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72話 カウンター?

婦長アーチャーかぁ


 二度寝から覚めてもやっぱり現実は変わらなくて、あの後ひたすらご機嫌斜めだったフィーユとレティシアにお詫びして色々落ち着いたら埋め合わせをするように約束させられたのだが……埋め合わせって何すればいいんだろうなぁ。

 フィーユはカフェと本好きだからこっちのいい感じのカフェと図書館や書店を巡りとかレティシアは好物のケーキとかか? 

 などとなれないことを考えながらゆっくり休んだ翌日、つまりパーティーから治療という過重労働をした二日後にまたしても大きな動きが発生した。


「ドランの奴らも似たような紙を出してきたね」


「これはまた……過激といいますかなんといいますか……」


「オコメは悪魔の食べ物、食べたら病気になる騙されるな。メディク=ノワルは女たらしの詐欺師であり、エスパガルの密偵、カタリナは騙されている……ふぅん?」


 カタリナが持ち込んだのはこちらもだした瓦版のようなもので彼女の口ぶりからしてドラン商会がつながりのある人間を駆使して売り出したんだろうな。

 メディアをつかった攻撃に対してメディアをつかって反撃するあたりバカボンとその父親、どちらが動いたのかしらないけどその辺りの感覚は悪くないないな。

 内容はオコメを食べることはよくない、危険な食べ物なのは関わっていた従業員の姿を最近みないことから明らかだのなんだのという者にメディク=ノワル、ようするに俺がいかに胡散臭い異国人かを訴えているものか。

 それこそ、俺がブルロワがエスパガルを支配するために送り込んだスパイでありこのまま国内にいれたらブルロワに何をされるかわからないぞとまであるな。いやぁなんというか……


「これはむしろ自滅の一手だろ」


 前言撤回。感覚悪くないと言ったけどそれが仇になるパターンだこれ。


「どういうことだい? 見た感じかなりの数が売れていたけど」


「顔を真っ赤にして俺はやってないと叫べば叫ぶほど周りはやましいことがあるから騒いでいるんだ、もみ消すのに必死なんだって思うものだろ? ましてやドラン商会に色々と後ろめたいところがあるのはみんな知ってるんだろ?」


 情報の発信で大切なのは“誰“が言うのか。ドランの評判はもともとよろしくないのにこんな記事だしたらむしろ今ある悪いイメージを強調する方に向いていくに決まっているからな。


「あー、なるほどねぇ……」


「それにこういう一方的に相手を悪く言うのはよろしくないな。昨日のこちらがだした宣伝に対抗するためなんだろうが思いっきり失敗してる」


「そうなの……ですか? 昨日はその、こちら側もかなり一方的に悪く言ってましたが」


「あれはちゃんと根拠があるし、ドランの搾取だのなんだのの話はされていた“張本人”の告発だから信憑性がある。でもこれは外部から一方的に騒ぎ立ててるだけの悪口にすぎない。側から見たらドランがカタリナに難癖つけているだけだな」


「たしかにそうだよねぇ。オコメが云々言ってるけどただ邪魔したいだけに見えるよ」


「だろ? カタリナがパーティーでオコメを使った美容品の効果を見せつけたばかりだからなおさらな。おまけに美を求める奥様方にとっちゃ食べずに肌につけるものだから気にするはずもないし、カタリナの肌の魅力には勝てないよ」


 御禁制になろうが構わず美容品を思い求めるのはどの世界でも変わらない、ってね。食べたら病気になるって言われても食べないなら関係ないで終わるからな。カタリナの美肌を直でみた人間ならそれこそ何言われても気にするはずがない。


「おや嬉しいこと言ってくれるね。なんならもっとじっくり見てくれても」


「それはまぁいい。まぁオコメ云々はいいとして俺に対するあれこれが致命的な失策だな。これはたぶんバカぼ……シャイロックが主導したんだろうが、うん。ダメすぎる」


「そう……ですか? その、メディクさんが異国人なのは事実ですからこう、危機感を煽るのは悪くない手だと、思うのですが」


 ふむ、フィーユはそう考えるか。たしかにそうだ。重要な立場についている人間に異国の異性が接近したらハニトラを疑えは鉄則、カタリナはエスパガルでは名の知れた商会の主人だしそう見えても不思議じゃない。だけど……


「いやまぁたしかにそうなんだが……まず、俺はまだ実体や風評がどうであれ体裁としては廃嫡されてないからさ、こうやって大っぴらに一方的にこき下ろすのはノワル家に、ひいてはブルロワに喧嘩を売ることにつながりかねないんだよ」


「ノワルはともかく、少なくともあたしには喧嘩を売ってるかなぁ、何考えてるのかなぁほんと」


「たしかに、そうでなくともシャルロットが聞いたら激怒しそうな……いや、怒らず最高の結果を出す為にあれこれ利用しそうだね」


 あー、シャルロットならいい笑顔で『ブルロワに喧嘩を売るとはいい度胸です。しっかりがっつり毟り取らせてもらいますよ』なんていってえげつないことやりそうだなぁ、先に動いたのはそっちだろって。


「うんまぁたしかにそうだな。そしてなにより、うん、なにより致命的なことがあってだな」


「……これ以上に致命的なことがあるんですか」


「ああ……その、なんだ。これ外の人間からみたらな、ドランがやってることって物語の定番の悪徳商人というか、恋人同士を結ばせないために邪魔する悪役そのものの動きにしか見えないだろ?」


「「「あ」」」


 三人ともこれ以上ないほど納得したって声をだしてくれたな。うん、これ本当にどうみても逆効果の自爆なんだよな。


「た、たしかに……娘を金持ちと結婚させる為に娘の恋人の悪口をたれながしたり……無実の罪をでっちあげて恋敵を追い落とす、そんなお約束といっても過言ではないことを、していますね」


「悪口を言ったやつは自分の評判まで悪くするってか。いやはや、恐れ入ったよ……そしてドランに感謝しないとね。これでますますアタシとメディクの仲を劇にしたらぼろ儲けできるし名作になるよ!」


「……本当に劇にするつもりなの? メディ兄とのこと」


「当たり前だろ! こんなどう考えても儲からないはずがない絶好のネタを放置だなんて商人としてありえないしなによりアタシがその劇観たい!」


 おいこらちょっとまて、最後なんだよ。お前は何を言っているんだ。


「自分の金で、しかも確実に儲かるという条件でめちゃくちゃアタシ好みの作品をやれる、しかもモデルがアタシ自身とか最高極まりないじゃないかい! そのうえそれが宣伝になって儲かるっていやほんと、こんな最高のことってあるかい?」


 自分が主役の劇が最高って、さすがにそれは……いやわからないでもないけど、俺は気恥ずかしさでぶっ倒れる気がするんだがそこのところは……


「……く、くやしいですがわかります。たしかに、私もその……もし同じように書物に書き下ろしてもらえることがあれば、その……とても、嬉しいと思いますし読みたいとも……思うでしょうから」


「女の子にとっちゃたしかに夢だものね……あたしもうらやましいし」


 あ、はい。フィーユもレティシアもそういうところあるんですか、そうですか。うかつに口を挟んだら女心わかってないって顰蹙買うな、うん。


「ま、まぁ劇云々は置いといて普通にやってればいいさ。直接的な妨害だけは気をつけて……食べたら病気になる云々はそれこそどうにでもできるしな」


 脚気になった従業員の治療は進んでいるし、治験もしているしな。なんなら皆の前でカタリナが白米を食べてみせてもいいわけだ。


「そこは置いとかないで欲しいけど……ま、わかったよ。それじゃ気にせず動くとしますかね。奥様方からオコメの美容品について色々せっつかれているしね」


「直接的な妨害はあたしがいる限りさせないし、むしろしてきたら一気に潰すチャンスだものね」


「データも十分、集まりそうですし……ええ、そうですね……でもちょっと、ずるいです」


 うん、フィーユごめんほんと埋め合わせはするからとりあえずもうちょっとだけ我慢してくれ。

続きはいつも通りに!

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