六、蛮勇手術
6.
羽嘗為流矢所中,貫其左臂,後創雖愈,每至陰雨,骨常疼痛,醫曰:「矢鏃有毒,毒入於骨,當破臂作創,刮骨去毒,然後此患乃除耳。」羽便伸臂令醫劈之。時羽適請諸將飲食相對,臂血流離,盈於盤器,而羽割炙引酒,言笑自若。
(訳)
関羽はかつて流れ矢に当たり
左肘を貫かれた。
後になって創は癒えたと雖も
曇りや雨の日になるたび
いつも骨が疼き痛んだ。
医者が言うには
「鏃に毒がございまして
骨まで毒が入り込んでいます。
臂を裂いて傷口を切開し
骨を削って毒を取り去れば
然るのちに痛みは除かれましょう」
関羽はただちに臂を伸ばして
医者に切らせた。
この時関羽はちょうど
諸将を招いて宴会を開いており
肘から流れ落ちた血が
大皿を満たす程であったが
関羽は焼肉を割いて酒を引き寄せ
自若として談笑していた。
(註釈)
雨の日になるとよう……
左肘の〝瑕疵〟が慟哭きやがるんだよう……
こう書くと関羽が中二病っぽい。
「かつて」関羽は左肘を負傷し……
「かつて」って言い方が抽象的すぎて
いつだかわからないです。
なので、
お話によって関羽の肘を傷付けたの
曹仁だったり龐徳だったり。
顔良や楽進だったという話は聞きませんが
大体関羽の最後の戦いあたりに
設定されてる事が多いです。
とにかく、関羽はある時
左ヒジに毒矢を浴びてしまい
傷口が塞がったあとも、
矢じりの毒が骨に回っていて
疼くような痛みが残り続けていました。
医者に診せたら
「傷口開いて骨削りましょ」と
蛮勇度の高いことを言われてますが
関羽は即決してそのままオペ開始。
ちょうど諸将と飲み食いをしている最中
肘の手術を執り行い、
めちゃくちゃ血が出てるのに
関羽は意に介さずケロッとしていた……
同席した諸将の立場からしたら
メシ食ってる時に正直
大量の出血を見せないで欲しいですけどね。
敢えてみんなに我慢強いとこ
見せつけようとするのも、なんだか
関羽っぽいのかなと思えなくもないです。
三国志演義では、この時
肘の手術をしたのが名医華佗で
関羽は馬良と囲碁を打ちながら
施術した事になっています。
「ムチャクチャ痛いので麻酔しますよ」
と言う華佗に対して
「麻酔なしでやってくれ」と言う関羽。
華佗はしぶしぶ従いますが
施術中の関羽は顔色ひとつ変えずに
囲碁をパチパチ、どころか
酒を飲んで談笑している。
絶対人間じゃない。
華佗が
「関公のような患者を
見た事がありません」と言えば
関羽が
「天下の名医と名患者が揃えば
病気も裸足で逃げ出しますな」
と返して、二人は大いに笑った。
樊城の戦いの前に挿話するって事は
関羽が本調子だったら落とせてた、
というニュアンス含んでそう。