註十三、胡軫だ!人望の無さに定評のある胡軫を陽人に!
註13.
英雄記曰:初堅討董卓,到梁縣之陽人。卓亦遣兵步騎五千迎之,陳郡太守胡軫為大督護,呂布為騎督,其餘步騎將校都督者甚衆。軫字文才,性急,預宣言曰:「今此行也,要當斬一青綬,乃整齊耳。」諸將聞而惡之。軍到廣成,去陽人城數十里。日暮,士馬疲極,當止宿,又本受卓節度宿廣成,秣馬飲食,以夜進兵,投曉攻城。諸將惡憚軫,欲賊敗其事,布等宣言「陽人城中賊已走,當追尋之;不然失之矣」,便夜進軍。城中守備甚設,不可掩襲。於是吏士饑渴,人馬甚疲,且夜至,又無壍壘。釋甲休息,而布又宣言相驚,云「城中賊出來」。軍衆擾亂奔走,皆棄甲,失鞌馬。行十餘里,定無賊,會天明,便還,拾取兵器,欲進攻城。城守已固,穿壍已深,軫等不能攻而還。
(訳)
英雄記にいう、
はじめ、孫堅は董卓を討つため
梁県の陽人へと到った。
董卓の方でもまた
歩兵・騎兵五千を派遣して孫堅を迎え撃ち
陳郡太守の胡軫を大督護、呂布を騎督として
その他にも、歩兵や騎兵の
将校・都督の者が甚だ大勢いた。
胡軫はあざなを文才といい、
せっかちな性格で、予め宣揚して言った。
「此度の行軍は、要するに
一人、青綬(郡の太守)を斬ってしまえば
乃ち、それで収まりがつくのだ」
諸将は聞いてこれを悪み、
(胡軫の)軍は、陽人の城から
数十里離れた広成へと到った。
日が暮れて、
兵士も馬も疲れ果ててしまい、
止まって宿営すべきであった。
また本来、董卓から受けた命令は
広成に宿営して、馬に糧秣をやり
兵士に飲み食いさせてから、
夜に兵を進め、明け方頃に城を攻めよ、
というものであった。
諸将は胡軫を悪み憚って、
賊(孫堅と袁術)が胡軫の計画を
壊敗させてくれる事を望んで、呂布たちは
「陽人の城中の賊は既に敗走した。
ここで追撃せねば、逃してしまうぞ」
と宣言し、そのまま夜に進軍した。
(ところが)城中の守備は
しっかりと整えられており、
奇襲を仕掛けられそうになかった。
こうして軍吏や士卒は饑渇して
人馬ともに甚だ疲弊してしまい、
かつ夜に到着したために
塹壕や土塁もまた存在しなかった。
武装を解いて休息していると
呂布がまたもや、彼らを
驚かそうとし、こう宣言した。
「城中の賊が出撃して来たぞ!」
軍衆は混乱して逃げ惑い、
みな鎧を捨て、鞍馬を失った。
十余里逃げた時
我に帰ると賊などはおらず、
夜が明けかかっていたので
直ちに引き返して兵器を収拾し
進みて城を攻めようとした。
が、城の守りは已に固められており
塹壕も深く掘られていて
胡軫らは攻撃できずに退却した。
(註釈)
駄目だこいつ…………
早くなんとかしないと…………
董卓の命令を無視するとか
胡軫はすごい度胸ですね。
単純に無策、無節操なんでしょうが。
そして、英雄記の呂布はやっぱり口達者。