25話 いざ戦いの時
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時間の流れは良くも悪くも残酷とはいうが、戦う覚悟を決めてからというもの普段の訓練時の治療以外にもするべきことがどっと増えたせいもあって大隊長が言っていた会議の日までは本当にあっという間だった。
だがボヤいたところでしょうがない。覚悟を決めて、俺たちはあの嫌味ったらしかったジャン大隊長が率いる第七大隊の本部へとやってきた。いや正確に言えば呼び出された、だな。
「……本当に良かったのか? 呼び出しの命令も自分の一存で帰しました、で済ませても良かったのだが。どう考えても愉快なことにはならないぞ」
大隊の本部で行われる会議に実習の学生が簡単に参加できるはずがない。だが、今回それができるのはあの後大隊長から”実習を切り上げさせた証としてメディク=ノワルを連れて会議にでろ“、という命令が届いたのだ。
まぁどう考えてもろくなことにはならない匂いがぷんぷんするな。ただ、これはチャンスでもある。
「かまいませんよ。会議に参加しろというなら参加しますよ。隊長のおかげでまとまった資料を見てもらういい機会ですし」
そう、普通は参加できない会議も堂々と参加できるなら直接資料をぶつけ発言もできる。結果がどうなるにせよ戦うことはできるわけだ。だから隊長の気遣いを断って参加することにしたのだ。
「ええ……せっかく私たちでまとめたんですからしっかり見てもらいませんと……」
フィーユと、一緒に。
いや本当のところ、俺はフィーユを置いてくるつもりだった。別について来れないと思っているわけじゃない。ただ、前回の発表会と今回では事情が違いすぎる。
軍の上層部に意見をいうわけだし下手しなくとも睨まれブラックリスト入りしてマークされる可能性がある。そんなリスクをフィーユにまで背負わせるわけにはいかない。そう思っていたんだが……
「……どうしてそんなことを言うんですか。私もついていくに決まっています。メディクさんだけにさせられませんよそんなこと」
すごく悲しそうな顔で怒られてしまった。フィーユは感情の起伏が激しくないのに、はっきりとそうとわかるほど怒っていた。
「いやだが今回ばかりはリスクが」
「それを言うならメディクさんもです……メディクさんが隊長のために折れないように……私も、メディクさんが我を張るならお付き合いします」
「……別に隊長のためだけじゃないぞ? 俺たちがしてきたことを踏みにじられそうだからでもある」
「なら、なおさらです……私たちがしてきたことのためにメディクさんが戦うなら、私もいかないわけにはいきません」
「……本当にいいのか?」
「はい……それにメディクさんは……私にとってはその……一番近くにいる、生身の物語の主人公、ですから……その困難に挑むと言うならそのお手伝いをさせてください。すぐそばで見届けさせてください」
ここまで言ってくれたフィーユを置いてこれるはずもなく俺はフィーユをつれてここまできた。本当に俺は果報者というかなんというか……うん、戦う前にもう一度だけ、言っておこう。
「フィーユ、ありがとうな」
「……こちらこそ、です。さ、いきましょう……そして、勝ちましょう」
俺の自分勝手の感謝に対してフィーユが見せてくれた笑顔は、今まで見た中でも指折りで綺麗で……心が躍るものだった。
こうしてフィーユに勇気をもらって会議に乗り込んだわけだが……その扱いはあまりにも露骨だった。
会議室の中心に鎮座する巨大な円卓と背もたれ付きの高そうなうな椅子、ジャン大隊長をはじめ他の参加者は皆そこに座り前には飲み物や軽食が山のように置かれている。
一方で俺たちに与えられたの低い丸椅子だけ。たまにこちらを見てくるジャン大隊長の目線は座れるだけでもありがたいと思えと言わんばかりだ。
でもまだよかった。もし立ったままだったら体力がないフィーユは倒れていてもおかしくなかった。そうなったら発表に影響がでるし、なによりフィーユが気にするしな。
そんな安堵を隠してただただ目の前で今の俺にとっては意味がない予算の配分やらなんやらの話を聞き流し続け……
「では本日最後の議題に移らせていただきます。議題は皆さまもご存知の通り、第十九小隊についてです」
いよいよ、本番。ジャン大隊長が円卓から立ち上がり俺たちの方にこれ見よがしに視線を向けてくる。その目線はあきらかにこちらを蔑むもので友好的ではどうあってもなく、ジャン大隊長の目線に気づいてこっちを見てくる他の参加者の目線もだいたいは似たようなものだ。
「第十九小隊は愚かにも治療屋……回復魔法師の実習にきた学生の浅知恵に惑わされ訓練中に塩飴などというものを舐め、そればかりかライムの絞り汁が入った飲み物まで飲む始末!」
ジャン大隊長が口を開くと会議室のあちらこちらからけしからん! だとかなにを考えているとかいう声があがる。俺には予想通りのアウェーっぷりであり、大隊長にとってはこれ以上ないほどの応援。側から見ていてもわかるほど大隊長のテンションが上がり声が大きくなっていく。
「他にもその学生は魔法を使って傷口を洗うなどという無駄な行為を我ら白兵魔法師の誇り、訓練と戦いの証である傷痕を残さないために行うなど、まさに言語道断な所業を繰り返しております」
そして大隊長の声に負けないほど、野次もどんどん盛り上がっていく。ひどいだとか誇りを奪うななどもうそれは耳が痛いほど。そしてその声に大隊長は満足げに微笑んで俺たちを見下ろす。
「さぁ小隊長、そしてメディク=“ノワル”に他一名、謝罪しなさい。白兵魔法隊の誇りを汚し、魂を堕落させたことを!」
「そうだ! 謝罪だ! 誠意を見せろ!」
「まったく、とんでもないことをしてくれたものだな!」
俺の名前が呼ばれた瞬間、会議室のあちらこちらから聞こえてくる怒号は発表会の時のクレソンが用意したそれの比ではなく響き、もはや耳が痛いを通り越してなにを言っているのかもわからなくなりそうだ。
しかしこの反響はただ俺がやったことに怒っているだけではないのだろう。わざわざ大隊長が俺の名前を、“ノワル”を強調して言ったあたり。攻撃魔法の大家であるノワル家、その中でも英雄と呼ばれる父さんの嫡男である俺が頭を下げる。こいつらにとってこれ以上ないほど愉快なことで、全力でマウントを取って満足をしたいのだろう。
「拒否します」
ああ、本当に反吐が出る。別にそういう感情を持つなとは言わない、俺だって人間として褒められたものじゃないしな。だがだからってそれを剥き出しにするな。
おかげで完全にためらう理由がなくなって、覚悟も決められた。
「……なに?」
「謝罪する前にどうか弁明の機会をください。なぜそのようなことをしたのか。説明をさせ」
「くどい! 言い訳など聞きたくありません! ああ、まったく誠意ある謝罪をすれば許してあげるというのになんですかその態度!恥ずかしくないのですか!」
「そうだ、恥を知れ!」
「我らの誇りをなんだとおもってる!」
「謝罪すらできないのかノワルの出来損ないは!」
俺の言葉に会場の怒号はさらにヒートアップしていって、何人かは今にも掴みかかって俺の頭を地面に叩きつけんばかりに立ち上がっている。
しかしこれはまずい。ここまで沸点が低くては俺の用意したあれこれも馬の耳に念仏。下手したら何かをいう前に物理で排除されかね……
「いやいやぁ、それをいうなら恥ずかしいのはあなたがたの態度のほうじゃないですか」
おい、ちょっとまてこの声、この口調は……
続きは明日の8:10ごろに!




