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淡々三国志  作者: ンバ
魏書第七、呂布伝
118/603

(後漢書)十六、陳宮に従わず

後漢書16.

建安三年,布遂復從袁術,遣順攻劉備於沛,破之。曹操遣夏侯惇救備。為順所敗。操乃自將擊布,至下邳城下。遺布書,為陳禍福。布欲降,而陳宮等自以負罪於操,深沮其計,而謂布曰:「曹公遠來,埶不能久。將軍若以步騎出屯於外,宮將餘眾閉守於內。若向將軍,宮引兵而攻其背;若但攻城,則將軍救於外。不過旬月,軍食畢盡,擊之可破也。」布然之。布妻曰:「昔曹氏待公臺如赤子,猶舍而歸我。今將軍厚公臺不過於曹氏,而欲委全城,捐妻子,孤軍遠出乎?若一旦有變,妾豈得為將軍妻哉!」布乃止。而潛遣人求救於袁術,自將千餘騎出。戰敗走還,保城不敢出。術亦不能救。



(訳)

建安三年(198)、

呂布はかくてまた袁術に従い、

高順を派遣して小沛の劉備を攻め、

これを破った。


曹操は夏侯惇を派遣して

劉備を救援させた。

高順によって敗れた。


曹操はそこで自ら兵を率いて呂布を撃とうと

下邳の城下へと至った。

呂布に書状を遣って

禍福(抗戦の禍、降伏の福)

について陳述した。


呂布は曹操に降ろうとしたが、

陳宮達は自身が曹操に対して

罪を負っていたために、

その計画に大反対して呂布に謂った。


「曹公は遠方より来たりて

持久策を執る事ができません。


将軍がもし歩兵・騎兵を出して

外部に駐屯すれば、

私は残りの兵を率い

門を閉ざして内部を守ります。


もし曹公が将軍に向かってきたならば、

私は兵を牽引して背後から攻めます。


もし曹公が単に城を攻めてきたならば、

そこで将軍が外部から救援なさるのです。


旬月(10日or30日)を過ぎずして

食糧は全て尽き果て

これを打ち破る事ができましょう」


呂布は陳宮の策に頷いた。


呂布の妻が述べた。


「昔、曹氏は公台こうだい(陳宮のあざな)を

赤子の如く待遇したというのに

それでも彼は曹操を捨てて

我々に身を寄せたのです。


将軍(あなた)は公台を厚遇しているとはいえ

曹氏のものには及びません。


ですのに、城内のことを全て彼に委ねて

妻子わたしたちを捨てて、孤軍は

遠くに出てしまうのですか??


もし、一度変事が起きてしまえば、

わたしはどうして将軍の

妻のままでいられましょう!!」


呂布はそこで計画を中止したが、

密かに人を遣って袁術に救援を求め

自らは千余騎を率いて出兵した。


戦い敗れて逃げ帰り、城を守って

敢えて出ようとしなかった。


袁術の方でもまた、

呂布を救援することができなかった。



(註釈)

陳宮の申し出た作戦は、

いわゆる掎角の勢ってやつですね。

二手に分かれて、一方に向かって来た敵を

挟み撃ちにして叩くという。



思うに、陳宮の前半生ってかなり謎です。


演義では、曹操が董卓暗殺失敗したとこで

(190年以前)助けてくれて、



正史では、兗州で張邈が謀叛起こす場面で

(194年)いきなり名前出てきます。



武帝紀の引く「世語」では、

董卓から逃げてきた曹操が

中牟ちゅうぼうで捕まってしまったとき

曹操に好意を持って

彼を逃がしてくれたモブが出てきますが、

演義ではこれが陳宮だった、と

いう形に翻案されています。


で、呂伯奢りょはくしゃ事件に遭遇して

曹操が冤罪で人を殺したことから

「こいつ助けたの失敗だったかな」

と判断して曹操から離れていった……


というのが演義の陳宮です。


裴註の逸話をうまく繋いであって

演義の作者天才だなと思います。



「曹氏が陳宮を赤子の如く待遇した」


これも後漢書と英雄記にあって

三国志にはない記述なんですが、


ここを額面通りに受け取ると、

「陳宮は曹操の息子くらいの年代」

って風に解釈できちゃいますよね。


少なくともこの書かれ方だと、

呂布や曹操と同年代ってことは

ないような気がします。


そうなると陳宮のイメージ

大幅に是正せざるを得ません。



英雄記だと陳宮は1回

呂布を裏切ろうとしてますので、

ここで奥さんの言うことに

頷いちゃうのも仕方ないかも。



袁術伝読むと、198年頃は

記述がスカスカで何してるのか

よくわからないんですが、

197年に呂布に惨敗したあと

陳で曹操にも負けているので

呂布を助ける余裕は恐らく

なかったと思われます。


呂布は、

自分でトドメ刺したような相手に

救援を要請するというのが

いかにも無策って感じです。

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