表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/9

2.あなたと飛べなきゃ意味なくて⑤

 空が突然虹色に変わった。

 それは天界が出す合図だった。世界中に希望を届けるための。


「このタイミングで、なんたる朗報」


 マクレガンが顔をほころばせる。


「代替聖女が覚醒した。彼女なら、(しょく)(ざい)の歌を完成させることもできるだろう」

「代替聖女……?」

「君と同じ……いや、君以上の力を秘めた聖女だ。もはや代替ではない。彼女こそが本物だ。長きに渡って探して探してようやく見つけ、力の覚醒をずっと待っていた」


 マクレガンは拍手をして(ほほ)()んだ。


「おめでとう、君は用済みだ。その鳥籠の中で、尽きぬ命の中愛でも歌っていろ」


 最後は冷たい笑みへと変えて、彼は背を向け去っていった。神官たちを引き連れて。


「や……待って!」


 しかし彼らは戻ってこない。虹色の空も役割を終えたのか、その色を元へと戻しつつある。

 全てが元通りだ。

 自分は鳥籠にとらわれて。リックをまた助けられなくて。

 どうしようもない無力感に押し包まれ、レミナはずるずるとへたり込んだ。


「私は……なんて愚かなの!」


 格子に額をたたきつける。血が流れたが気にしなかった。どうせすぐに治るのだ。そう願っているわけでもないのに!


「私は……私は、馬鹿よ」


 涙がこぼれた。ここ何カ月ものなにげない会話を、狂おしいほどに取り戻したくなる。


「愛する人を忘れていたなんて……テオドリックは……リックは悪魔に転生しても、私のことを思い出していたのに……」


 自分のことばっかりで。偽りの愛に喜んで。


「お願い……リックを、助けて……助けて……」


 この場にいない、そしてもう二度と姿を見せないであろう冷徹な男に懇願する。それ以外に、なにができるか分からなかった。


「お願い……お願い……」


 衝動を抑えきれず、再び額を打ちつける。すると……

 ぎぃっ……

 格子が一本、きしんだ音を立てて傾いた。


「えっ⁉」


 レミナは動揺した。神聖なる籠が、頭突きを二回した程度で壊れるはずがない。


(……まさか、リック……?)


 思い出す。リックは事あるごとに格子に触れていた。そしてマクレガンは、悪魔は触れるだけでその身が()けると言っていた。リックはなぜ、自分を傷つけるものに度々接触していたのか……


(聖なる籠が悪魔をむしばむなら、その逆も……?)


 分からない。だけど壊れかけているならチャンスだ。

 レミナは格子をつかんで激しく揺さぶった。

 ばきぃっ、と音を立てて格子が外れる。


(もう一本外れればっ……)


 額をたたきつけ、殴りつけ、とにかく手当たり次第に格子を揺らがせる。

 歯を食いしばり、血を垂れ流して純白のワンピースを赤く染めても、レミナは止まらなかった。

 やがてもう一本格子が外れると、なんとかレミナが通り抜けられる程度の隙間ができた。


「リック、今行くから!」

 身体(からだ)をねじ込むようにして外に飛び出すと、レミナは大空へと舞い上がった。


◇ ◇ ◇

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ