26話 何事も先達は大事
昨日も1日2000pv達成!
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「お久しぶりですねぇメディクさん。いやー相も変わらず愉快なことになっているようで」
やっぱり、か。扉を優雅にあけて会議室に入ってきたのは発表会であったあのシャルロットだった。うん、声と口調からひょっとしてとは思ったが……
「なんでシャルロットがここに?」
「しゃ、シャル⁉︎ お、おま、おまだ、だれに」
俺の当然の疑問に大隊長があんぐり口をあけて叫んでいるけど他の人間はそれどころじゃないみたいだ。それこそ動物園のゴリラよりも騒いでいたのに皆シャルロットの姿をみて口を開けたまま硬直している。
「なんでもなにもあなたが呼んだから来てあげたんじゃないですか」
そしてそんな硬直した面々には一瞥もくれず、シャルロットは優雅な足並みで俺のすぐそばまで歩いてくる。あ、いや一瞥はしてるけどなんかもう、うん。やめよう。俺にも慈悲はあるしなにより気になることがあるしな。
「呼ばれたって、俺はシャルロットを呼んだりは……」
いやおい、ちょっとまて。まさか……
「お、気付いたようですねぇ! そうですよぉ、メディクさんを小隊に推薦したのはこのわたしです! 」
やっぱりか。ああ、たしかに一番に拍手していたし学院長とも会える立場みたいだからおかしくはないが、にしてもこれはさすがに予想してなかった。
「あの、メディクさん。こ、この方は一体。ず、随分とした親しげですが」
「そ、そうだ。せ、説明してくれ! なぜ貴殿がこの方を呼び捨てするほど親しげなのだ!」
なんて考えていたら両脇からフィーユと隊長が俺を揺さぶってくる。いや、ちょっとまって。それじゃ説明が……
「はいはい、そこのお二人にわかりやすく説明するとわたしはあれです、メディク君が十九小隊で実習できるよう取り持った張本人なわけです。フルでメイルな小隊長はじめ軍にはわたしからってのは隠していたんですが、まぁそこはいいでしょう」
「な、なぜ隠して」
「ええ。だって人伝にわたしからってメディク君にバレたら面白くありませんし、特別扱いされちゃうかもですし〜?」
クスクスと笑いやがって……ひょっとしないでも俺に実習先が伏せられていたのもシャルロットの仕業だなこりゃ。とはいえ、おかげで助かったのも事実だからなぁ。
「その配慮には感謝を。特別扱いされてたらとてもじゃないが身にならない実習だからな」
「ですよねー! うんうん、そこで素直にお礼を言えて頑張れるあたりやっぱりポイント高いですよメディク君。あと意地をはらずに呼んでくれたのもね!」
「その、メディクさん……さきほどからこちらの方がおっしゃられている呼んだとは?」
おっと、そういやフィーユには、というか他の人には言ってなかったな。
「ちょっと学院に報告しておいたんだ。成果が出たが話を聞いてもらえず下手したら問答無用で揉み消されるかもしれない、ってな」
これはとある偉大な大先達……“フローレンス=ナイチンゲール”の有名な逸話なのだが、彼女もまた俺と同じように軍を相手に患者の待遇の改善を訴えた時、現地の医療長官に門前払いされていた。
それを打開するために彼女が使った手が軍とは別枠の権力、すなわち“女王陛下”だ。彼女は女王から親書を授かりその権威をもって軍人たちを黙らせて己の主張に耳を傾けさせたのだ。
いやうん、あの人白衣の天使ってイメージ強すぎたけどほんとやることなすこと力技というかなんというかだから……だが、今回はその前例がとても参考になった。
あの時の大隊長の様子からまともに話を聞いてくれるはずないと踏んだ俺は婦長の例を真似て学院に連絡、その上でなんとか話を聞いてもらえるよう助力を請うたのだ。
実際勝算はあった。学院長は祖父の友人だしなにより攻撃魔法師として名を馳せた人だ。ジャン大隊長が攻撃魔法師を快く思っていないようであることを告げたら学院としても動いてくれる可能性は高いと思っていた。それに俺が推薦されたのは発表会での発表を認められてだから、成果を見せるといえば仲介者も食いつく可能性も十二分に考えられた。
だがまぁいくらなんでもこの展開は予想外だった。いやまさかシャルロットが仲介者でおまけに直接くるとはな。正直、発表の邪魔をするなという水晶での連絡をいれてもらえるくらいと思っていた。
「ふっふーん、これでもわたしは尽くす女でしてね? こう、面白い発表するからぜひこいなんて恋文をメディク君からもらったらそりゃもう一も二もなく駆けつけますよ」
考えが顔にでていたのかさもゆかいそうにシャルロットがケラケラとこちらをからかってくる。うん、からかわれてるんだからそんな目でこっちみないでくれフィーユ。あっちはそれを楽しんでいるから。隊長も俺の肩握る手の力が増してギチギチいいだしてますが。
「さて、ジャン大隊長。お聞きの通り彼はわたしが学院経由で推薦した人物なわけでして? なのに学院に問答無用で送り返されそうになってるとか? 成果の発表の場も貰えなさそうとか聞いたり聞かなかったりで?」
からかって満足したのか満足げにフィーユと隊長をみてから今度はさっきからなにも言えずに口をパクパクさせているジャン大隊長へとシャルロットは矛先を変える。からかうような口調だがその目線は真剣そのもの、異論は許さぬというのが伝わってくる。
「い、いえ、ですがへ」
「おっと、それ以上はストップです。今日のわたしは個人的な興味で推薦した学生の様子を見に来ただけの暇人です。それ以上いっちゃいますと面白くな……じゃなかった、あなた方が困ることになりますよね?」
「そ、それは。しかし、その、こやつがやらかしたことは」
「そうですね。なにかやらかしたんですよね? でしたらだいたいちょ、なおさらわたしは推薦人としてメディク君が何をやらかしてくれたか、どうしてそういうことをしでかしたのか知る責任があると思うんですが〜」
それでも往生際悪くジャン大隊長が俺を貶めようとするとその言葉尻を捉えてシャルロットが仕留めにかかる。うん、この前話したからわかるがこいつの口のうまさはもう尋常じゃない。互角の立場でもそうなのだがあきらかにシャルロットの方が上ならもう自殺行為だ。
「まさかとは思いますが、よってたかって幼気な未来ある実習生をいじめて憂さ晴らしとかしてないですよねぇ? メディク君が英雄の息子で気に食わないからここでマウントとってああキモチィぃ、どうだ! ノワル家、思い知ったか! なぁんて恥知らずな真似するしてませんよねぇ」
……うん、容赦ないな。そのあんまりにもあけすけでえげつない言われっぷりにシャルロットが来るまで叫び放題だった幹部たちがみんな顔を真っ青にしてなにも言えなくなってる。一部必死に笑いを堪えている人もいるがその人たちは煽りに参加しなかった組だろうな。本当に極一部だが。
「ああ、ごめんなさい! そうですよねぇ、勇名高き白兵魔法師隊の上にたつ、栄光ある幹部の皆さんがまさかそんな子どもじみたことしませんよねぇ。いやー、げすの勘ぐりにもほどがありましたね」
「……えげつないですね」
「ああ、昔っから手加減を知らなかったがさらにだな……」
そしてなにも言えなくなった幹部たちにさらにえげつなく追い討ちをかけていく姿
にさしものフィーユたちも引き気味、というか隊長シャルロットと面識あるのか? さっきからそれっぽいことをいって……
「さて、それじゃ誰も文句をいわないようなのでメディクさん、発表のほうよろしくお願いしますね」
おっと、もう話が進んでいた。いけない、今は目の前のことに集中しないとな。
「わたしはこの特等席から存分に茶々いれますから。発表には容赦ないつっこみとセットですし」
お偉いさんなのにさっきまで俺が座っていた丸椅子を特等席って。まぁいいか。実にシャルロットらしいし。
「わかりましたよシャルロット、さん」
おっと、危ない。癖でシャルロットって言いそうだった。あっちも仲介者であるとは名乗ったわけだから礼儀として呼び捨てはまずいよな、いくら許されていても公的な場なわけだし。
「む、今日は個人っていったじゃないですか。さっきみたいにシャルロット、あるいはロッテでいいですよ。メディクさんは今のところポイント高いですし」
まぁそんな気遣いは全部ぶちこわされたけどな!いや、さすがにこの場でロッテは……
「あ、でもだからってこの前みたいにハニーはダメですよ。噂になると恥ずかしいし……いうなら二人っきりの時でロマンチックな空気で」
こいつなにいってんだ⁉︎ あれか? この前の復讐か? 江戸の仇を長崎でじゃないが発表会の前にやられたことをここで返しているのか⁉︎
「ほぉ、シャルロットへ……殿をハニー呼ばわり、ほぉ」
「……随分と親しいご様子で」
「あの、フィーユ……隊長……痛いんですけど。二人とも足、足踏んでますけど」
二人からグリグリ踏まれる足がちょっとでなく痛い。というか隊長ほんとやめて、フルアーマーな足で踏まれるとほんと洒落にならないから。
でもそれ以上に視線が痛い。フィーユはすんごいジト目だし、隊長はフルヘルムで隠れて見えないけどフィーユに負けないくらい冷たい目をしているのが肌で感じられる。
「痛くしてますから」
「うむ」
畜生……俺がなにをしたっていうんだ……
次で 10万字こえるかな?
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