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36話 秘密の場所

ポイントが500、さらにブックマークもいつのまにやら150オーバー!本当にありがとうございます!


「まぁそういうわけなんで俺はそこまで手はまわらない、ということでお願いします」


 さ、言うべきことは言ったがどうでるかな? 場合によっては無礼とすらとられかねないことだが……


「は、はは! はははははははっ! いや、いやいやいや、まいった。実にまいったなるほど、どうして。これは予想外だなぁ、うん。思っていたのとだいぶ違って……面白い!」


 どうやらお気に召したようでなによりだ。しかし、いっそ清々しいほどの爆笑だな。貴公子顔の先輩がここまで笑うとはなかなか見応えのある絵面だ。


「嫡男でありながら家に縛られるでなし、それでいて己が非才を嘆いて無気力でもなし。目線がそこらのボンクラとは違いすぎる……実にいいね、興味深い」


 そこらへんは俺の場合価値観のベースが前世由来だからだろうな。一般家庭で継ぐような家に生まれなかったから家を継ぐだの嫡男だのそのあたりの意識はどうにも薄くなっている。


「ただ現実を見て自分に見切りをつけているだけですよ。それができなきゃ誰にとっても不幸でしかない」


「それが誰でもできればお家騒動なんて存在しないよ? 誰も彼もが全体をみず目の前の自分の利益にこだわってしまうものさ」


 たしかに、自分が損するのは我慢できるけどそれで他人が得するのが合わさると、ってのは人の常だからなぁ。


「しかしまいったなぁ。ちょっとからかいにきただけのつもりが高く有益な分析能力、広めで現実的な目線、ネームバリューがある家の後を継がない嫡男、そして分をわきまえて欲が浅いとは……ちょっと君、うちに婿こない? 妹の結婚相手に理想的すぎる」


 おいおい、勘弁してくれよ。結婚だなんだはもうレティシアの話だけでお腹いっぱいだっていうのに。


「その手の話はレティシアのだけで十分すぎるといいますか、あったこともない人といきなり結婚はちょっと」


「おや、君は結構ロマンチストだね。そこは具体的な条件を聞くところだろ? 断るのはそれからでもいいと思うし、悪い話じゃないと思うけど?」


「そりゃまぁレティシアのおまけでなく俺個人が見込まれてというのは悪い気はしまーーっ⁉︎」


 痛い、痛いですフィーユさん。なんかいつもの四割増しくらいでつねる力が強くなってませんか? あの、俺なにも悪いことはして無いと思うんですが。レティシアもなんか俺を掴む腕が熱いんですけど。

 

「ごめんごめん、ちょっと強引すぎたね……まったく、どうにも我が妹はライバルが多いようで」


 いや紹介されてないのにそんなこと言われても……というか、レティシアもフィーユもあっちの社交辞令を断るためにしてもさっきからちょっと過激すぎない?


「からかったお詫びといったらあれだけど、ちょっと君達においしいお茶をご馳走させてもらえないかな? いい場所があるんだよ」


「……それでそこに先輩の妹がとかいうオチがまってたら、俺全力で逃げるし抗議いれますよ」


「あ、その手があったか。それいいね、次はそうしよう」


「ちょっ⁉︎」


「冗談だよ。そんなことする必要がな……じゃなかった。紹介するのにそんな奇襲はしないって」


 本当か? この人なら平然とそういうことしそうな気がするぞ?


「まぁ、騙されたと思ってついてきてくれ。大丈夫、悪いようにはしないから」


 胡散臭いにもほどがあるが、身元保証は正直この図書館にいる時点でされているようなものだからな。それに着ているものや立ち居振る舞いもあきらかに身分の高さを窺わせているしなぁ。


「二人とも、どうする?」


「正直遠慮したいけど、この手のはしつこいから一度だけでもそれで義理は果たしたよね? にしたいかな」


「私はその……あまり、気がすすみません……一度でも関係をもってしまうとズルズルと引きずりそうな気がして」


 二人の意見がもろに真っ二つか。まいったな。


「あれ、いいのかい? おいしいケーキもあるし学院生の目も絶対にないからゆっくりできるんだけど。あと、たしか今から行くところにはここにもない本が山積みに」


「「――っ⁉」」


 この先輩、えげつねぇ。レティシアはいくら天才でもまだ中身は年相応、いやちょっと幼いくらいで甘いものとか大好きだし常に学院じゃ人に囲まれていてゆっくりできない。そしてフィーユは……うん、言うまでもないよな。しかし、たった一言で一気に二人共行ってみたいに偏ったな。しょうがない、ここは……


「先輩、今回は先輩の顔を立てますが次はこういうのは」


「わかっている、無理に誘わないさ。ただどうしても君を連れて行って一緒にお茶をしたくてね。これだけは、本心だから信じてほしいな」


 言動は詐欺師そのものなのに、実に絵になる言い訳をするなこの先輩。でもまぁ、俺を評価してくれているのは本心みたいだし、そこだけは信じてもいいか。




「先輩、俺たちはどこに向かっているのですか」

 

「んー、連れていきたい所の主が変わり者でね。ちょっと入り組んだ場所をわざわざ好き好んで選んでいてね」


 あの後、そんなに遠くはないからと言われて学院から歩いて目的地に向かうこととなったのだが先輩はどんどん人通りが少ない方に少ない方にと迷いなく歩いて行っている。あきらかに怪しいというか、この人がOBをなのっていたとしてもあの図書館に入ってこなかったら間違いなく今すぐ回れ右しているな。


「あのその……私はその、このあたりはじめてくるのですが……あまり空気がその……」


 うん、フィーユがそういうのも無理はない。人通りが少なくなるほど道や建物が狭く汚くなっていってるし……あきらかに、いい空気は漂っていない。


「このあたりはこの国の影みたいなものだからね。君達の知っている通りここ王都は国で一番栄えているといっても過言ではないが、その分色々と抱え込んでいるんだよ」


 裏通りってのは都市の規模が大きくなるほど、どうしても荒れてくるものだがここも例外じゃない、か。前世でも地元民は絶対近寄らない、近寄っちゃいけない裏通りとかあったからなぁ。行ったことないけど歌舞伎町とか新宿もきらびやかな影にやばいのあっただろうし。


「こんなところあるなんて、知らなかった……」


「まぁ学院生ってのは屋敷と学院、それから大通りでだいたい事足りちゃうから知らなくてもおかしくないよ……お、ついたついた」


 何本目かの通りを曲がりいよいよ本格的に人がいなくなった所で先輩は一つの小さな、他の建物と比べて明らかにきれいな建物のドアを開ける。


「はぁいいらっしゃ……あら、アーサー様。今日はどうなされましたか?」


 中に入った俺たちの目に飛び込むのは今まで歩いてきた通りとは不釣り合いなほど綺麗に掃除された、まるでゲームや漫画にでてくる酒場そのものと言わんばかりの内装に大きなカウンター。そしてその中央には肝っ玉母さんというにふさわしい恰幅のいい女性がいて俺たちを出迎える。


「久しぶりにマーサのお茶が飲みたくてね。それにちょっと愉快な後輩も連れてきたから」


「先輩、ここは……」


「僕の秘密の場所であり、この吹き溜まりの聖域みたいなものかな?」


「ここはそんな大層なものじゃないですよ、アーサー様。ほら、お嬢ちゃんも坊っちゃんもさっさとお入りなさいな。アーサー様の後輩なら大歓迎だよ」


 これはまたなんというか……予想外の事態になってきたな。

筆が予想外に転がる転がる……続きは明日の08:10に!

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