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71話 やりすぎてしまったかもしれん

ちょっと遅れてもうしわけありません


 さてあのあとひたすら根を詰めて、途中休憩を挟みながらもなんとかやってきた人全員に施術することができた時はもうほぼ陽が昇りかけていた。

 いやほんと突貫というか回復魔法があって俺の体力と魔力が普通よりは上だからなんとかできたというか、今晩だけでどれだけ人を切って刃物をだめにしたか考えたくない。

 今主流のメスが剃刀みたいに刃を付け替え式にするのは衛生的にも切れ味や手入れ的にも優れているって嫌でもわかるな、これ。とある黒い医師がお金を燃料に鍛えてもらっているような一品物に憧れないわけではないけど使った刃を外して捨てて取り替える、それだけでいいから楽なんだよなぁ。


「お疲れ様。いやほんと、倉庫一つ血塗れになったけどお陰で最高の結果になりそうだよ」


「そりゃよかった……とりあえず、あとはもう任せていいか? さすがにちょっと眠いというか頭が回らない」


 必要な物質と場所、それから人員の手配を済ませてから途中一度視察に来たカタリナは、治療に関してできることがないので寝かせていたから昨日金持ちを魅了したそのお肌に陰りなしってね。

 だから俺にできるのはここまで、ここからがカタリナのターンとして選手交代、さすがにちょっと休ませてもらいたい。正直肉体的なものよりも精神的にくるものがあったからな、麻酔抜きで何度もオペするとかブラックなんてレベルじゃないし。こんなの誰もやりたがらない……よな? いやうん、前世で人を合法的に刃物で切りたいからって理由で外科医目指してますってやつにあったことあるけどそういう人種ならウッキウッキでやるのか?

 しかし、こうなると俺に攻撃魔法の才能が無くてよかったというか転生は転生でも戦士だとか冒険者じゃなくてよかったな。麻酔なしで刃物を入れて痛がられるだけでこんだけ疲れるんだから命のやりとりとかしたらストレスで胃壁も毛も剥げ落ちそうだ。

 そりゃ一応俺も男だから強くてニューゲーム的な転生に憧れるし、今だってこっちで試してみたい戦闘法の一つや二つや三つあるにはあるけどそれとこれとは話が……あ、うん。だめだ思考がうまくまとまらない。さっきからわりと思考が迷路になってる。いや、それがわかる程度にはまだ大丈夫なんだろうがもうさっさと寝たがいいなこれ。


「もちろん。睡眠不足はお肌と健康の敵なんだろ? ほらさっさとたっぷり寝ておいで。レティシアとフィーユも用意した寝室で寝かしてるから」


 よかった。二人ともギリギリまで頑張ってもらったからなぁ。レティシアはお湯の準備をはじめ換気やら周囲の警戒やらなんやら、フィーユは魔法カルテの作成ならびに治療前後の経過の記録と。近いうちに、できれば今日中に埋め合わせしないとな。何して欲しいか二人に聞いて……


「ありがとうな。それじゃ俺も今日はゆっくり寝かせて……」


「あ、だからってフィーユとレティシアと一緒に寝るんじゃないよ。未来の伴侶が働いている間に他所の女とよろしくヤるだなんて没落まっしぐらコースだしね」


「……もはやどこから突っ込めばいいのかわからないんだが。寝る違いだろうが、といえばいいのか?」


「いや、人間疲れている時のほうがこう元気になるって昔部下が言っていたし、死んだオヤジもそんな感じでアタシを仕込んだとかなんとか」


「それ以上言うなよ、本当に」


 いやたしかに体を休ませようとする副交感神経の働きで生理的に下半身は元気になるから間違ってないんだが、さすがにそれはやめてくれよな。酒のせいとか徹夜明けのテンションのせいでアレでナニしてとかどう考えてもトラブルでしかないんだからな。

 しかしまぁ、違う世界だろうとなかろうとどうしてこう誰も彼もがこういうトラゴシップ話が好きなの……待てよ?


「カタリナ、ちょっといいか? 少し話しておきたいことがある」


 すっかり忘れていた。あるじゃないか、この後に俺にもできること。ある意味当たり前すぎてどうこうしようって意識がかけらもなかった。

 正直あまり褒められたことじゃないかもしれないが、今回ばかりはいいだろう。カタリナに少し、そうほんの少し入れ知恵をしておくか。




 なんて軽いきもちだったんだ。そう、ちょっとくらい悪知恵授けたってまぁいいかって、徹夜明けでテンションと自制心が壊れている状態だっただけなんだ。その結果が……


「あっはっは!笑いが止まらないとはこのことかねぇ! いやぁ愉快愉快!」


「……メディクさん、流石にこれはどうかと」


「……メディ兄、ちょっとお話しよう、ね?」


 うん、どうしてこうなった。いやほんと、今回は俺も原因の一端なんだろうがそれでもここまで二人に睨まれるほどのことはしてないはずだ。


「俺はただカタリナに噂話を流せ、今回の顛末やらオコメをつかった美容品の宣伝なんかを面白おかしく一枚の紙にまとめたのを売り捌いたら色々お得だぞと言っただけなんだが……」


 うん、本当にこれだけなんだ。風評や肩書きを利用しメディアも使い倒して世論を動かす、これは婦長の得意技だし、現在でも多用されている手法。そもそも噂を駆使して集団を惑わすのは風魔忍者の得意技だったくらい大昔からある手だから別に使って悪いはずがないし、ちょっとした入れ知恵のうちだよなうん。


「……その結果、たしかにドラン商会のことやメディクさんのした治療のことなども噂になってますが……それ以上に、街中にメディクさんとカタリナさんが婚約したという噂が流れているのはどういうことなんでしょうか」


「カタリナが一目惚れしてメディ兄に告白しただの、国を超えた愛だの 恋敵との奪い合いだのなんだの……歌や劇にするだのなんだのいう話まででてるんだけど?」


 おいカタリナ、誰がそこまでしろと言った。というか、話をして寝て起きたらもうこれってどんだけ短時間でやらかしてるんだよ。


「いやー、悪いねぇ。こう、噂話を意図的に利用した宣伝って聞いたらこの手の話が大好きで広めてくれるおばさまがたが一番好きなのってやっぱ色恋の話だからね。こうどういう噂を流すか話し合っている時ついもりあがっちゃってねぇ」


 ああ、うん。井戸端会議の最強の話題は誰とかれができてるだのなんだのだもんな。学生時代の恋バナにはじまりだれとかれが不倫だのなんだのはワイドショーでも鉄板オブ鉄板、老人ホームでもそうだっていうし、拡散速度も違うよなぁ……


「まぁ所詮は噂だし気にしちゃだめだよ。ま、歌や劇にはどうせならするつもりだけどね」


「するのかよ⁉︎」


「だってあんたがいったことだよ? 商品とセットになる歌やわかりやすい売り文句があるといいって」


 そういやたしかに噂云々の時にいったな。日本が誇る万能超人平賀源内が土曜の丑の日をはじめたりCMソング作ったのを思い出してつい……でもだからってなんで俺が歌の題材になるんだよ⁉︎


「アンタがもたらしてくれた知恵やらアイディアから生まれた商品だし、それに経緯やら背景を抜き出すと大作間違いないだからしょうがないだろ」


「……若く美しく才能ある女商人の窮地に言いよる下衆な金持ち。そこに現れる異国で虐げられた英雄の息子。そこで生まれる愛、そして彼がもたらす知恵と工夫が商人の窮地を救う……そうですね、たしかに物語になりますね。最後に王子が何も受け取らず国へ帰れば完璧です」


「はっはっは、そこはあれだろ。皆の前で幸せなキスして末長く幸せに暮らしましたとさがベッタベッタのお約束に決まっているじゃないか。悲劇は一部の通にしかうけないよ?」


「……ベタベタすぎる王道は食傷しているのじゃないですか」


 ……よし、寝なおそう。うんそうだそうだおれはまだゆめをみてるんだ、うん。


婦長のクラスがきになる……続きはいつもどおりに

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