RPGにおける勇者の振る舞い
大地を踏む感触がした瞬間、光が戻ってきた。
辺りにはエルク達の姿は無く、代わりに生い茂った木々が見えた。
「さて、ここは何処だ……?」
どうやら森の中にいるようだ。
辺りを見渡すと、少し先に道があった。これを辿れば町に着くだろう。町からはそう遠くは無いはずだ。
俺は直感で右の道を選んだ。
歩きながら、先程のクライナーの言葉を思い返す。
どんな呪いが込められていると言うのだろう?
クソ親父め、余計な事をしてくれやがって……。
心の中で悪態をつきながら進んで行くと、前から商人達のキャラバンと思われる馬車が近付いてきた。
この世界の情報を得るには丁度良い。
何食わぬ顔をして近付こうとすると、こちらに気付いた商人達が警戒するように声を上げた。
「な、何か用か!? こっちは勇者にやる物なんか何も無いぞ!」
「は?」
全く訳の分からない事を言っている。
俺が勇者?
どんな勘違いをしたらそうなるんだ?
勇者呼ばわりに不快感を覚えたが、とりあえず笑顔で答える。
「いえ、俺は勇者ではありません。ただの旅の者です」
そう言うと、商人達はあからさまにホッとした。
「何だ、違うのか。悪かったな、勇者なんかと間違えて」
「何か必要な物はあるかい? 安くしとくよ」
「いいえ、大丈夫です。それより次の町までどのくらいありますか?」
商人の言葉が引っ掛かるが、まずは当たり障りのない質問をした。
「歩きなら、半日って所だな。だが、気を付けろよ、勇者御一行がうろうろしてるぜ」
「勇者御一行?」
「ああ。まあ所詮自称だけどな。魔王もいないのに勇者だなんて、アホらしい……」
商人の言葉には刺があった。
どういう事だ……?
「その勇者御一行と何か有ったのですか?」
「そうだよ、忌々しい勇者気取りめ。堂々と商品を壊しやがって」
「……勇者が?」
「あんたは被害に会ったことが無いのか? あちこちの家で、タンスを漁られ物が盗まれたり、壺を割られたりの被害が出てるんだ。全く、盗賊より達が悪い」
「国はどうしてるんです? 捕まえたりは?」
「……。あんた田舎の出か? 昔、魔王に支配されてた時代が有って、何人もの勇者達が殺されたんだそうだ」
田舎者扱いは癪に触るが、俺は黙って聞いた。
「とうとう、誰も魔王に立ち向かおうとはしなくなった。そこで国が勇者保護法なんてもんを作り出した。そのせいで、勇者なら大概の事は罪にはならない」
「なるほど……。今でもその法は生きていると」
「ああ」
「でも今は魔王はいないのでしょう、それでも勇者が名乗れるのですか?」
「今の所、3年前の魔王が最後だな。その時の勇者がゴロゴロいるし、そろそろ次が来るんじゃないかって噂だ。最近、勇者試験が再開されたらしい」
「さっさと魔王でも出てくれれば、少しは減るのにな」
3年前って……。
「その前は5年前か? 大体2、3年おきに出るな」
「出ても直ぐに討伐されちまうんだよな。もう争奪戦状態」
…………。
魔王のサイクル早すぎだろ!!!!
「あんた、そんな事も知らなかったのかい? まあ、田舎なら情報が伝わる前に平和になってるか」
「ははは……」
俺は気の抜けた返事しか出来なかった。