勇者登場?
迷惑がられる勇者も珍しいが、魔王のサイクルが2,3年おきは早すぎるだろ……。
クソ親父め、厄介な世界に送り込みやがったな。
魔王である俺から見ても非常識な世界に脱力していると、馬の足音が聞こえて来た。
見れば商人達が来た方から馬影が3つ近付いて来る。
「よう、楽しそうだな。俺達も混ぜてくれよ」
「そうそう、俺達は勇者御一行だからな!」
馬に乗った3人が話し掛けてきた。
おいおい…、丸っきり只の山賊じゃねぇか。
商人達が嫌そうな顔を無理矢理笑顔にして尋ねた。
「勇者様御一行でしたか。何か入り用でしょうか? お安くしときますよ」
「いや何、この街道はな、いつ魔物が現れても安全に通れる様に俺達が管理しているんだ」
「そうでしたか、ご苦労様です」
「そこでだ、安全に通れる代わりに少しばかり通行料を頂いていてな」
「まあ、命を張って守っているんだ、それくらい当然だろう?」
「通行料……ですか? この街道で魔物が出たことなど無かったと思いますが」
商人が胡散臭そうに言うと、自称勇者御一行は剣を抜いた。
「安全が金で買えるんだ、安いもんだろう」
「ひいぃ!」
それを見た商人達は怯え、渋々だが金を払う。
「次はお前だ。さっさと金を出せ」
自称勇者が成り行きを見ていた俺にそんな事を言って来る。
俺は不敵に笑って答えた。
「ねぇよ」
「は? 聞こえなかったな、何だって?」
自称勇者が剣を向けて聞いてきた。
「てめぇらに渡す金なんか、ねぇって言ってんだよ」
俺はそう言うと、自称勇者の剣を素手で折った。
なんだ、勇者を名乗るくせにずいぶんと安物じゃねぇか。
「!!? なっ! てめえ!!」
自称勇者はそのまま、折れた剣で斬りかかってきた。
俺はそいつの鳩尾に蹴りをかました。
自称勇者Aが道の端まで吹っ飛ぶ。
「てめえ! 何しやがる!!」
逆上した2人も斬りかかってきた。
俺様はそれを易々かわし、自称勇者Bも蹴り飛ばす。
最後の自称勇者Cはそれを見て下がり、呪文を唱え始めた。
《雷よ、我に力を貸したまえ、槍と成りて、我が敵を貫け!》
雷の槍が男の前に現れた。
これがこの世界の魔法か。構築が甘いのはこいつの腕か。
「死ねぇ!!」
男の掛け声で、雷の槍が俺に向かって来る。が、
「……阻め」
呟くと、槍は不可視の壁に阻まれ地に落ちた。
「終わりか?」
俺が聞くと、男は恐怖に顔を歪め、闇雲に槍を放ってきた。
しかし、その全てが俺に届く前に地に落ちた。
俺が一歩づつ男に近付く。
「ひ、ひいっ! お、お助け……」
「俺様から金を取ろうなんて、良い根性してるじゃねぇか」
男の側まで来ると俺はそいつの首を片手で締め上げた。
男の身体が宙に浮く。
「う゛あ゛……」
首を絞められ男の顔がみるみる蒼白になって行く。
次の瞬間。
「ぐ、ああ……!?」
うめき声を上げたのは俺だった。
頭が割れる様に痛い。
額が燃える様に熱い。脳みそが溶け出しそうだ。
堪えきれず、俺は男を離した。
「はあっ、はあっ……」
何だ今のは!?
俺は男を見た。
既に気を失っている。しかし、微かに息は有るようだ。