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34話 こんかつーはじごくだぜぇ 

新キャラ登場です

 まぁレティシアを口説きたければ話を通せっていってもレティはまだまだ学院の一年生それほど大したことにはならない。せいぜいクレソンっぽいのがわらわら湧いてくるぐらいだろう。そう思っていたんだが……


「お兄さん、ぜひとも妹さんと紹介を!」


「持参金は惜しみません! ええ! ぜひとも、ぜひともレティシアさんと!」


「と、当家はノワル家に負けぬほどの名門! ぜひともより良き血を後世に、さすれば両家は安泰です!」


「君の個人指導も僕がやるからぜひ! テスト対策とかもバッチリだから!」


 甘かった、いや甘すぎた。登校するなり囲まれてこれとか。というか普通に教師がまじっているって本当にいいのかよこれ。


「悪いが俺に決定権はないし、取り次ぐつもりはない。他をあたってくれ」


「いやいやいや、ノワル家から正式にメディク殿が窓口と通達がなされているので、それは通りませんぞ」


「そうそう、あなたとレティシア嬢の関係が良好なのは周知の事実! ぜひとも、ぜひとも取次を! 取次費が足りないというならまだまだ出せますから!」


「せ、せめてお話しだけでも、どうか! どうかぁ!」


「俺にあれこれ言うくらいなら本人に振り向いてもらう努力しろよ」


「「「「……」」」」


 あれ、なんだこの沈黙。


「いやあのその、ですね? 前にこう、レティシア嬢にアプローチをその、かけはしたのですがね?」


「誰一人顔と名前も覚えてもらえず、話もろくにきいてもらえなくてですね?」


 それつまり全員論外扱いじゃねーか。もう脈ないから諦めろよ。


「ですがレティシア嬢はあなたのことはきっちりと認識しているし特別扱い、そしてこの通達となればもうあなたの仲介にかけるしか!」


「どうか、どうかお話しだけでも!」




「とまぁこんな感じで授業がはじまるまで延々と……授業の合間も似たような感じで」


「え、えっとあの……お疲れさまです……」


 お取次を攻撃に辟易した俺は授業が終わると早々にフィーユがいてくれる図書館へと逃げ込んだ。ここなら許可証がないやつらは入ってこれないし、入ってきたとしても図書館で騒ぐなということでシャットアウトできるからな。おまけに……


「ご、ごめんねメディ兄。でもあいつらほんとしつこくて」


「ああ、うん。レティは気にしないでいいぞ。ああいうやつらの相手してたら時間の無駄だし疲れるからな」


 レティシアも許可証もちだからこうして学院内でも問題無くあえるしな。外で話せば結婚したがる男どもが余計面倒なことになるのは間違いないし。


「正直草……クレッソンみたいなのがわらわら湧く程度だろうなって思ってたんだけどさ……ここまでとは思わなかった」


 いやほんとマジであそこまで目の色変えて……婚活した先輩も似たような目にあったりしたのかねぇ? 追いコンでOBの先輩が「結婚指輪は魔除けにならねぇぞ」って単身赴任で研修する卒業生に言ったり、教授が「地方で研修するなら”舞姫”れよ」とか念押ししてきたりしたけど……

 ああ、うん。やめとこう。もう俺には縁がないし想像したくもない世界だ。


「その……ずいぶんとひどいというかなんというかろくでもない、ですね。あまりにも人の都合を考えてないというか論外にもほどがあるというか……」


「あー……その、あれだ。今あげたのは割とまともなやつらだ」


「アレでまともなんですか⁉」


「残念なことに、な。自分の魅力アピールに終始するやつはマシ、金とか地位とかをちらつかせるのはわからないでもないがそれ以下がほんとな……ひどいやつらは俺に女をあてがってやるから紹介しろって」


「……ふーん?」


「メディクさん、それちょっと詳しく」


 ああ、やっぱり女を紹介だのは同じ女性として腹がたつのな。そろって目がすごく怖いことになっている。


「まぁだいたいは妹や姉を紹介してやるから婿になって独立すれば系だな。ただ、何人か、特に休み時間に仕事抜け出してきたっぽい偉そうなオッサンはひどかったな。部下の娘や妹でお前がほしいやつを三人妾でやるからとかなんとか」


「よし、ちょっと今からそのハゲ焼いてくる」


「ダメですよ、ちゃんと夜道で顔を隠してでないと面倒なことに」


 やっば、いくらなんでも正直に言いすぎたか? 


「ストップ、二人ともストップ! ちゃんと断ったから、全員断ってるからそれ以上は、な?」


「でもメディ兄にそんなことを……」


「大丈夫だって。俺にそういう甲斐性はないし、だいたいフィーユやレティが近くにいるのに紹介っていわれても……二人より魅力ある相手とかまずいないだろうし」


 フィーユとレティがそばにいるせいで俺の美的ハードルめちゃくちゃあがってるからな。おまけに二人とも性格もいいし、紹介するからとかいわれてもはぁ? ってなもんだ。


「そ、そうでしょうか?」


「メディ兄……ちょ、ちょっとお世辞にしても言い過ぎじゃない? ま、まぁいいや、あ、ありがとメディ兄」


 本音なんだがな。まぁ二人とも機嫌直したみたいだしこれでよしとするか。


「しかしなんでまたここまでなりふり構わず、ここの生徒だけならまだしも教師やら外部のお偉いさんやらまででばるかねぇ」


 ほんと、理解できない。学院生の次男三男があわよくばって思うのはまだわかるが、外からお偉いさんが俺に妾やら愛人斡旋してまでって……


「はは、それは君、ノワルの名とレティシア嬢の価値を軽く考えすぎているというものだよ」


 なんて頭を抱えていたら金髪碧眼のイケメンがしれっと話に加わってきた。誰だこいつ?


「あなたは……」


「僕かい? 僕はアーサー、この学院のOBでね。今日はちょっと調べ物に来たんだけどずいぶんとおもしろ……興味深い話をしているのでつい、ね」


 ああ、見たことないけどOBか。それなら納得だし、ここに入れている時点でそれなりにちゃんとした人間なのは間違いない、か。


「アーサー先輩、ですね。えっと、俺が軽く考えているというんはどういうことで?」


「どういうもこういうも、いいかい? ノワル家というのは攻撃魔法師としては名門も名門、我が国でもトップランクといえるし、先代ハデス、当代アポロン、その弟にしてレティシア嬢の父でもあるアレスも皆超一流の攻撃魔法師だ」


 改めていわれるとノワル家って超一流なんだな……


「それもあって攻撃魔法師の世界でノワルの名はもはや絶対、アポロンもアレスも圧倒的な影響力を持っている。それこそ、彼らの意向ならどんな無茶でも通ってしまうくらいにね」


 たしかに、叔父さんに発表会の時の症例集めるときも百人ぽっちでいいのか? とまでいわれたし、検査薬も一言命令しただけで集まったものな。それは納得だ。


「加えて魔法師の血は古ければ古いほど尊く強い、そう思い込んでいる頭ガチガチの魔法師の家も多い。歴史の古い家はだからこそノワルを取り込みより強くなりたいと思い、浅い家はノワルの名によって格をあげたいと願ってる」


「……魔法師にとって家名をあげることは絶対、そういう風潮はたしかにありますね」


「でしょ? だから彼らはレティシア嬢との間に二子なせば一族は安泰と思っている。一子をノワル、一子を自家にすればノワル家の後ろ盾に才能ある血筋のもの両方が手に入るからね」


「婚姻による外政と内政両方の面からも最高ってことか。だがあそこまでなりふり構わずやるものか? まだ学生相手だってのに」


「……メディク君、君は理解が早くて頭もいいのに最後のツメが甘いね」


 ぐっ、い、痛いところを。この前そこを婦長に怒られたばかりだってのに。


「いいかい、メディク君。逆だよ、学生“なのに”アプローチしているんじゃない。学生”だから“これほどなりふり構わずアプローチしているんだ」


「……どういうことだ?」


「アポロンやアレス にアプローチをかけると政治的な動きが強くなりすぎるし、彼らは多忙極まりないからね。いい印象を持たれない。だが君相手なら気分を害しても大したリスクはないし、うまくいけば……ノーリスクハイリターンの極致だね、うん」


 ひ、ひでぇ言われよう。でも反論できない。もし叔父さんに愛人やるからレティシアをくださいしたら叔父さんブチ切れて潰しに行きかねない、というか行く。


「加えてまだ学生で未熟な今のうちなら抱き込むのも容易、なんて考えているんじゃないかな?」


「本当にろくでもないにも程が……」


「だね。不誠実極まりない。興味があるなら“僕みたいに”直接本人が出向くのが筋ってもんだろうに」


「なっ⁉︎」


 まて、ひょっとしないでもこの先輩までレティシア狙いなのか⁉︎ 図書館も安全地帯じゃないっていうのか? くそ、いったいどうすりゃ……


続きは08:10に!

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