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61話 そして動きはじめた

遅れて申し訳ない。本当はもうちょっと書くつもりでしたが節目が来たので……


「わかった。それじゃいろいろとやらせてもらうが……金は相応にかかるし、色々と面倒なことになると思うがそれでもいいか?」


「かまわないよ。どーせこのままじゃドランの奴らにもってかれるんだ。いっそ全部放り投げたほうがマシだし諦めもつく。アンタに全賭けさ」


 まだ計画の内容を話してもないのにここまで言ってもらえるのはありがた……いや、案外計画を話してないからかもな。

 ともかく、全権をよこしてくれるなら話は早い。後でどっぴいてもしらないからな。


「わかった。じゃあカタリナにはあとで色々と動いてもらうとして……フィーユとレティシアにも協力して欲しいんだが頼めるか?」


 二人ともドランのことは嫌ってるみたいだがそれでもカタリナにはあたりが強いからなぁ……だけど二人が協力してくれるかどうかで俺の計画の難易度は大きく変わるからなんとか動いてもらいたいんだが。


「……正直、色々と言いたいことはありますがここで断るのはその……さすがにまずいかと」


「カタリナのためじゃなくてメディ兄のためなら協力するよ」


「すまないねぇ二人ともお礼はたーんとするよ」


「一番のお礼は……あなたが婿だなんだ言い出さないことなんですが……」


「そうだよ。あたしあなたをお義姉さんなんて呼ぶつもりないし」


「はっは! そいつぁお断りだ! 男と女は理屈じゃないしアタシは欲しいものは絶対手に入れるからねぇ! まぁモノや金でできるお礼をしっかりさせてもらうさ。少なくともあたしはケチじゃないからね」


「物もお金も別にいらないんだけどね」


「私も……そこまでは……」


 うーんこの。レティシアはお嬢様だから金やモノに執着しないし、フィーユは本さえあれば幸せってタイプの人種だから良くも悪くも即物的な商人であるカタリナとは価値観が違うんだよなぁ。

 まぁいい、二人が協力してくれるというなら話が早い。脚気対策と米の普及計画を始めるとするか。



「なぁメディク、本当にこれが治療になのかい?」


「ああ、もちろん。これ以上ないほど適切な治療さ」


 計画初日、案の定というかなんというか俺が始めた従業員への治療に対してカタリナは疑問をぶつけてきた。


「俺に全賭けする、そういったよな?」


「いやまぁたしかに言ったし、今も信じているさ。でも治療っていうのはこう、なんというか……もっとこう」


「薬や魔法を使う物だと?」


「そうそう! あたしはてっきりあんたがそういう特別な薬を用意してくれるかと思ったのに」


「用意してるぞ、この病に特別きくモノを」


「……それのどこが特別なんだい」


 カタリナは俺が用意してもらった“大鍋”を指差して頭を抱える。まぁうん、たしかに治療には見えないだろうな。でも、断言していい。この世界この時代でこれ以上いに脚気に効くものは存在しないと。なんせ……


「特別さ。体に良いものがたっぷりと入った特製スープだからな。カタリナが取り除いてたオコメの外側の部分の汁もたっぷりいれた」


 そう、このスープには米糠を水につけてこした糠汁をたっぷりと加えている。ビタミンはDAKE以外は水溶性なので水に溶け出せるし、Cとちがって熱を加えてもB1は壊れないからスープにするのが一番病人摂取させやすい。

 そこにB1の吸収を促進するニンニクをすり下ろして加えて、とどめにタンパク質もとれるように卵や肉も入れる。

 そりゃ鈴木梅太郎先生にみたいにビタミンを抽出できればそれが一番なんだが、その手法まではさすがに勉強していないし、この世界の化学はそこまで発達していない。

 魔法で代用すればいけるかもしれないがその手法を研究する時間もないし、魔法という個人技頼りでは量産に限界もある……なにより、それで精製した薬を患者に信じて飲んでもらえるかという問題が大きすぎる。

 なんせ鈴木先生が作ったビタミンB1剤も長年まともに使われなかったからなぁ、先生が帝大卒でも医学者じゃないからって理由だけど。

 このあたりを考えると薬だなんだやるより食欲を刺激して元気をださせるのが一番手っ取り早いし誰も反対しない。多分これが一番確実だと思いますってか。

 幸い、カタリナが米を精米前の状態で輸入していたから米糠もあるしな。


「たしかに外側の部分を取り除いてたからこうなったならそこをたっぷりとらせたらいいってのは理屈としちゃわかるけど……でもそんな単純な話なのかねぇ……」


「単純でもなんでも治ればいいんだよ治れば……だいたい、この治療法が普及したほうがカタリナのメリットは大きいぞ? なんせ特別な薬もなにもいらないんだからな」


「ーーっ⁉︎ なるほど、そういうことかい。たしかに特別な難病であるより家で飯食ってりゃ治る病気であるほうがありがたいね」


 さすが理解したか。脚気が特別な治療薬でないと治せない薬となると米を食うリスクが跳ね上がる。だが食事で治るとあったら怖さが一気に減ってくるし、この先患者が発生しても一々薬を用意したりなんだりする必要がない。

 日常の延長線で対処できる、それはある意味最善の病気の治療で……怪しげな民間療法がなくならない原因の一つだ。

 ほんと偽医学は死ねばいいのに、林檎のトップであるあの人が治らなかった時点でああいうのが効果ないってなんでわからないかねぇ。

 まぁ、この脚気治療も側からみたらそう見えるんだろうが科学的根拠もあるしお手軽だし飛びつきやすさを利用させてもらうとしよう。

 そして当然病気になった、治っただけではエビデンスに欠けるから……


「話が早くて助かる。それじゃ、フィーユ。記録の方頼んだ」


「……わかってます。この病気が治る証拠となりますから、ね」


 フィーユの書字魔法の出番となる。ここで患者のカルテを作成、症例を集めておけばこれ以上ないほど治療成果の証拠になる。数字はわかりやすい力だ、特に商人の街ならな。


「ありがとうな。さて、治療の方はこれでいいが……カタリナ、頼んだ手配はできているのか?」


「え? あ、あー、うん。一応準備は進めているけど……本当にやるのかい?」


「もちろん。これ以上わかりやすいアピールはあんまりないからな」


「……控え目にいって、アンタいい性格してるというかおもってたより容赦ないね」


 ああ、やっぱり側からみたら容赦なく見えるのか。まぁうん、現代ならそれこそ非人道的と思われるし叩かれるだろうが……それでも、やらなきゃいけないことだからな。


「幻滅したならいつでもそう言ってくれていいぞ」


「まさか! むしろ気に入ったよ! うんうん、これくらいやる時はやる、目的のために動けるほうが男としちゃ魅力的さ! 渇き病に勝てたのもそーいうところにあるんだろうしもうちょっときゅんとしたよ!」


 おいこら、フィーユや従業員の前で抱きつくな! 胸、胸あたってるというか埋める気か カタリナは! いやその前になんか背中が怖いんだが!


「そ、そういってもらえるのはありがたいが……準備はできているんだよな?」


「ああ、もちろん。片方の方は明日っからでも始められるよ」


「そ、そうか……なら、そっちもすぐにでもはじめるとしようか」


 治療もだがある意味本命はそちらだからな、うん……俺の背中が無事なうちに早いところ結果をださないと、うん。


続きは明日に!あしたこそ時間どおりに投下したい……

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