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73話 勝負あり

そろそろ四章も締めになります


 さて、こちらの宣伝に対してカウンターのつもりで宣伝戦を仕掛けてきたドラン商会だったが俺の予想どおりその作戦はものの見事に逆効果だった。

 いやまぁ悪い意味で信用されている商会があれこれ言い立てたところでそれこそ物語の悪役ムーブにしか見えないわけだし、おかげで俺の株はあの記事で落ちるどころかむしろあがってしまったありさまだった。

 あの難儀なカタリナを落とした男、ドランに正面から喧嘩を売った男とか。ドランのバカボンと比較したらずいぶんとましに見えたんだろうがそこに劇にする予定のカタリナが噂を追加で流すし、その流れで俺がドランで虐げられていた面々を綺麗に治したことが宣伝された時はもうひどかった。

 俺が治療するときにあげた条件なんかも丸ごと全部伝えられて、さらに実際にどれくらい変わったのかってことで治療された人が話すわけだからもうやれ他国からきた美の伝道師だのなんだの持ち上げる持ち上げる。

 そして持ち上げられた結果肌の小さな傷に悩む人や黒子やシミそばかすに悩む人たちがこぞって俺のところに来るんだから本気で困った。

 いやうん、悩んでいるのはわかるし、黒子はまだどうにかできる。だがさすがにシミやそばかすをとるのは俺には無理だ。薄く皮を剥いで治癒魔法をすればいけるんだろうが、傷痕だけよりはるかに広範囲を薄く削がないといけないわけで、麻酔がないと難易度が洒落にならないからな。人の顔の皮をお面みたいに麻酔抜きで剥がすとか剥ぐ方も剥がれる方も拷問でしかない。

 それならむしろレティシアが攻撃魔法を極めてレーザーを放てるようになるのを待ったほうがいいまである。

 そのあたりを誠実にお話ししたら、まぁさすがにシミやそばかすのために刃物で切り刻まれたくはなかったらしく素直に納得してくれたしお詫びに米糠からつくった化粧品を渡したら施術できなかったことに文句を言われるどころかお礼まで言われたな。

 そして俺の名前が上がればバカボンの立場はますます悪くなるわけで、従業員に当たり散らしていたところで俺の施術についての拡散源でもある治療したとき代表となっていた人があの時いなかった他の虐げられていた面々を大量に引っ張って離職させたのだ。

 酷使していた、それも立場が弱いのをいいことに誰もがやりたがらなかったり表沙汰にできないような仕事をやらせていた従業員たちに一気に逃げられたのだからもうそのダメージはとんでもない。

 いくら官吏に手を回して捕まらないようにしているといっても人の口にはなんとやら、うんあっという間にあちこちで評判になったのだ。

 こうなるともうどうにもならない。ブラック企業が大量離職であっさり潰れるように代わりの人材がいない状況での人手不足、しかも評判は最低最悪な状況では補充も不可能で物理的に仕事が回らないというものだ。

 組織というものは巨大な機械なようなもの、常に動き続けるからこそ健全であり続ける。歯車が足りなくなってまともに動かなくなった機械に待っているのは……


「なんといいますか……肉食獣の群れに生肉を放り投げたような、とはあのような光景に対していうのでしょうね」


「だよなぁ……」


 フィーユの書字魔法があるし、俺は四則計算は不自由なくできるから 商会の書類整理を手伝う羽目になってしまったから色々と見たが、いやほんと凄まじかった。ここぞとばかりにカタリナが逃げてきた従業員を囲い込んで、彼らがもっているノウハウを駆使して事業をのっとり出に繰り出してカタリナの手が足りない部分は他の商会が次々に奪い取っていってた。

 まったく、ハイエナもかくやというか商人マジ容赦なくて怖いというか。俺文系にいかなくてよかったわ。経営だなんだ、商売だなんだは俺に適性なさすぎる。就活あったら絶対死ぬって確信できる程度にコミュ力ないからな。カタリナが商売に関わらせないって言ってたのも納得だわ。


「ともかくこれでひと段落、ってところかな?」


「そう、ですね……ドラン商会はどうみても落ち目ですし今からなんとかしようとしても……その……カタリナさんの足を引っ張っていたオコメも今じゃ美容品としての需要でとても期待されていますし……」


 うん、カタリナの問答無用の美肌と俺の草の根活動のおかげで米糠の美容品は完全に根付いて今じゃ品薄状態、カタリナの米畑での増産や新たな輸入もとても期待されていて、もしこの状態で一発逆転を狙って米畑に火をつけてなんてしようものならとんでもないことになるな。いや、ドランがやらなくても誰かがやろうとした瞬間ドランが疑われるし、実際にやった瞬間恨みを持った奥様方が何をするやら。


「カタリナはアタシは食べ物として持ち込んだんだけどねぇって苦笑してたけどな」


「……ですが、実際効果はすごいですから。私も……使わせてもらっていますし」


「はは、フィーユの肌は使う必要ないくらい白くて綺麗だったけどますます綺麗になったものな」


 うん、この距離でみたらよくわかる。もともと綺麗だった肌が潤っているというかなんというか、艶っぽくなってるな。


「そ、そう面と向かってい、い、言われるとて、照れるといいますか……は、恥ずかしいので」


 おっと、マジマジと見すぎたか。フィーユが真っ赤になってしまった。こう、せっかく治験のデータ集めやらカタリナの書類仕事の手伝いやらをひたすら続けてようやく取れた休みなのにここで恐縮されたら楽しめないよな、うん。


「ごめんごめん。まぁでもバタバタしたが本当にようやく色々と落ち着いてきたな」


「そ、そうですね……化粧品にした後に残ったオコメも……メディクさんが頑張ったおかげで、ちゃんと売れていますし」


「俺というか、カタリナが雇った料理人がメインで俺は口出ししただけだけど、な」


 そう、米糠がメインになっているけどちゃんと残った白米の方も売り出している。日本人として白米をおまけがメインになったチョコ菓子みたいな扱いをさせるわけにはいかなかったからな。

 とはいえ、エスパガルで好まれる味が俺の好みとかけ離れている可能性も高いからな。とある中華の鉄人が本格中華を日本ナイズしたおかげで日本中で定着したようにそこらへんはちゃんとした工夫が必要。

 そういうわけでその料理人に原型となる豚のニンニク生姜焼き丼目玉焼きのせ、を食べさせてそれをベースにして色々と豚とニンニク、米の組み合わせの料理をあれこれ売り出してもらって一定以上の支持を集めるのに成功したわけだ。

 幸い、米を耕している被験者という絶好の試食担当がいたからあれこれ試すのは難しくなかった。


「まぁでも、これでカタリナが睨んだ通りオコメもここで定着するだろうな。ここで作るのに成功して値段が下がったらなおさらな……そうしたら今フィーユに整理してもらっている鶏の結果に意味が出てくる」


「綺麗にしたオコメを食べていた鶏が病気になりだして……メディクさんが治療した皆さんと同じようになり、そのままのオコメを食べた鶏は元気なまま……まだ数は少ないですけど」


「ああ。この先もっと長期間大量に……そうだな、一年近くつづけたらこれ以上ないほどはっきりとした数字がでるはずだ」


 たしか明治時代、海軍の高木先生が世界で初めての疫学調査したところ九ヶ月の航海で過半数の乗組員が脚気になってたはずだからな。こういう疫学調査ってどうしても長期間のデータが必須だからまだまだ時間がたりてないんだよな、どうしても。


「……オコメの売り上げに響くかもしれませんが、大々的に売り出してオコメばかり食べるようになっていたら……大惨事、ですね」


「そういうことだ。豚肉やらと食べていたらそうはならないんだけどな」


 俺が米の売り上げを多少犠牲にしてでも植えたかったのはこの種だ。玄米と白米の違いは何だ、なんで豚を食べていたら白米を食べ続けても病気にならないのか。

 豚にいったい何が含まれているのか……その視点が生まれ分析し検証する人がこの先出てくればそれは科学、そして栄養学が生まれてくる。

 俺が答えだけ教えてもよく言う魚を与えるだけになってしまう。釣竿を自分で作ってもらえるようにその種を残しておくのがこの先を考えると一番のはずだ。

 この世界のは俺が死んでからも続く、その歩みに沿うように科学も根付いて欲しい……なんてな。

四章が終わるわけですが公言している通り二月に医師国家試験がまってますのでそろそろ勉強に専念しないといけません……なので五章を医師国家試験後の二月中頃から書くか畳むかの二択となります。読者の皆様にはまるで関係のないリアル都合で本当に申し訳ありません

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― 新着の感想 ―
[一言] いつも楽しく読ませて頂いております。医師国家試験の方が大事だと思いますので、頑張って下さい。そして願わくは、この物語のメディクのような医師になって下さい。
[良い点] メディクのバランス感覚素敵すぐる。 [一言] 国試に専念された後、週1でも月1でも、可能な範囲で再開して頂けると嬉しいです。
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