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7話 図書館はギャルゲ的には出会いの場

洋書がびっしりつまったファンタジーな図書館って憧れます

 図書館の中はまさに異世界、天井まで届く巨大な本棚にびっしりと詰まったレトロな本。海外の映画や物語なんかにでてくる図書館そのもので否応なしにテンションがあがるというものだ。

 なんて、心踊らせて図書館に入ったものの、俺は入って早々に大問題に直面していた。


「検索性最悪すぎるぞこの図書館」


 そうなのだ。日本の図書館ならだいたいジャンルや出版社、作者名で分類配置されていて調べたいことがあればどこにいけばだいたいわかるし、端末で調べたら蔵書や貸し出し状況なんかも把握できる。

 だけどこの図書館にそんな親切さはかけらもない。案内図すらなくてどこになにがあるなんて皆目見当もつかない。

 おまけに本の背表紙もそれこそアンティークな古書といった具合だからだいたい色も含めて同じ感じだし装丁もこってなくただ文字でタイトルが書いてあるだけ。

 タイトルから内容が分かる、それこそ今目についたに「火炎魔法運用の基本と応用について」のようなものならいいが、その隣の棚にある「火の書」では火そのものについての本なのか火を使った攻撃魔法についてなのかわからないし、またどの程度のレベルなのかもピンとこない。

 こう考えると日本の図書館や本屋というのは利便性をしっかりと追及してくれていたんだなと実感する。いや、俺の理解が追いつかなかったり知らないだけで、この配置にも規則性があったり図書館共通の配置ルールがあったりするのならなにも言うことないのだが。

 なんて、日本と比較してもなんの解決にならないし時間の無駄。ともかく関係ありそうな本を探すしかないか。


「ん?」


 などと、やたらと広い図書館をあてもなくぶらぶらと徘徊していた俺の目に、俺以外で初めての利用者の後ろ姿が飛び込んできた。

 長い黒髪をたなびかせているその人は察するに女性で、本棚の上の方にある本を取ろうとしているのか、必死になって手を伸ばしているがぎりぎり届きそうで届かない。

 これがもっと届きそうにないのなら諦めて台座を持ってくるなり踏ん切りがつけやすいだろうがなまじ頑張ればなんとかなりそうだからなんとかしようとしてしまっているんだな。

 しょうがない……見て見ぬ振りするのも悪いしここであったのも何かの縁だよな。


「どれが目的の本ですか」


「……え?」


 俺の声に驚いたようにその人が振り返った瞬間、俺は思わず息を飲んだ。艶やかなその長い黒髪に半分隠れたその目は驚くほど深く澄んでいて、一瞬吸い込まれそうな気持ちになる。


「あの……どうかされましたか?」


 おっと、やばい。思わず固まっていた。こう、身内のひいき目を抜きにしても美人なレティシアに若い時はモテにモテ今もその輝きを失っていない美魔女な母さんと毎日美人と顔をつき合わせているから美人なれしていると思っていたが、そんな俺でも思わず見入ってしまった。

 レティシアとはまるで違うタイプの美人、レティシアが太陽とするなら月とでもいうかな。ぱっと目を惹く華やかさはないけど知的な空気と、それと図書館の放つ静寂の気配が合わさって本当に魅力的だ。


「ああ、失礼。えっと、本を取るのに難儀されているみたいですので、代わりにお取りしましょうか?」


 だが、いつまでも見とれていたら失礼極まりない。俺は慌てて少々かしこまった口調になったが本題を切り出した。ここですっと、横から目当ての本をとって渡す方がスマートだし漫画なんかだと定番だが前世からあわせて都合四十年ほど非リア充な俺にそれはハードル高すぎる。それに目当ての本を間違えたら恥ずかしいし、台座 もパッとみたところないしな。


「すいません……でしたらその、上から四段目右から三番目の本をとっていただけないでしょうか」


 四段目の右から三番目というと……これか。遥かなる魔法史。


「これであってますか?」


「はい……それです」


 俺が本を差し出すと、両手で受け取りそのまま大事そうに抱きかかえる。うん、それだけでこの人が本当に本が好きなんだなと実感できるし、取ってあげてよかったって思える。


「ありがとうございます……台座もなく、あと少しで手が届きそうでしたので……少々、ムキになっていました」


「そういうものですよね。それじゃ、俺はこの辺で。本を探さないといけないので」


「書を……あの、この図書館は初めてですよね? その……目的の書を探すのは、大変だと思うのですが……大丈夫、ですか」


 大丈夫じゃないです、問題です。本当にどこになにがあるかわから……てっ、ちょっと待とうか。


「えっと、どうしてここの利用が初めてだと?」


 なんでバレたんだろう。この人は初対面のはず。もし会ったことがあれば忘れるはずないしな。名乗ったりレティシアがここにいたらそりゃ身バレしてもおかしくないが……


「私はその……入学してからいつも、この図書館にいますが……その……あなたとここでお会いするのは、初めてですから」


「入学してからいつも?」


「はい……その……学院長から、入学するならここに好きなだけいていいと許可を頂きまして……先週の入学式だけは新入生の義務で出席したのですが……そのあとはずっと、ここと家の往復でして」


 新入生の義務、ということはこの人も新入生、それも学院長が言ってたレティシア以外にもう一人の許可枠なのか。


「あなたも、新入生でしたか」


「はい……先週、入学したばかりの新入生です。あなたの姿は入学式で見かけたので……その、覚えていました」


 覚えられていた、か。たぶん、レティシアと一緒のところを見られたんだろうな。レティシア、とにかく目立つからな。


「フィーユ=ジッド、と言います。どうぞよろしく……お願いします」


「こちらこそ。えっと、メディク=ノワルです。よろしくお願いします、ジッドさん」


 正直ちょっとだけ、フルネームを名乗るのはためらいはある。なんせ新入生なら俺の名前を知っている可能性が高いからな。

 まぁ、あちらがフルネーム名乗っているのにこちらが名乗らないのは失礼極まりないから名乗るしかないが名乗った瞬間嫌な顔されることも少なくないからなぁ……


「同じ新入生ですし、その……もっと楽な言葉遣いでかまいませんよ」


 だが、そんな俺の思いは杞憂に終わり目の前の彼女はノワルという名にまるで反応を示さないでくれた。それだけで嬉しく思える。


「……なら、遠慮なくフィーユと呼ばせてもらうけど、構わないかな」


「はい……構いませんよ」


 なんだろう、ちょっと照れる。前世と合わせてもレティシア以外に女性を下の名前で呼ぶなんてなかったしな。


「それで、どのような本をお探しでしょうか? よろしければ、お礼にお手伝いさせていただきますが」


 と、照れてる場合じゃないな。俺がここにきた本来の目的を思い出さないと。


「え、えっとじゃあ、魔法薬の初歩についての本がある場所を教えてもらえると助かるんだけど」


「魔法薬の初歩、ですね……わかりました。それでは、書に尋ねてみるとしましょう」


 そう言うや否や、フィーユが差し出した片手に光が宿り、その光は無数の文字へと収束して行く。


「これは……魔法?」


「はい……私の家は代々書字魔法という、字や書に関する魔法を扱っておりまして……その縁もあってここも自由に使わせていただいてます」


 なるほど、学院長がここにいることを許可するのも納得だ。書や字の魔法を使う家と図書館は切っても切れない関係なのは想像に難くないものな。


「……終わりました。えっと、こちらですね。案内しますのでついてきて、ください」


 すたすたと迷いなく歩き出すフィーユに遅れまいと俺もあわててついていく。しかし、ただついていっても無言のまま終わりそうだし、何か話題をふらないと……


「書字魔法って初めて聞いたのだけど、どういうことができるか教えてもらえないかな」


 非リア充歴四十年の俺が気の利いた話題を出せるはずもない。変に気取らず、素直に疑問に思ったことを尋ねたほうがいいだろうな。


「そう、ですね……例えば知りたい内容が書かれた本がその図書館のどこにあるかを探したり、あるいは字などを宙に浮かべて表示したり……記録を魔法で残したり、ですね」


 なるほど。限定的な検索エンジンとオフィスソフトを魔法で使える感じか。


「それはまた便利だな。あちこちで引っ張りだこになりそうな魔法だ」


 俺の便利という言葉に一瞬フィーユが驚いた顔になって、それからすぐその顔が嬉しげにほころんだ。


「ええ……書字魔法は一般的な魔法よりもずっと適正が求められまして使い手は少なく、ここでも教えられることはないのですが……使える人たちは仕事に困らない、ですね。だいたい、大きな図書館や役所には必ず一人は雇われることになりますし」


「なるほど。この魔法が使える人がいるなら案内図やタグがいらないわけだ」


「案内図……?タグ……?」


 おっと、やばい。思わず前世のことが漏れてしまった。


「いや、忘れてくれ。こういうのがあれば便利だけどなって妄想しただけのこ」


「そのお話、詳しく聞かせてもらえませんか?」


「へ?」


 手を振ってごまかそうとしたが、フィーユはそれにかまわず予想外に食いついてくる。これはちょっと予想外だな。


8話は15:10ごろに投下します。まだだ、まだ終わらんよ。三連休はまだまだ続くんだ……

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