあとの、袁術が孫堅を恐れて
兵糧を送らなくなる逸話も
演義にありますが、基本的には
袁術の支援ありきで勝てたものだと
捉えた方が良さそうです。
曹操は徐栄にやられて退却してますが
孫堅が戦線を維持できたのは
袁術のサポートのお陰、のはず!




