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51話 留という字は共通してるけど

気がつけば300ブックマーク10万pvそして月間異世界転生ファンタジー部門ランク入りーー本当にありがとうございます。本日より四章となります



「あー、メディク。あまり言いたくはないがお主このままだと留年するぞ」


 コレラ騒動やその対処の功績がどうだのあれこれがようやく完全に一段落して学院に戻ることが出来たと思ったら、いきなり学院長に呼び出されて残酷すぎる言葉をぶつけられてしまった。

 いやまぁ確かににコレラ対策にかかりっきりだったし保菌しているリスク考えておよそ二カ月はたっぷり休んでもう長期休み目前といった次第だからおかしくないといえばおかしくないんだが……


「学院長、俺が休んでた理由学院長はご存知ですよね?」


「ああ。シャルロット様やアーサー様から話は聞いておる」


「ならなんとかなりませんか? それともあれですか? 学院に乾き病をばら撒きかねない状態で来るのが正しかったとでもいいますか」


 うん、俺が学院に出られなかったのはコレラ対策もあったが同時にコレラをばら撒きかねなかったからでもある。その配慮の結果が留年なら流石に納得がいかない。


「そうは言っておらんが無理だな。今回の騒動でお主以外に休む必要があったやつはおらんし、騒動の場所も裏通りと本来学院生としては関わるべきでない場所……それにお主に不必要に便宜を図るとなると」


「……ああ、そうきますか。しかしその、そうなると俺に付き合わせたフィーユとレティシアの二人も」


「あの二人はもともと特待枠で単位など欠片も必要ないからまずいのはお主だけじゃな」


 あ、そうですか。いや、あの二人を留年なんかに巻き込まないで済んでよかったがそれはそれで俺だけ後輩で取り残されるのはちょっと気まずいというか……

 そりゃまぁあれだぞ? 医学部って留年率高いからなれてると言うかよくあることって認識はあるがそれでも俺に瑕疵がないのに留年はさすがに抵抗を感じるし全力でお断りしたい。というか失格嫡男の汚名にブーストがかかって不味すぎる。


「……このままでは留年、ということは回避する方法があるんですよね?」


 ついこの間まで王都が伝染病でやばいとか国を救った英雄になるならないの話をしていたのに留年の恐怖に怯えることになるとは我ながら情けないやら日常に戻った気がするやらだが、とにかく単位不足という現実から逃げることはできない。戦わなきゃ現実と。


「ああ、本来ならないと言うところなんだが儂もさすがにお主を留年させるのは気が引ける、というかそんなことしたらシャルロット様から本気で何されるかわからんからな。下手したら儂の首が物理的に飛びかねん」


「いや、さすがにそれは大げさでは?」


「大げさなものか。表向きはともかく、事実お主の働きで多くの命が救われているのに評価どころか留年なんてなったら喧嘩を売るに等しいからな」


 学院長は歴代最高とすら言われる攻撃魔法の使い手でありこの学院のトップ、そんな相手の首を留年一つで物理的に飛ばすかもとかシャルロット、お前どんだけ偉いんだよ。


「は、はぁ……ですが実際どうするんですか? このままじゃ留年確定とのことですしそれを避けるとなると、あれですか?留学でもするんですか?」


「ふむ、よくわかったな。お主にはちょっとばかし隣国に留学に行ってきてもらうつもりなんじゃ」


「は?」


 いや、ちょっとまて。留学って俺は前世の留年回避の常套手段を口にしただけなんだがなんでそれが本決まりみたいになっているんだよ。

 戦争が当たり前にあって移動手段やらなんやらがまだ未発達のこの世界で留学は、それこそ明治時代のように極々一部の選ばれたやつしかできないのにどうしてそういうことになるんだ?


「あの学院長、さすがにそれは冗談ですよね」


「……これが冗談なら儂の首も安全なんじゃがな」


 ああ、冗談ですまないんだ……俺の留学も、学院長の首も。


「何も別にずっと留学しろとは言わん。学院の長期休暇と合わせて隣国に短期で留学をして帰ってくれば留学を実績として進級は何も問題がない、これでいける」


「いける、じゃないですよ! 俺ここの生徒になって数ヶ月ですけど授業まともに受けたのって最初の一ヶ月あるかないかですよ? やれ実習だやれ留学だって学外に飛ばされてばっかじゃないですか!」


「それはこっちのセリフじゃ! バーターで入学させてやって特別に個人指導してやろうと思ったらそれを蹴っ飛ばしたのに始まり実習先の軍部で一騒動巻き起こし、戻ってきたかと思えば今度は渇き病、お前ほんとどれだけ騒動に巻き込まれたら気が済むんじゃよ⁉」


 あ、うん……それを言われるとちとこまるというか確かに半分くらいは俺の自発的な行動のせいな気もするがにしてもちょっとなぁ……


「とりあえず、それはうん、置いときまして……でも実際できるんですか? 当然のことながら受け入れ先も必要ですし、国外にでる許可やら費用なども」


「心配いらん。お……シャルロット様が費用は全額支給してくださるし国外にでる許可もとってくださっている」


 マジか⁉ シャルロット、お前そこまでしてくれ……いやまて、シャルロットのことだ。ただの善意でこんなことしてくれるなんてありえない。絶対裏になにか意図が……


「”わたしのことを疑っているでしょうけどこれは王都を救った報酬なんで素直に受け取って見聞深めてきてください。というかさすがにここまでしてもらって留年させたらハニーとしては恥ずかしくってたまりませんので” ……と、伝言を預かっている」


 読まれていた、か。俺も結構アイツのこと読めるけどそれはお互い様ということか。しかしいい年した学院長にハニーと言わすのはどうなんだ? 一言一句違えず伝えろとでも言ったんだろうがもうちょい手加減をしてやれよな。こう、さっきから学院長の胃壁と毛根にダイレクトアタックしすぎだろ。


「まぁ実際いい機会であるし、正当な報酬ということで素直に受け取ったらどうだ? 受け取らないなんてないよな? 受け取らないなんてありえない。受け取らなかったら許さんぞ」


「いやいや、そこまで言われなくても断りませんよ。ここで断ったら俺留年確定、下手したら放校か退学じゃないですか」


 うん、断れるはずがない。留年と留学どっちがマシかなんて考えるまでもないし……なにより、シャルロットが言う通り見聞を広めるにはいい機会だ。

 魔法の腕でなく学術を主としてこの世界の医療に貢献することを決めたんだからめったに行くことが出来ない他国の学び舎で学べるチャンスはこれ以上ないほど貴重だからな。


「喜んで行かせてもらいますよ。ええ、ここまで準備をしてもらっているんですからね」


「そうか、いや良かったこれで断られたら本当にどうしたものかと思っておったが……いやはや、安心したわい」


 やれやれ。学院長は俺が留学するって決まった時点でもう問題解決なんだろうが、俺としてはここからが本番。今度は異国に留学か。

 そういや地球じゃ医者になってから留学するのは当たり前というか大前提みたいに話されていたな。それも米国か英国、アカデミックな意味で留学するならこの二国以外ないって。ただ英国はガチガチの階級社会だから苦労するし、一方米国はバリバリの能力主義だからなじめなきゃ苦労するとかいってたな。

 そして両方とも食事で苦労するとかで……米国留学した先輩は太っていたし英国に留学した先輩は食べるものなかったってぼやいてたな。

 俺の留学先、どこになるか知らないが食うものはちゃんとしたものがあればいいんだが……産業革命中の英国レベルとかなければ良いんだが。


続きは明日の08:10


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