よくある事?
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その事を、野々村に伝えてみた。俺達は、茂木先生のいた教室で話をしていた。野々村に伝えたところで何も変わらない事はわかっていた。
でも、野々村の反応は意外と冷静だった。
「まぁ、その可能性はあるだろうね。」
「あるだろうって……ショックじゃないの?友達が幼なじみをいじめるように追い込むって……。やっていい事じゃないだろ?」
「フラれて逆恨みなんてよくある事じゃん。」
よくある事?よくある事で済ますのか?俺達まだ1年の半分だぞ?あと2年半どうするんだよ?
「ミホの気が済むまではどうにもならないでしょ。まぁ、こうなったら気が済んでもどうにもならないと思うけど。」
そんな話をしていると、そこへ芦原さんが来た。
「ちーちゃん!二人で何話してたの~?」
芦原さんの、笑顔が好きだった。
特に、悠太!そう呼ぶ声が心地良くて…………好きだった。
俺は思いきって、芦原さんを問いただしてみようとした。
「私、職員室寄るから先に行ってるね。」
野々村は聞きたくないのか、先に教室を出て行った。
「あのさ、芦原さんちょっと話いいかな……?」
「どうしたの?加島君?」
「写真…………」
「写真?」
何?その笑顔……?咎めるこっちがオカシイみたいに思えてくる。
「加島君、悠太がいじめられて、加島君には迷惑かもしれないけど、悠太と友達でいてあげてね。」
「は?」
「私は太田君と付き合ってるし、フラれたから、ただの幼なじみでしかいられないから。」
そう言うと、芦原さんは教室を出ようと出口の方へ行った。そして、戸の前に立ち止まるとこう言った。
「加島君の考えてる通りだよ。」
「は?」
「写真…………私が貼った。」
やっぱり…………。
「何考えてんの?普通ここまでする?」
「ここまで?ここまでするよ!だって…………これで私とは幼なじみのまま。加島君とは友達のまま。これは、悠太が望んだ事だよ?」
その笑顔は…………恐ろしかった。
俺はこの芦原さんを知ってたら、好きになってたか?正直…………もう芦原さんを好きという感情は無くなっていた。
「私、そろそろ行くね。太田君待ってるから。」
「ああ、じゃ。」
俺は芦原さんの後ろ姿を見送った。小崎にフラれて変わってしまったのか、俺が本当の芦原さんを知らなかったのかどっちだったんだろう?