表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

62/78

59話 つたえたいこと

本日は時間通りに!

「あの……さすがにそれはちょっと虫が良すぎるといいますか、あまりにも強欲ではないでしょうか?」


「だよね。できることなんでもするって言ってるのにメディ兄の意見を拒否するなのはどうなの? それにさっき安全管理をケチるのはばかがすることみたいなの言って」


「二人とも、そこまで」


 フィーユもレティシアもあのバカボンには腹を据えかねているみたいだけど、それでもさすがにカタリナの提案には反発心を抱いたか。

 まぁ気持ちはわかる。こっちの提案を受け入れられない、それをやると商品が売れないってのはどうなんだ? というのは当然でもあるし俺の意見を尊重してくれていて嬉しくもある。ただまぁ……


「でもメディ兄」


「二人が気を使ってくれるのは嬉しいけどカタリナの立場を考えたらカタリナが言っていることは正しいからな」


「正しい、ですか……? その、間違いはすぐに正した方が……」


「カタリナがもしここで簡単にこの病気はオコメのせいですと認めたら、それこそ誰もオコメを買わなくなるし、そのまま商会は乗っ取られてここの従業員はアレとその親に従わなきゃいけなくなるんだぞ?」


「うわそれは……」


「……カタリナさん個人の問題ではなくなる、と」


「そういうことだ。そしてあいつがさらに金と権力を手に入れたらまぁ……ろくなことにならないよな」


 カタリナが言うことを鵜呑みにするわけじゃないが、あのバカボンっぷりをみていたら十分すぎるほど信憑性があるからな。


「……すまないね、こちらの都合で」


「どうしようもなかったら受け入れる覚悟があるってだけで十分、ならちょっとばかり苦労することになるけどな」


 まぁ実際はちょっとじゃないけど。本当に脚気が玄米だけ食べてればならない病気だったり栄養学の考えがあれば楽なんだが……それでもゼロから積み上げた先人たちに比べりゃマシもマシか。


「でもアレとカタリナならどっちが従業員にとっていいかなんて考えるまでもないし、婿候補としちゃ未来の実家と嫁さんのためには頑張らないとな。ここで頑張っておかなきゃ一生頭があがんないしな」


「はは、アタシに対して優位を取るつもりかいこの旦那さんは」


「そりゃそうさ。結婚前にいいところをみせとかないと小遣いの量に直結するだろ? ま、あれだ。俺に全賭けするのを決めさせたカタリナの勘は間違ってなかったって証明してみるさ」


「いいねいいね、そうこなくっちゃ。そうだね、アタシの目が正しかったって証明しておくれよ。もしうまいこといったら家じゃなんだっていうこと聞いてサービスしてあげるよ旦那様♪」


 うん、これくらいの軽口を叩いとかないとな。さっきのなんでもするからって懇願してきたカタリナは、それはそれでまさに女傑な普段の姿とのギャップでグッと来るけどやっぱ元気でいてくれるほうがいいし、こう色々とそそーーっ⁉︎


「……さすがにどうかと、思います」


 あのフィーユさん、またですか。俺下心はなかったんですよ? 本当ですよ? というかあちらはからかっているだけですからね? というかさすがにドラ息子との婚約問題解消されたら婚約云々はなかったことになるだろ?


「……まぁここで投げ出さないのはメディ兄らしいけどさ。でもこれを頑張りすぎると留学どころの話じゃなくなっちゃうんじゃない?」


「あっ」


 言われてみたら確かに。こっちでのあれこれに本腰入れたら学校どころじゃなくなる。これがただの観光ならよかったが留年回避という目的もあるし、自費留学でなくシャルロットに援助してもらっているんだからこれで単位をとれないと……


「はは、未来の旦那様は以外と律儀だねぇ。そんなこと気にするなんて」


「そんなことって言うがなカタリナ、シャルロットから留学の世話を頼まれて」


「単位は金と権力と実績で買えるんだよ」


 おいこら待て。なに堂々と不正をすると言い出してるんだこの女傑。さすがにそれはまずいだろ。


「いや普通は無理だよ? 無理だけど何事にも裏道ってのはあってだね。アンタたちが留学する予定の学院はわりと放任主義であとアタシの商会が大口の融資しているから色々と、ね」


「そ、それでいいのかよ」


「いいんだよ。それでもガタガタ抜かしたらアタシが口に金貨詰め込んでぶん殴ってやるから。お前のとこの講師に高い金払っても助けられなかったうちの従業員救ったのが実績にならないのか馬鹿野郎ってね」


 そ、そうか。脚気治せないって投げ出したの留学先の講師だったか……いやまぁたしかにそれを実績として認めさせたら単位にはなりそうだが。しかし、それをしたらしたで何か俺の立場が面倒なことに……


「なーに、心配はいらないよ。アタシからシャルロットにも学院にも話を通してあげるからとりあえず今はこっちのことを頑張ってくれなよ」


 おっと、顔に出てたか。まぁでもたしかに脚気を放置するのはまずいわな……というか、カタリナが大っぴらに売り出す前に脚気が発生してよかった。

 下手に売り出して米を大流行させたらそれこそ従業員だけでなくエスパガル中や他の国でも脚気大流行までありえたからな。

 今ここでその可能性を徹底してつぶさせてもらって、そして同時に米の普及も果たさないと。

 パン食は好きだけど米は食べたい。ないなら諦めもつくが目の前にあるなら話は別だ。ここで米食文化が根付かず米が毒扱いなんて絶対にさせない。


「……わかった。じゃあ、カタリナ。まず前提として今従業員のみんなが苦しんでいるこの病気だが……似たようなものについての記載を俺は昔本で読んだことがある」


 それじゃ、ご飯に塩焼きに味噌汁、カツ丼、豚丼、カレーにチャーハン……こっちの世界で暮らし出して何度も夢見た味のために始めるとするか。栄養学の概念がない世界で脚気を理解してもらうことを。


「どこで読んだどの本かまでは覚えてない。ただ、大酒飲みで大食らいなやつが急に動けなくなってた云々って書いてあったのは覚えてるし……どうしてこうなったかについても多分こうだろうって推測もできる」


「ほ、本当かい? い、いったいどうして」


 コレラの説明は細菌学の概念がなくても簡単だった。体に入り込んだ毒が悪さをしていてそれが体内で増えて他の人も毒を飲んでしまうですむ。脱水症状の説明もそうだ、汗に塩が含まれていて体からでてしまって足りなくなるのは汗を乾かしたら塩が残ることからイメージしやすい。

 だが、目に見えずイメージもしようがないビタミンについてどう伝えればいいのか? 正直無理難題にも程があるが……それでも糸口はさっき掴んでいる。いけるはずだ。


「……カタリナ、例え話をしよう。カタリナが店を一つ買収した。その店の経営状態はカツカツだがなんとかなっている。現状維持が手一杯という店だ」


「商売でかい……なるほど。カツカツでもやれているならいくらでもやりようはありそうだね」


「そしてカタリナは店の従業員で小汚くてあまり働いてなさそうにみえるやつを何人かクビにして、他所にある繁盛店を真似して店を綺麗にして色々と豪華にした……そうしたらその店がまともに営業できなくなってしまった。どうしてだと思う?」


「どうしてもこうしても、それだけじゃ判断つかないというかダメすぎるにもほどがあるね」


「ふむ、どこがダメなんだ?」


「どこがもなにも……まず、他所の繁盛店を真似たっていうけどその繁盛店と条件が一致しているのかい? 客層は? 立地は? 商品の質やらあれこれは? そもそもその繁盛店は本当に儲かっているのかい? それすらわからず上っ面だけ真似るとか例えの中とはいえそのアタシちょっと無能すぎないかい?」


「……続けて」


「だいたい、働いてなさそうに見えるっていうだけで従業員をクビにするなんて論外にもほどがある。小汚くて仕事してなさそうっていっても倉庫仕事やら在庫の管理やら見えないところで店をうまく回すための仕事をしているかもしれないだろ? 目に見えたところだけで判断するとかバカもバカ、大馬鹿がすることだよ」


 痛烈、例えの中の自分に対してこれ以上ないほど痛烈に罵倒している。しかしカタリナはやっぱり商人として有能で従業員を大事にするんだな。ここまで即座に判断できてダメ出しできるのはさすがだ。これなら……いけるだろうな。


「そうだな、バカのすることか……つまり今回カタリナがやったことは大馬鹿の所業ってことだな」


「なんだって」


 案の定、俺の言葉に反応し怒りを露わにするが……でもそれでいい、しっかりと感情をもって聞いてくれ。理屈じゃなくて感覚で理解してくれよ?


例え話スキルは家庭教師やるのに生命線であり、患者さんへの説明にも役立つのです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 相手は船で新航路開拓してる訳だから「壊血病の亜種」で説明済みそうな気がしないでもないダメ転生者思考
[一言] やっぱその知識どっからきてんねん!って疑念が登場人物にわかないと猿にバナナの取り方教えてるだけになっちゃうんだよな。知識チート物に付きまとう問題やね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ