註六、裴松之ツッコむ
蜀記の記述に対して
裴松之のコメントです。
註6.
臣松之以為備後與董承等結謀,但事泄不克諧耳,若為國家惜曹公,其如此言何!羽若果有此勸而備不肯從者,將以曹公腹心親戚,實繁有徒,事不宿構,非造次所行;曹雖可殺,身必不免,故以計而止,何惜之有乎!既往之事,故託為雅言耳。
(訳)
わたくし松之の意見。
劉備はのちに董承らと結んで
(曹操を排除しようと)謀った。
ただ事が洩れて成就しなかっただけである。
もし国家のために曹公を惜しんだというなら
この発言をどのように説明するのか!
関羽がもし本当にこのような事を勧めて
劉備が肯んじなかったのだとすれば
それは、曹公の腹心の将や親類の者など
実に大勢が徒党を組んでおり
事は兼ねてより練られたものではなかったので
咄嗟に行うことができなかったのである。
曹公を殺すことができても
(劉備自身も災禍を)免れることはできず
故に計算して取り止めたためで
どうして曹公を惜しんだなどと言えよう!
過去の出来事であるので
綺麗事を言い繕ったに過ぎないのである。
(註釈)
漢の献帝は曹操の強勢を恐れ
舅(丈人)の董承に曹操暗殺の密勅を下し、
彼は有志を募って協議しました。
この中に劉備も加わっていたのです。
劉備は袁術迎撃の任を受けて
徐州へ向かったために事無きを得ましたが
事が露見して董承らは皆殺しにされました。
後々になって曹操の殺害計画に
加担しておきながら
「国家のために彼を惜しんだ」というのは
おかしい!と裴松之は批判してるわけです。