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63話 じゅんびはすすむ

久々時間どおり……ちょっと短いです


「それでえーと……指示された通りオコメを作っているやつらは見張り付きの宿舎に放り込んだわけだけど……しかし給料に加えて酒まで出すとは贅沢すぎないかい?」


「ちょっと贅沢くらいでいいんだよ。酒が飲めるなら脱走のリスクも不満も減るだろ? 必要経費のうちさ」


 治験を開始したその夜、カタリナと今後について打ち合わせをしていたわけだが、やっぱりカタリナからみれば被験者の待遇は甘いと感じるか。

 でも、俺としちゃここを譲るつもりはない。実際治験バイトは試験期間は割とポピュラーなバイトだったが三食でるしゲーム機や漫画などの娯楽も充実してたしな。ストレスフルな環境だとトラブル発生の可能性は跳ね上がるしそこに費用は必須だ。


「はぁ……まぁいいさ。将来オコメを売るためのことだし、ここは旦那の顔を立ててあげるとするかね。なんだかんだで酒があれば我慢できることは多いしねぇ」


「そうそう、そういうことだな」


「ああ、それから言われた通り鶏も手配しておいたよ。ちゃんとわざわざ餌を綺麗にしてないオコメで飼うのと綺麗にしてないオコメでわけて」


「おっと、そっちもか。助かる」


 治験施設でただ治験を行うのでなく、俺はもう一つ脚気に関する実験を行なっていた。

 それはまぁようするに白米だけ食わせた鶏がどうなって、玄米たべさせた鶏と比較するという動物実験。つまり白米だけ食べたら脚気になるという証明実験なわけなのだが……


「……なぁ、これはやる必要あるのかい? これで綺麗なオコメを与えた鶏がこの病気になったら誰もオコメを買ってくれなくならないかい?」


 ああ、やっぱりそう考えるよな。うん、正直言ってオコメを売って布教することだけを考えたらやる必要がない、というかやったらむしろ邪魔まである実験だ。


「そうだな短期的にみたら邪魔になるな。でも俺はやめるつもりないぞ」


 なんせこの実験とそのデータを残す事は今後この世界での医学と科学の発展には大きすぎる意義があるからな。さて、どうやって説明して納得してもら……


「ふむ、わかっててやっているのか。それじゃ好きにしておくれ」


「へ?」


 いや、今のどう考えても止めてくる流れじゃないのか? それか少なくともどうしてやるのか理由を説明させる流れだろ? なのになんであっさり認めてくるんだ?


「何間抜けな声出してるんだい」


「いやてっきり止めるかと」


「なんで旦那が“不利益となる”と堂々と認めた上でやろうとしているのを止めるんだい? 裏切るためとか不正のためなら当たり障りのいい言葉でごまかすし、そうせずに堂々と続けようとするってことは不利益を上回るだけの意味や必要性があったり将来的にプラスになる投資ってことだろ? なら邪魔するのは阿呆がすることさ」


 ……まいった。いやうん、カタリナは優れた商人とは思っていたがここまで視野が広いのか。

 正直侮っていたし……やっぱ、俺人間としちゃ凡人だな。まったく多少前世? の知識があるからって思いあがるとえらいことになるわ。


「ま、でもアタシにちょっと不利益を飲まそうってんだからそっちもちょっとばかしこっちに融通利かせてくれないかい?」


「というと?」


 俺の質問にカタリナは無言でカードを投げつけて答えてくる。なになに、えーとふむ、俺宛の招待……


「げ……」


 うん、招待状だ。普通のパーティーの招待状なんだが差出人がよりにもよって……


「ドラン商会から、か」


「そういうこと。火傷が治って親父に泣きついたのか、とにかくアイツらが行動に出てきたってわけさ」


 なるほど、この間はレティシアが文字通り焼きを入れたわけだけどそれで懲りるはずもなく次の手を打ってきたわけか。しかしなぁ……


「カタリナ、こう言っちゃあれだが俺はこういう駆け引きだの商売での裏の読み合いだのはど素人もいいところなんだが……あちらさんは何が狙いなんだ?」


 もっとこう直接的な妨害をしてくるならわかる。それこそ米畑にスパイを送り込んだり、商売の邪魔をしたりな。

 だがパーティーに招待する意味はなんだ? これが敵国だったりなんだであれば毒殺やらなんやら思いつくんだがこういうのはほんと俺にはわからない。


「おや、アタシはてっきりシャルロットあたりから鍛えられていると思ったんだけど」 


「あいにくそんな暇も必要もなくてな」


 前世でも医者になってから出世するのには研究費をぶんどってきたり人員確保したりで必要だったんだろうけど必要になるまえにこうなってしまったし、そもそもそういう腹芸は向かないからな。


「ふーん、シャルロットのやつなんでまた。アイツならいくらでも教師を……いやむしろ逆かね? 教えない方が守れるって判断したのかそれとも自分で徹底的に守るつもりなのかねぇ」


「どういうことだ?」


「ん、内緒さ。ダチのあれこれを勝手に推し量って男に伝えるのは女の仁義に反するからね」


 なるほど、わからん。わからんが盛大に話が脱線しているようなそうでないようなこの話に深く突っ込んだら危険なのはわかる。

 女子同士のつながりを甘くみたら死ぬからな。実際俺がいた大学、全学年の女子が参加する女子会があって独自のネットワークが作られていたから女子生徒とトラブったやつが全女子生徒並びにOGを敵に回して大変悲惨なことになった話に事欠かないし。


「わかった、深くは聞かないからそれよりドランのパーティーについて説明してほしいんだが」


「おっと、そうだったね。まー、この招待状はあれさ。自分の権力と財力をひけらかしつつアンタを貶めるためだろうね」


「というと?」


「豪勢なパーティーでアンタを威嚇しつつエスパガルの流儀に慣れてないアンタを呼びつけて、招待客の前で笑い者にしてアタシの婚約者に不適切と思わせたいのさ」


 ああ、そういう……よくある初心者や新規いじめの手法だよな。いやうん、でもたしかにこういうパーティーは慣れてないから参加したらボロが出まくるだろうな。これは欠席も視野に……



「ちなみに理由のない欠席は敵前逃亡だから論外レベルのマナー違反だよ」


 だよなぁ。となると付け焼き刃でもマナー講習を受けないといけないか。この手の堅苦しいマナーやら流儀やらって本当に苦手なんだが……


「はは、まぁいい機会だし慣れといて損はないよ。なんせアタシもアンタにはこの先パーティーにはでて貰うつもりだし、アタシ関係でなくともでなきゃいけないことは増えるはずだよ?」


 畜生、気楽にいいやがって。でもまぁ、たしかにこの先どういう生き方をするにせよ覚えて損はないか。それに……


「わかったやるよ。そのかわり、カタリナ達にも動いてもらうからな」


 このパーティーは俺にとってもチャンスだしな。準備を進めておいたことが早速役に立ちそうだ。


「おっと、駆け引きだなんだは素人じゃなかったのかい」


「ああ、素人さ。だが、だからってなにもできないわけでも考えなしのわけでもないのさ」


 ドラン商会としては俺の品定めと貶めることが両方簡単にできる一石二鳥の一手なんだろうがこちらとしてもせいぜい利用させてもらうかな。



続きはいつもどおりに!



11月18日追記:すいません、18日は休ませていただきます。全体の構成の見直しとリアル都合が重なりましてorz

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