メーデー感
こないだ久々に開催されたルミネの10パーオフに行ってきた。大宮駅。ルミネ1とルミネ2。そらもちろんどっちも行く。コロナ関係で久方ぶりの10パーオフだもの。そらもう垂涎もの。水前寺清子。待ちわびた10パーオフだもの。三百六十五歩のマーチ位待ったからね。三歩進んで二歩下がって。待ったからね。さんざん待ったから。それはもう。
「まず無印に行って、んでユニクロ行って」
だからもう行く日の何日か前からメモ帳に予定を書き込んで過ごした。10時開店と同時に攻め入る。合戦の時の一番槍みたいな勢いで突撃する。ドアのガラスをマイボディで突き破るつもりで突撃する。
「んで、ゾフ軽く流して」
いい眼鏡。ビビッと来た眼鏡があったら検討するけど。まあここは保留。
「んでスリーコインズ行って、本屋にも行って、で、最後は成城石井で買い物して」
11時退店。12時家帰宅。お酒飲む。成城石井品でお酒飲む。がぶがぶ飲む。浴びるほど飲む。うわーってなるくらい飲む。馬鹿になるくらい飲む。そんで夜そのことをアメブロに書く。場合によってはお話のネタにするのもアリ!
「あ、あと私の部屋も行きたいな」
運命の深皿、緑黄色(その深皿のあだ名)と出会ったあそこにも久々に行っておきたいな(ちなみにそれまでは千葉のヨドバシの上のダイソーで買った300円の深皿を使っていた。あだ名、大佐。長年お世話になっていたが洗い物の際事故で欠けてしまったので勇退された)。
「うーむ、そうなるとなあ、一時間、いや一時間半かな・・・」
行く数日前からこのような事をメモ帳に書き込んで過ごした。タイムテーブルとかも書いたし、行く順番的なものも書き込んだ。あとはもうメモ帳を出したりしまったりした。メモ帳を出したりしまったりまた出したり。そんでルミネ10パー突撃予定日ページを見たり改めたり、より詳細な予定を書き込んだり、スイカにもお金入れるの忘れないとか書いたり。駅まで自転車で行くか歩いてか。自転車だったら猶更二時間以内に帰ってこないと駐輪場お金取ってくるぞって書いたりした。
そうしてメモ帳を出したりしまったりして、さながら餌を食べて一回吐いてまた食べる野生動物みたいに自分とメモ帳との同期を行った。もう同期されてますよって表示が出ても構わず更新ボタンを押すみたいに何度も同期を行った。
「・・・きたきたきた」
そしてルミネ当日朝9:45、六割が新宿方面に向かう埼京線のホームから四割が向かう大宮方面の埼京線に乗った。
ああ、ああ、あああああ。
もう言葉も話せない。思い出せない。語彙崩壊。吊革につかまった状態でマスクの内部でずっと口を動かしていた。もちろん言霊にはしない。声は出さない。音は出さない。でもずっと情報の照らし合わせ。メモ帳を見返したい感情を我慢するのに必死。こんなところで、電車内でメモ帳開いたりしたらなんか意識高い系だと思われる。困る。意識は高くない。ただ澄んでる。澄みすぎてるくらい。澄みすぎて澱んでるくらい。澄みすぎて澱んで見えるみたいな状態。熱処理間に合わなくて過負荷起こしてるみたいな状態。頭がフットーしそうだよおっっ状態。
『まもなく大宮あ大宮あ』
電車が大宮駅の埼京線の地下深い所に到着したら我先に飛び出た。
それから階段を二段飛ばしで走って上がって地上を目指した。本当はこれも良くない。急いでると、忙しくてあるいは忙しいふりした意識高い系だと思われる。
階段上り切って改札にスイカぴってやってそこでも飛び出てルミネの前に着いた。10時前。10時3分前。
「ふーふーふー」
内臓が全部口から出そうだった。臓がフットーしそうだよおっっ状態。でも、いい。全然いい。些末だ。それが今この瞬間何だっていうの?
ルミネだルミネ。今この場にそれ以外存在しない。必要なのはそれだ。それだけ。ルミネだけ。あなただけ。
ルミネルミネルミネルミネルミネルミネルミネルミネルミネルミネルミネルミネルミネルミネルミネルミネ。
10時10時10時10時10時10時10時10時10時10時10時10時10時10時10時10時。
ルミネルミネルミネルミネルミネルミネルミネルミネルミネルミネルミネルミネルミネルミネルミネルミネ。
「あれ?」
しかし10時になってもルミネは開店しなかった。誰も開店しようとしなかった。ルミネ中のお姉さんもドアを開けるそぶりを見せなかった。
「は?」
それで血が、少し血が、体内を巡ってた血が、縦横無尽にめぐっていた血が、一秒で天王星、海王星、何だったら冥王星まで飛ぶくらいに巡っていた血が、冷めた。落ち着いた。冷静になった。
ちょっとドアの脇の所を見た。
『コロナ拡大防止に伴いルミネは当面11時開店になります』
「くふっ!」
見た瞬間息が漏れた。
『ご理解のほどよろしくお願いいたします』
「そら・・・」
そら理解するけど!仕方ないからね!それは仕方ないから!それに文句言う奴出禁にしちまえよ!ぶん殴って追い返せそんな奴!
ただでもそれはそれとして、大ダメージ。まじんぎり。まじんぎり当たった。みかわしきゃくで回避あげてたのにまじんぎり当たったみたいな感じ。
「・・・」
気が付いたら棒立ちしてた。魂出そうだった。ルミネ前で。
一時間の空き時間が出来た。
「ベローチェ行こうかな・・・」
久々に。そういえば大宮駅にくるの自体久々だったなあ。
大宮駅から出た。歩道橋みたいなのをソニックシティを眺めながら歩いた。まあ眺めていたけど目には何も入っていない。感情も何も動いてない。脳みそも何も考えていない。ただ機械的にベローチェに向かってた。
歩道橋の階段降りたら眼鏡屋さんがあった。で、店の前に眼鏡洗浄機があった。
「・・・」
一時間あるしいいか。そこで眼鏡を洗う事にした。何も考えず眼鏡を外して洗浄機に入れた。
ぼちゃん。
池に石を落としたみたいな音。眼鏡洗浄機ってそんな音出す?
見ると眼鏡が無い。見えねえ裸眼の目で覗き込むと、深い。
眼鏡洗浄機の水深が深い。
深い。
なにこれ?
試しに手を入れるとどこまでも入っていく。
眼鏡どこ行った!?
え?
何これ?
え?
眼鏡は?
道行く人たちに奇異な目で見られてる感じがあった。でもいかんせん裸眼で見えない。
眼鏡!
眼鏡ええ!
何この眼鏡洗浄機、バンプのメーデーか?
メーデーのPVか?
眼鏡を探す右手は肩まで入ってる。それでもまだ底には到達しない。果たして一時間で何とかなるのか?
ゾフで買った眼鏡だった。
またゾフで買う事になるのだろうか。
でも眼鏡が無い。
また視力検査とかされるぞ。あれ時間かかるんだよなあ。