助けられる
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加島…………僕は加島の事は尊敬している。運動ができて、成績もそこそこ良くて、気がきいて、空気が読めて…………だけど…………
高い所が苦手とは知らなかった…………!!
「キャー!怖い!怖い!怖い!」
しかも怖がり方が女子……。女子みたいな弱々しい姿に若干引いた。
「だから嫌だったんですよ!小崎!お前ニヤニヤすんな!気持ち悪い!」
顔に出さずにはいられなかった。あの加島が……。笑ってはいけない。加島が傷つく!ケツをバットで叩かれると思え!堪えろ!!
「いや……加島……笑っ……笑ったらいけないかと……」
「いっその事笑ってくれよ!笑ってくれた方がまだマシだ!!」
ダメだ。抑えられない!
「ぎゃはははははは!!」
結局爆笑した。
そこへ茂木先生がやって来て、加島を容赦なく押して、係の人に注意されていた。その後、茂木先生も日野さんもスライダーを滑り降りて行った。
下では美帆乃が手を振っていた。
最近、美帆乃はあからさまに加島の前でベタベタするし、あからさまに野々村を無視をする。どうしたんだろう?何かあったのか?
誰に訊くのがベストなんだろう?
スライダーを降りて行くと、美帆乃は野々村と茂木先生と仲良さそうにしていた。なんだ。思い違いか。
「悠太、一緒に泳ごう!」
加島の前では止めて欲しい。水着でくっつくのは止めて欲しい。
美帆乃が腕を組むと……胸が腕に当たる。
美帆乃は…………柔らかい。
「美帆乃…………柔らかいな。」
思わずそう言っていた。
「悠太……。」
柔らかい物といえば……豚足!!
「……豚足みたい。」
「コラー!!どこが豚の足なの!?ちゃんと触ってみて!ほら!」
美帆乃が凄い形相で迫って来たから…………逃げた。
しばらく遠目で見ていると、美帆乃は知らない男に話かけられていた。あれって…………ナンパ?加島……日野さん……周りに知り合いが誰もいなかった。これで助けたら、また美帆乃があからさまになりそうで嫌だ……。
それとなく助けて、また逃げよう。
潜水して、そっとそっちに近づいて、美帆乃の前で水面に出ると、二人は驚いていた。
「うわぁ!誰!?」
「悠太!いたの!?」
水面にあがったら、急に意識が遠くなってきて、二人は驚いていた。
「え、ちょっと……」
「悠太!?悠太?大丈夫!?どうしたの!?」
美帆乃の叫び声に、周りの人達が少し騒然とした。
「救護の人呼んで来るよ!」
美帆乃をナンパしていた人が救護の人を呼んでくれて、救護室に運ばれた。
助けるはずが…………助けられた。