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花言葉シリーズ

いつもココロには花を

作者: 尚文産商堂

本作は、『春・花小説』企画に対して投稿する予定だった作品です。

諸所の事由により、投稿するのをやめ、独自投稿という形をとらせていただいています。

夕方5時。

私は一輪の花を持って彼を待っている。

付き合ってから1年。

私のほうから、無理を承知で告白したのが最初だった。



「付き合ってください!」

高校の同級生。

彼に告白をしたのはその高校生活の最後の日である、卒業式の日。

誰もいなくなった体育館の隅っこで、そう彼に伝えた。

その時、手にしていたのは、いかりそう。

花言葉は、あなたをとらえる。

私は、それを彼に渡そうとした。

彼は、笑って受け取った。

「いいよ」

こうして、私たちの恋愛は始まった。


大学は別々のところへ進学していたけど、メールのやり取りで付き合いは続けた。

4月、入学式を終えて、私はふと、家の外を見た。

虹が出ていた。

広々とした空にかかった1本の橋。

私は、ついぞ見とれていた。

きれいだったから、携帯で写真を撮ろうとした。

そのとき、ふと別の写真が目に入った。

今日の帰り、おなかがすいていたから食べた杏味のアイスクリーム。

「そういえば、杏の花言葉は、誘惑だったわね」

私は、くすっと笑っていた。


気づいたときには、虹は消えていた。

「あ…まあ、いっか」

私は気にせずに携帯の写真データを見ていた。

いろいろな花の写真をとっていた。

その中の一枚が、私の目に飛び込んできた。

「これって…」

それはちょっと前、春休みの時、一緒に行った先で撮った一枚の写真だった。

「なんて花だっけ…」

そのときは覚えていたのだが、ふとしたときに聞かれると忘れていた。

あわてて辞書片手に調べてみる。

「ええっと…ディモルフォセカ…花言葉は元気」

私は、空を見上げた。

「私って、元気?」

私自身は分からなかった。


夏、私は元気に振舞っていた。

元気だと、そう思っていた。

そんなある日、彼から花をもらった。

たった一輪。

「これ…」

「桔梗だよ。それに…」

私の髪にさしてくれた飾りは、ハイビスカスだった。

「あまり、無理するなよ」

私は、何もいえなくなった。

「…ありがとう」

どうにか一言だけ言う。

彼は、それを聞いて笑っているだけだった。


秋になると、外へ行くよりも中にいる時間のほうが増えてきた。

それでも、少しずつ深まり行く秋を探しに外へ行くこともあった。

「お前さー、寒くないか?」

「え?」

軽めの服装で出かけたとき、彼がそういった。

一方の彼は、厚着をしてきていた。

さらには、カリン味ののど飴もなめていた。

「風邪だったら、私に移さないでよ」

「はぁ?俺から風邪をうつしたところで、お前は感染しないだろうが。気温が12、3度ぐらいで、よくそんな薄着で過ごせるな」

「元気だからだよ」

私は、そんな彼に言った。

「元気だから、こうやって一緒に外に出れるの」

私は、彼の腕につかまって、上目遣いに言った。

彼は、照れているようだった。

しかし、それでも彼は私のことが好きらしかった。


冬になると、完全に雪で外に出ることが難しくなった。

それでも、外へ出ようとする私を、彼は押しとどめた。

「外は寒いだろうが。こんなときにわざわざ外に出なくてもいいじゃんか」

そういうので、私は結局家の中にいた。

「…で、何で風邪を引かない」

「前も言ったでしょ。私は元気なの」

彼は、前と同じように、厚着して家に来ていた。

南天あめをなめていた。

「それで、どうするの?」

「どうするって、何をだよ」

彼は、私が飾っていたシクラメンを見ながら言った。

「…私との関係」

彼は、一気に熱が2度も3度も上がったようだった。

「何だよ突然」

「こんな関係でいいのかなって…」

彼は、ゴロンと横になって、天井を見ながら言った。

「いいんだろーが、べつにさ」

外を見ると、コニファーに雪が積もっていた。

彼が、何か思いつめた表情だったのを覚えている。


そして、今。

私は、花を一輪だけ持って立っている。

花の名前は、オオヒエンソウ。

花言葉は、私の心を読んで。


30分ほどすると、彼が向こうから歩いてきた。

「ごめんごめん。ちょっと手間取っちゃって」

そんな彼も、何かの枝を持ってきていた。

「で、話って?」

「あの…」

私は、花を差し出した。

彼は、キョトンとした表情を見せた。

「受け取ってください」

彼はとりあえず受け取った。

「これは?」

彼は困っていた。

「オオヒエンソウ。花言葉は、私の心を読んで」

「…じゃあ、俺からも」

彼は、そういって彼が持ってきたその小ぶりな枝を渡した。

小さな、白い花がついていた。

「レモンね」

「そう。花言葉は、誠実な愛」

私はハッとした。

「お前の家においてあるあの植物たちにも、それぞれ恋に関連した花言葉がついてる。俺の家に帰ってからいろいろ調べてみたんだ」

そういって彼は私にその思いを伝えた。

「前はお前から言ったから、今度は俺の番だ」

そして、一気に言った。

ポケットから、小さなプレゼントを出して。

「こんなものしか出せれないけど、俺たちって最高のコンビだと思うんだ。だからこそ、こうやって断言できる。大学を卒業してからでもかまわない。だから…」

そこで同時に言った。

「結婚をして……」

ほしいという言葉を、互いに飲み込んだ。

そして、どちらともなく笑い出した。


5分ほどしてから、改めて彼が言った。

「結婚を前提に、付き合ってもらえるか?」

「もちろん。これまでそのつもりだったのよ」

私はそう彼に言った。

待ち合わせ場所に、小さな花壇があった。

そこに咲いていたのは、紅いバラだった。

以下、参考ページ。

"http://www.birthdayflower366.com/04/08.html"→いかりそう

"http://www.birthdayflower366.com/04/12.html"→あんず

"http://www.hanakotoba.name/archives/2005/09/post_386.html"→ディモルフォセカ

"http://www.birthdayflower366.com/08/12.html"→ハイビスカス

"http://www.birthdayflower366.com/11/21.html"→かりん

"http://www.birthdayflower366.com/12/07.html"→シクラメン

"http://www.birthdayflower366.com/12/10.html"→コニファー

"http://www.birthdayflower366.com/04/17.html"→ラークスパー[おおひえんそう]

"http://www.birthdayflower366.com/05/22.html"→レモン

"http://www.birthdayflower366.com/05/07.html"→ばら


一応、規格外作品という形式なので、花小説企画に対して、本作品からリンクをはらないことにします。

しかし、一度読んでおいて損は無いと思います。

それでは!

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