カッコ悪い
76
「夏休みにね、学校に呼び出されるのはわかるんだけど…………」
なっちゃんは呼び出された場所に何だか納得いかないようだった。
「嫌だった?」
「嫌とかじゃなくて……」
ゲームのコントローラーを置いて、悠太がため息をついて言った。
「ここ僕の家。呼び出すなら自分の家にしろよ。」
「あ、うん、すぐ出て行くからね!芦原さん、場所変えようか?ね?」
「なっちゃん、ミホ。ミホって呼んでよ。」
なっちゃんはどうやらまだ友達としては慣れないみたいで、芦原さんと呼ぶ。
「うん、それはいいから。あの……てっきりここ、芦原さんの家かと思ったんだけど……」
正直、悠太には会いたいけど、1人で来る勇気が無かった。ちーちゃんは今日は用事があるらしく、たまたまなっちゃんとのアポがあったから、場所をここにしてもらった。
「だって、友達の友達は友達でしょ?」
「友達の友達って……?」
「なっちゃんと友達になったの!」
ちーちゃんに言われた。私は悠太が好きなんじゃなくて、執着してるだけだって。悠太に執着して、まだ家に来てる。何だか私、カッコ悪い。人を好きになるってカッコ悪いのかな?
悠太の態度を見ていると……
好きという感情と共に憎しみの感情も生まれる。
「なっちゃん、私悠太にフラれたの、悠太の事、みっちり説教してやって。」
「は?フラれた?」
「私、先に学校行ってるね!」
そう言って、先に悠太の家を出た。
こんな事ならゴーレムが好きでいれば良かった。ずっと催眠術にかかったふりをすれば良かった。
「芦原さん!小崎ん家行ってたの?」
悠太の家の近くで、加島君と会った。
「うん、なっちゃんと来たの。」
「なっちゃん?」
「茂木先生。」
加島君は辺りを見回した。
「茂木先生は?」
「まだ悠太の家の中。」
「え?こんな暑い中外で待ってるの?大丈夫?」
外は暑い。だけど……私はここで待つしかない。加島君は私と別れて、悠太の家に入って行った。
しばらくすると、なっちゃんが悠太の家から出て来た。