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65話 アピールタイム!

今日からデレステのイベントが本番……どうなるかなぁ

「さてさて、皆さん。今宵宴を開かせていただいたのは我が息子シャイロックから皆さんにお話があるからでして。どうかお聞きください」 


「やぁやぁ皆さん、今日は来てくれてありがとう。今日は急なパーティーだからさほど準備ができなくてすまないね。それなりにいいワインや料理も用意したけど次

はもっとしっかりとしたのを用意するからさ」


 父親から挨拶を引き継いだシャイロック、ドラ息子が大したことないを繰り返して権勢アピールか。どうみてもとんでもなく豪勢で金がかかっているんだが……いや、案外本気で質素と思っているのかもしれないな。金銭感覚なんて立場が変われば全然違うのは私大の奴らと飲み会した時に散々味わったし。


「まぁまずは乾杯と言いたいんだけどその前にさぁ、みんなに聞いてほしいことがあるんだ。知っての通り俺は恋が多い男だが流石にそろそろドラン商会を継ぐためにちゃんとした相手を見つける必要があってね」


「ものはいいようってやつかい……どこが恋だよ、まったく」


 カタリナは苦々しげに吐き捨てているし、カタリナ以外の参加者も少なくない数が今ので苦笑しているあたり、こいつの女癖は相当なんだろうなぁ……ああ、うん。こういうタイプのやつは本能的に苦手だ。

 前世では女性に縁がない人生を過ごしていたし、いわゆるチャラ系ウェーイ系は心底関わるなと思っていた。価値観が違いすぎるのにあれこれ上から目線で言ってくるし……彼女だのなんだのそういうのは求めてなかったのにいないとおかしい云々、作ろうとしないのは云々何度言われたことか。いやほんと、余計なお世話だこのやろうとしか言えないんだよなぁ……


「それでこの僕にふさわしい女はエスパガル広しといってもやはり一人……カタリナ、君だけだ! 父親が死んでからその若さで商会を切り盛りしたその手腕は実に見事! そしてなによりエスパガルの宝石と呼ぶに相応しい美しさ! 君こそ僕の花嫁にふさわしい! そう君はまさにエスパガルの宝であり、エスパガル一の、いや世界一の商会の長となる僕のそばにいるべきだ!」


 熱に浮かされた声とでもいえばいいのか、ずいぶんと一方的な言い分を喚き立ててるな、こいつ。

 とうのカタリナは……あ、うん。仮面つけていてよかったな、ほんと。周囲の目線が集中しているのにまだ出会ってそれほど時間が経ってない俺でもわかるくらい、うんざりした空気が漂わせているものな。


「ああ、だがカタリナ。君の美しさは素晴らしいが罪でもある! あまりに多くの男を狂わせ、身の程知らずな男が寄ってくる! 僕はそれが心配で心配でたまらない! なにせ現に一人、恥知らずにも君に言い寄っていて、しかも婚約者候補を自称しているじゃないか!」


 そしてシャイロックはそんなカタリナに気づかず、いや興味がないのかテンションを暴走させて捲し立ててるし……そして矛先俺に向けるのか。

 いやうん、自称婚約者候補ってそれ俺じゃなくてお前だろ。俺はカタリナ公認というかカタリナがむしろ婿だなんだって言い出してるんだし……と言っても聞かないよなぁこの手の人種。


「そんなクズ避けのためにそして僕の本気を知ってもらうために僕から君にプレゼントを用意させてもらった」


 パチンとシャイロックが指を鳴らす。それにあわせて会場のドアが開き巨大な、それこそゲームなんかにでてくる宝箱のような箱に詰め込まれた金銀パール宝石、そして豪奢という言葉では足りないような豪華絢爛なドレスまで運ばれてくる。


「これが僕からの求婚の証さ。君のために用立てた最高のドレスに宝石の数々、世界中で君のためにここまでのことができるのは僕だけだと思うよ?」


「あのドレスだけで館一つが……なんという財力」


「あの宝石、一粒だけでもわけてくれないかしら……ほらみて、あの真珠なんてもう大きくてなめちゃいたくなるくらい……」


 会場のあちこちから、感嘆の声や物欲しげな声を引き連れて、カタリナの前に宝の山が置かれていく。ちょっとドン引きそうな声も混じっているが、ここにいる人たちはおそらくエスパガルの成功者たち、宝石だなんだにはたしかに弱いんだろうな。


「さぁ、自称婚約者候補君。君はいったいカタリナのためになにができる? たかが他国からきた学生の、それも英雄の嫡男でありながら家を継ぐことすらできない落ちこぼれに何ができる? もしなにかできるというなら今この場でしめしてみたらどうだい?」


 カタリナの前に積み上げて宝の山に並んで俺を参加者皆が見えるように指差してバカにする、か。なるほど自分の富をみせつけつつ周囲にカタリナへの本気アピールと俺との差を見せつけ、ついでに俺の惨めな姿を酒の肴にするってか。

 実際有効な手だろうなぁ、カタリナに贈られた宝石やら真珠に向ける参加者の目線すごいし聞こえてくる声もちょっとうん、なレベルのものだしな。どんな世界でも宝石には女性を惹きつける魔力があるのは変わらないと。いや男でも宝石好きな人は好きだけど

 だがまぁいい、あちらがそうくるなら反撃するまで。幸い、あちらの攻め手はこちらの得意分野。確かに宝石は魅力的だがそれだけじゃ手落ちだぞ。


「皆さま、お初にお目にかかります。ブルロワがメディク家嫡男、メディク=ノワルです。皆様には英雄アポロンの嫡子、と言った方がご理解いただけるかもしれませんね」


「な、なにを」


 ここで俺が前にでてくるとは思っていなかったのかシャイロックが動揺した声をだすがもう遅い。動けるものなら動いてみろと、動く大義名分を寄越したのはそちらだ。だから遠慮もしないし誰も邪魔はできないぞ。


「さて、皆さまの中でもご存知の方がおられるでしょうが私は名高きノワルの嫡男でありながら攻撃魔法の才能をかけらも持たない落ちこぼれです。それ故に失格嫡男や英雄アポロン最大の汚点などブルロワでは様々な呼び名で呼ばれることとなってます」


 俺の挨拶であちこちから、特に一定以上の年齢をした人から失笑に近い笑いがもれる。まぁ父さんの名前はブルロワを代表する英雄として知られているし、ノワル家の名もそうだ。だから尚更俺のダメっぷりは目立つからな。アポロンの名を知っている人ほど俺は無様に見えるだろな。


「ですがこの度故あってこちらへ遊学する機会をいただきましてその中でカタリナと出会い、カタリナに大層目をかけてもらうこととなり彼女から”よければ婿に“とまで評価していただいてます」


「う、嘘をつけ、か、カタリナが! エスパガル中の男が、ぼ、僕がどれほどアピールしても受け入れなかったカタリナが自分からだなんて」


 シャイロック、今は俺が話しているんだ。少し黙っていてくれよ。まぁいいか。嘘は何一つ言ってないしな。


「正直なところ、私は最初カタリナのアピールはブルロワとの繋がり欲しさからの罠ではないかとすら疑いましたが話を聞きましたら私のことをカタリナが評価しているから、ノワルの人間でも英雄の嫡男でもなくただのメディクとしての価値を認めたからとのことで……まったくもってさすが交易と商人のエスパガル、懐が実に深く合理的ですね。生まれだの家柄だのそういうことに囚われず俺のことを見てくださるんですから」


 散々家の金を使ってマウントとってきたシャイロックへの嫌味であり皮肉だが、同時に本音でもある。カタリナが何度も俺に言ってきた血筋よりも本人の力を大事にする姿勢はエスパガルが育んだ文化なんだろうし、ここで生きる人にとってはこの姿勢を褒められて悪い気はしないはずだしな。

 なんて、とりあえずジャブを打ち込んだしここからが本番だな。さーて、覚悟はいいな、シャイロック。惨めな気持ちにならないでくれよ?



続きはいつもどおりに!

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