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67話 危機一髪

ガンガンの漫画原作発表延期かぁ。応募してるので楽しみです

「とまぁ、あまり他人が開いた宴席で長々と話すと申し訳ないですしこれくらいで……興味がおありの方はぜひカタリナまで。できうる限り協力させていただくつもりです」


「ふ、ふん! ただちょっと傷がうまく治せるくらいでなんだ、肌が云々だって僕が仕入れる西方最高の化粧のほうが」


 うん、やっぱりというかなんというか挨拶を返したのに拍手もなにもせずにぐちぐちいうのな、シャイロックは。でもまぁいいか、正直……


「カタリナさん、ちょっと! ちょっとよろしいですか! い、いったい彼はどんな魔法であなたの肌をそんなに美しく!」


「カタリナさんにしたことを是非とも! 妻と娘に教えたいので何卒!」


「め、メディク殿! すでにある傷はどうなので! 傷を綺麗にできるなら今ある傷をなんとかすることも」


 それどころじゃないからな、うん。カタリナまでって言ったのに俺まで巻き込んで質問攻めにしないでくれよ。


「はは、ここじゃ明かせないけどアレだよ。メディクが作ってくれたものは一日銀貨一枚もかからない、いや下手したらこの先もっと安くできるかもってやつだよ? まぁアタシの事業がうまくいけばだけど、たっかい異国から仕入れた化粧品よりよっぽどお手軽だよ」


 そしてカタリナも盛大に煽るなよ、いろんな意味で。殺到している人達が目の色変えているし、シャイロックの顔色が赤を通り越しつつあるぞ。まぁいいか、このタイミングなら乗らない方が損だな。俺もついでに爆弾投げておくか。


「えっと、今ある傷については傷によるとしか言えません。あまりに深かったり古かったら難しいですがある程度のものだったら、軽くできるかと」


 十九小隊の治療の時や爺や相手に練習する時ついでにためしたからな、古傷を治せないかっていうので。


「素晴らしい、その手法を是非とも……いえ、それよりもまずは知り合いに紹介を」


「はいはい、具体的な商談はアタシを通じて後日ね。なにせほら、今日の主催者はドラン商会だろ? 下手にここで商談成立させたら仲介料請求されちまうよ」


「あはは、た、たしかに! それは失礼しました」


 カタリナのどぎつい冗談に爆笑するのか、この招待客。この感覚分からないが……うん、とりあえず今この場で大量に押しかけられても困るからそれで黙って下がってくれるなら助かるな。


「ではそれはそれとして是非とも今後とも良きお付き合いをするために挨拶のほうを……」


 あ、うん。下がらないのか。見ると多くの人がギロッとした目でこっちを見てるし……挨拶をしようとする目半分、カタリナを取られたと思ってやっかんでるの半分ってところか? うん、これちょっと大丈夫か?


「アタシはしみったれも嫉妬深い男も嫌いだよ」


 おっと、カタリナナイスフォロー。でもまぁほとんどカタリナのせいだからその一言で仕事終わったと思わないでくれよな! 




「ほ、本気で疲れた……」


 あの後ひっきりなしに挨拶にくる参加者の相手や妬みで突っ込んでくるのをなんとかこなしてくたくたになったがそのままもはや自室と化しつつある商会の部屋に戻ってこれた。

 久々の宴席やら知らない人の相手でもう疲れたからこのまま寝たいんだが……


「まずは上々ってね。いやー、しかし痛快だったよ。アンタに反撃された時のあのバカの顔といい、仮面を外した時の周りの反応といい。あきらかにこっちのペースに飲まれていてたまらなかったねぇ」


 うん、俺のベッドにドレス姿のままのカタリナが座っていてもう寝ると言い出せる空気じゃない。というかドレスのスリットがどぎついくらい深いからもうあれだ、見えそうというかなんというかだし、座っているからその豊かな谷間が丸見えというかなんというか……誘ってるのかってレベルだぞまったく。

 と、とにかく話をそらさないとな。なんかこう、宴会の空気のせいで色々とテンションがおかしくなってるし。


「思いっきり奇襲だったからな。しかしあちらのパーティーでここまで派手にやったけどあれでよかったのか……」


「なんだい、何か心配事でもあるのかい?」


「いや、ちょっとやりすぎて余計な恨みを買ったかなって。刺激しすぎてあっちが直接的な妨害にでてこないか心配でな。それこそオコメ畑に火をつけたりしてこられたら面倒なことになるだろ」


 金持ち喧嘩せずとはいうけど、バカが金をもった場合は喧嘩することを躊躇わないからなぁ。それこそ、こちらに圧力をかけるためにそれくらいしてもおかしくないし……


「なーにいらない心配してるんだよ。そんな当たり前のことに手を打ってないはずないだろ」


 あ、いらない心配ってそういうことか。さすがにそんなことをするほどバカじゃない、じゃなくてやれるならやるってこと前提なんだな。


「なんのためにそれなりの金をだしてオコメ畑耕してる奴らの宿舎に腕の立つ奴をおいてると思ってるんだい。脱走者を防ぐのと同時に余計な手出しをされないためだろ」


「いやそれでも彼らじゃ対応できないくらいの


「そんな派手な動きしたらさすがにバレるって。いやむしろしてくれたが良いまであるね。そこまで動いたならとっ捕まえて自白させりゃあいつらを追い詰める一手になる」


「……取り締まる奴らも金で黙らせられるって言ってなかったか?」


「はっはっは、いつ自白させて法の裁きを受けさせるっていったよ。広場なんかでこう、自白させるまで責め立ててドランの名前を出させたら揉み消すもなにもないし、そうでなくとも評判ガタ落ちだろ」


「……さすがにその、拷問を皆の前でしたらこっちが問題に」


「なーに、傷をつけないでやればいいのさ。例えばひたすら羽でくすぐるとか、はらぺこのやつの前で高い肉をうまそうに食うとかやりようはいくらでも、ってね」


 鬼だ、鬼がいる。法律的にセーフな手を駆使して完全に周囲を味方につけようとしてる。それこそ取り締まる役人がいくらあちらを黙認したところでエスパガルの民が許さないって空気を作る。ほぼほぼ扇動だこれ。


「……そこまであれこれ考えられるのになんでこう、俺たちが来るまで一方的にやられてたんだよ。カタリナだけでなんとかできたんじゃないか?」


「いや、それはないよ。アタシがこうやって色々と手を打てるのはアンタが来てくれたからだよ。実際あの病気にはお手上げだったし、あいつらがあれこれ言うのに反論しづらい状況だったしね」


 まぁたしかに。脚気は米のせいだっていうのは間違いじゃないから反論しても正当性は出にくいよな。無理やり反撃してもこっちの方が悪役になるまであるし。


「だからアタシとしてはアンタを見込んで大正解。たった数日でこんなに動けるようにしてくれたし、ほんとアタシの男を見る目はたしかだよねぇ。いやほんと、いい婿捕まえたよアタシは」


「まだ婿っていうのかよ……本気で婿にしたいのかよ」


「本気も本気さ。あんだけ大勢の前でアンタのことを紹介したわけだし、ここでアタシがへたれて退いたらアタシの評判に傷がつくってんだ。天下のカタリナが男に逃げられてやがるとか別の女に取られてやがるってね」


「そこはこう、そっちからうまいことフっただのなんだのごまかせないのか」


「やだよ。そんなせせこましいこと。だいたいフったならフったでアタシの見るめが曇ってたってなるじゃないかい。どっちにせよ欲しいと思ったものを手に入れられずにアタシの名が傷つくなら手に入れる一択だろ? 例えばこうやって」


 おい、カタリナ。なんでこうドレスに手をかけているんだ? まるで着替えでもするみた……


「ここらでちょっと大人の、本当の夜会ってやつを堪能しないかい? もういい時間だし、お互いちょうど様になる格好だ。初夜の前倒しにはもってこいだよ」


「お、おいカタリナ」


「アタシのためにあんだけ敵地で男を見せてくれたんだからこう、乙女心にビビットきてねぇ。だからほらいいじゃないか? アタシはもう本気なんだしさっきの男どもとちがってあんたは見るだけじゃなくて好きにしても」


 カタリナの声にからかう気配はない、いやむしろどこか恥ずかしいのをごまかしているかのように若干震えている感じすらする。

 よく見ると顔も赤くて……うん、やばい、ちょっと待て。これは反則だろ。普段堂々としている女傑がこんな姿を見せるのははんそ


「ナニヲシテイルンデスカフタリトモ」


 ……や、やばい。背中、背中がぎゅっとなる。というか、うん。こ、今回は俺は悪くないぞ、本当に悪くないぞ……


続きはいつも通りに!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 毎回楽しみにしてます。 [気になる点] この世界の化粧品ってどんなんですかね? [一言] え?ヘタレなくて一線超えるんすか...マジすか?
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