公園で
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「なっちゃん、ありがとう。助かったよ。」
芦原さんは家に来て、菜都実先輩の入れたお茶をゆっくりと飲んでいた。
「芦原さん、どうしたの?あれ、新しい彼?うまく行ってないの?」
菜都実先輩がそう訊くと、芦原さんは泣き出した。
「あ、俺ちょっとコンビニ行って来る。何か甘いもの買って来るよ。のんびり選んで来るから後で連絡ちょうだい。」
そう言って俺は、空気を読んでコンビニへ向かった。
途中、公園の前を通りかかると…………暗がりで誰かが殴られていた。ここは下手に関わると良くない。早く立ち去ろう。
「楽しいな、小崎。」
…………小崎?ってあの小崎!?暗がりで目を凝らすと……やっぱりあの、小崎だった。
「…………小崎!!」
思わず、口を出してしまった。
「お前誰だよ?」
「小崎の知り合い。あ、もしもし?コンビニ近くの三角公園で喧嘩です。すぐ来てください。」
「ヤバい!警察呼ばれた!早く逃げるぞ!」
俺が電話をかけていると、小崎の周りの男達がすぐに逃げて行った。
「こんな所で何やってるんだよ小崎?」
「日野さんこそ……」
「お前……絡まれたら逃げないと。大丈夫か?」
俺は小崎を立たせようと腕を掴んだ。
「腕、痛いです……。」
「あ、悪い。」
小崎は腕を離すと、またその場に座り込んでしまった。俺はその隣に座った。
「災難だったな。何があった?そこまでされるような事したのか?」
「…………した。したんだと思います。」
そう言って小崎は頭を抱えた。
すると、少し離れた所で小崎の携帯が鳴った。小崎は生け垣の中から携帯を取り出した。
「携帯あるなら助けを呼べよ!」
「いや、携帯はとられたくないんで。」
そう言いながら電話に出た。こっちも菜都実先輩から着信が来た。
「小崎、今家に芦原さん来てるんだけど、来る?」
「美帆乃……。いいです。これから加島がここに来るので。」
「じゃ、加島が来るまで俺も待つ。」
こうゆう時、どんな話をすればいいのかわからなかった。
俺はバスケばっかりやってて、多少絡まれても、いつも友達といてすぐ逃げられたし…………比較的平和な高校生活だった。
そんな俺が、言える事って何だろう?頑張れ?安っ!薄っ!
微妙な空気のまま、二人で黙って座っていた。