33話 新たな始まりの予感
三章スタートです
さて、色々とあったものの最後は無事に、帰りの馬車の中でなぜだかむくれたフィーユがずーっと傍に座って腕をつねってきたりしたがとにかく無事に実習を終了して屋敷に戻った俺を待っていたのは……
「メディ兄、少しお話ししようか?」
とっても静かにブチ切れたレティシアだった。いや、最初は機嫌悪くなかったんだよ。むしろすごく良かったんだよ? 俺が帰ってきたのをすごく喜んでくれたし。
でも、俺の右肩に巻かれた包帯に気付いて、俺がその理由を話せる範囲で話したらご覧の有様だ。
「……どうしてケガしたこと教えてくれなかったの?」
「いや、さっきも言ったけどイロイロと事情が面倒でな? それに大したケガじゃなかったから教えて心配かけるのも……」
なんせ不正のあれこれだとかなんとか絡んでいるからな。口外できない内容も多いし。どうしても事後報告には……
「教えてもらえないほうが心配だよ! もし、もしメディ兄に何かあったらあたしひとりぼっちになっちゃうんだよ」
……理屈じゃなかったよな、こういうのは。
「すまない、レティ。次から気をつける」
「……うん、いいよ。でも次はなしでね。もうそんなけがしないで」
「そうできたらいいんだけどな」
婦長の言葉を考えるとどう考えてもまた無茶する羽目になりそうだし、それはまぁ黙っておくか。
「ところで、レティ。俺がいない間レティはどうだった?」
「どうって……えーと、あれかな。発表会でみせたアレを教えろとか研究させろって結構イロイロなところから話がきて面倒だったかな」
「発表会最優秀賞は伊達じゃないってことだな。高く評価されているようで俺も嬉しいよ」
「あと、なんか結婚とか婚約の話もいっぱいきた」
「なっ⁉︎」
け、結婚ってれ、レティはまだ学院入ったばかりだろ? お、お兄ちゃんそんなのゆるしません!
「メディ兄、すごい顔になってるよ」
「あ、ああ当たり前だろ。な、なんでそんな話に」
「あたしもよくわからないけど、あたしの才能を継いだ子どもを残すのは義務だのなんだの。んで、婿入りしますからどうかー! 自分は優秀ですからーっていっぱいきたよ」
ああ、なるほど。レティがこの前の発表会で天才の評価を不動のものにした。それこそ、俺の発表内容がノワルの家とはかけ離れているものだったからレティがノワル家を継ぐのが決定事項と確信するやつらも多かったんだろうな。
加えてレティがみせた俺由来の合体魔法とか同時使用……自分に自信がある名門の次男や三男には突撃以外ないってたか。まぁ理屈はわかるな。
「そんな不埒な理由でレティをモノにしようなんてなにを寝ぼけてるんだぁ‼︎」
ばってんそげんことかんけいなか! ……じゃない、そんなの関係ないから。理屈がいくら通っていても、それでもたらされる利益が大きいとしてもそれとこれとは別問題ってやつだ。
「メディ兄、怒ってくれるんだ」
「あったり前だろ、これを怒らないはずがないだろ」
可愛い可愛い妹分をそういう政治的なあれこれとか才能とかだけで欲しがられるとか論外に決まってるだろ、まったく。
「じゃ、メディ兄があたしのこともらってくれる?」
「……は?」
れてぃ、おまええがおでなにいってんの?
「伯父さんが、メディ兄とあたしがくっつけばノワルの継承問題全部片付いて楽なのになー、断っても邪推されなくてすむのになーって……」
父さんレティシアになにいってるんですか。いやたしかに父さんの立場からしたらそれが一番平穏無事な婚姻内政かもしれないけどだからってそれ本人言うとかどうなの? というか、父さん最大の地雷原がすぐそばにあるの忘れてない?
「叔父さんが……すごく怖いんだが」
「大丈夫、そんなこと言うパパ嫌いって言ったら一発で折れてくれるから。そのあと孫を抱かさないでフィニッシュ」
「やめてあげろよな⁉︎」
あの人本気でレティを溺愛してるんだからな⁉︎ 会えない時間が長い分本気で想いが深くなってるってのにそんなこと娘に言われたら憤死しかねないぞ⁉︎
「大丈夫、さすがにそこまでは言わないから」
そこまでは言わなくてもイロイロいうんだな……
「でも、父さんもメディ兄が相手なら文句をそこまで言わないと思うよ? 父さんメディ兄のことすごく気に入っているし」
「ああ……たしかに叔父さんは俺にも優しいけど……」
レティの火傷を治した恩人扱いでこの前の発表会でも協力してくれたし、こっちに戻ってくる時はお土産いっぱいくれるしなぁ……下手したら父さんよりも可愛がってくれてるし。
「それとこれとは話が別なのが男親ってやつだからな。こういうのは理屈じゃないし」
ついさっきの俺の状態だってもろにそうだしな。
「そっか……でもなー、あたしもメディ兄がもらってくれるって言ってくれたら楽でいいんだけどなぁ」
「レティまでそんなことを……頼むから自分を安売りするなよな」
「む〜、そこは俺がもらってやるくらい言ってくれていいのに」
「それはさすがに不誠実だしな」
だいたいうかつなこと言うとどうなるかわからんし、下手したら叔父さんがすっとんできて俺の命もすっとびかねない。
「しかし、そうなるとレティ大変だろ? 学院でもあれこれ言い寄られてるんじゃ」
「うん。前は雑草くらいだったけど最近は先輩とか下手したら若手の教師もイロイロくる」
教師までかよ⁉︎ いやそんだけレティが規格外ってことなんだろうがそれにしたってそれはちょっと大変にもほどがあるな。さて、どうしたものか。
「だから、あたしを口説きたいならメディ兄に話し通せっていっちゃった」
「は?」
なにをいってるんだこのいとこ。え、なに? なんでそういう話になるわけ?
「一々相手するの面倒だし、あたしはほら? そういう相手を見極めるの苦手だからメディ兄に見極めてもらったら楽だなーって」
「楽だなってあのなぁレティ。さすがにそれは」
「伯父さんも父さんもメディ兄が壁になってくれるなら安心って言ってるよ。変な虫が寄り付く心配がすごく減るって」
ああ、くそ。悔しいけど父さん達の気持ちがわかる。前世でも結構そんな話みてきたからな、若き天才を食い物にするダメな男とか、どう考えてもクズな男にころっと騙される才女とか。
レティシアが顔だけ男口だけ男に転ぶとは思わない、思いたくないがそれとうちの子に限って〜は紙一重。心配してしすぎることはないし、同じ学校にいる異性の俺を防波堤に使うのはむしろ順当すぎるか。
それにレティにすり寄る虫の相手をさせて貴重な時間を無駄遣いさせるのは論外すぎるし……
「わかった、一応俺にできる範囲で見極めをしてやる」
我ながらレティシアには甘いというか、まぁ可愛い妹分のためだししょうがないよな。俺も別に人の見る目があるわけじゃないが、それでも男目線で論外なやつは弾けるしな。
「ほんと? ありがとうメディ兄! 全員無条件で落としていいからね」
「全員無条件っていいのかよ」
「いいのいいの、メディ兄以上にいい相手がいるはずないし。あたしにとっての一番はメディ兄でずーっと固定だし」
そこまでいってもらえると兄貴分としてはうれしいやら恥ずかしいやら、ちょっと心配になるのやらだな。
「はは、ありがとうな。とりあえず、片っ端から落としていくからレティは安心して勉強頑張れよ」
まぁここまで信用してもらえるんだから頑張らないわけにはいかないよな。でもま、いくらなんでもノワルの失敗作とまで言われている俺に対してレティシアをくださいできるやつはそんなにいないだろうし、それほど大変なことにはならないだろ。
二章出番がなかった分レティシア頑張れ……
続きは明日の08:10ごろに




