写真
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長いようで短い夏休みが終わった。乗り換えの駅で偶然野々村と会って、一緒に登校した。
「おう、野々村もここで乗り換え?」
「加島、ミホの事諦めて私に乗り換えなよ。」
「はぁ?朝からど直球だな。」
野々村の言葉は時々本気か冗談かわからない時がある。
「え…………は?どうゆう事?」
学校に着くと、野々村が急に掲示板の前で足を止めた。
「どうした~?ゾンビでも出たか~?」
「ゾンビ出た!」
「マジか!!」
いやいや、ゾンビなんてありえないだろ!
これ…………ゾンビぐらいあり得ない。
掲示板には、茂木先生と小崎の映った写真が何枚も貼られていた。一緒にウォータースライダーに並ぶ姿、小崎の家から出て来る茂木先生の姿、この写真だけ見れば、まるで…………小崎と茂木先生が付き合ってるみたいに見えた。
「1年B組小崎悠太、至急職員室に来るように。」
校内放送が、学校中に鳴り響いた。
「誰が……こんな事を?」
「とにかく、小崎とミホが見る前にこれ片付けよう!」
野々村と慌てて写真をとっていると…………
芦原さんが登校してきた。野々村と慌てて写真を後ろに隠した。
「おはよー!二人ともこんな所で何してるの?掲示板に何か貼ってるの?」
「違うよ!何でもない!」
「何?何か隠してる?」
とにかく、芦原さんにこれは見せられない。
「早く入らないと遅刻しちゃうよ~?」
「うん、先に教室行ってて!」
「わかった。二人でごゆっくり~!」
そう言って芦原さんはそのまま下駄箱の方へ行ってしまった。掲示板から外してくしゃくしゃになったた写真を、後ろに隠したまま下駄箱に向かった。
野々村が写真をゴミ箱に詰めながら、周りを見回して言った。
「これ、誰が撮ったんだろうね?プールは誰でも撮れそうだけど……小崎の家は……張り込み?怖~っ!」
「いや、でも、茂木先生が小崎の家行ったのって多分一度だけだし、その一度だって…………」
その一度だけに、小崎の家の前で茂木先生を待っていたのは…………
「ええっ!小崎の家に行ったの?マジ?この写真マジ?」
「やめろ野々村、そんなに大きな声で騒いだら、この写真に信憑性が出るだろ。」
この写真を俺達が外した時点で、信憑性はかなりあがったけど……。
「いずれミホの耳にも入るだろうし…………誰だよ!こんな事したのは!」
野々村には、言えなかった。一瞬でも、芦原さんを疑った事を。