最初の町
「んだと、てめぇ!」
「やんのか、こらぁ!」
……これが勇者に見える奴は居ないだろう。
俺は面倒なので関わらないよう静かに酒を飲んでいた。
「てめえ、消し炭にしてやろうか!?」
「はっ! 返り討ちにしてやるよ」
「やれやれ~!」
「ぶっ殺せ!!」
段々とヒートアップしてきた様だ。回りも煽り出した。
店の中で魔法を使いかねない雰囲気だ。
「なら、黒焦げにしてやるよ! 《雷よ、我に力を貸したまえ、槍と成りて我が敵を貫け》」
男の前に、雷の槍が現れた。
「てめえがそのつもりなら……《炎よ、我に力を貸したまえ、矢と成りて我が敵に降り注げ》」
男の前には複数の炎の矢が現れた。
おいおい。本当に店の中でやる気かよ……。
「ちょ! お客さん! 外でやって下さいよ!!」
マスターが慌てて言った。
だが、もう遅い。
「「死ねぇ!!」」
2人の男の声がハモる。
雷の槍と炎の矢がぶつかり合う。
「《風よ、包め》」
誰かの声と共に、俺を含めたカウンター周りを風の結界が包む。
次の瞬間、爆風が店内を覆う。
机や酒瓶が飛び散っていく。
あ~あ。もったいね。
爆風が治まると店内は一変していた。
机や椅子は倒れ、数人は気を失っている。
魔法を放った2人も黒焦げになりながらピクピクしている。死んではいないようだ。
そんな中、結界の張られたカウンターの中だけは無傷だった。
「あ~あ~。派手にやったなぁ」
見ると、カウンターの脇に一人の男が座っていた。
男は172cmの俺様より少し背が高い程度で、赤っぽい茶髪を短く後ろで結んでいる。
軽薄そうな笑みを浮かべたその目は髪と同じ色をしていた。
この騒ぎで埃一つ付いていない。
カウンターに結界を張ったのはこいつか。今までの雑魚と比べれば中々やるようだ。
「わ、私の店が……」
マスターが呆然と呟く。
「まあまあ、酒は無事だろ? あいつらは片付けてやるから」
「《風よ、運べ》」
男がそう唱えると緩やかな風が吹いた。
風は倒れている男達を包むと、乱雑に外に放り出した。
同じ要領で、破壊された机や椅子も外に出した。
「あ…ありがとうございます」
まだ衝撃から抜けきらないマスターはかろうじて礼を言う。
「兄ちゃん、この騒ぎで眉ひとつ動かさないなんて、胆が据わってんなぁ」
男は軽薄そうな笑みを浮かべた顔で、声をかけてきた。
俺は軽くシカトしたが、気にせず隣に座ってくる。
「俺が結界張るの解ってた?」
尚も黙っていると、一人でどんどん喋りだした。
「俺はキースって言うんだ。あんたは? 見たとこ、あんたも勇者を目指しているんだろ? だったら俺と組まないか? あんなチンピラを仲間にする気は無いんだ。この町にもギルドが有るが、そこに行くのか? だったらやめた方がいいぜ、ここのはただのチンピラの集まりだ。隣町の方がいいぜ」
……うるさい。




