表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/90

亀裂


68


「流れるプールにする?それとも、波の出るプール?あ、やっぱり滝のプール?クローバーのプール?」

「あのさ、楽しむ為にミホをこっちに連れて来たんじゃないんだけど。」

「じゃ、何の為?」

やっぱり……ミホは何の悪気もない。


「あのね、ミホは今加島と付き合ってるんでしょ?忘れてない?」

「あ、忘れてた。」

忘れるなよ!

「普通は付き合ってる加島にどう?って訊くんだよ?」

ミホは、そんなルールないって顔してる。確かに、そうしなきゃいけない訳じゃない。けど…………


「私、悠太とのキスで…………魔法が解けちゃったみたい。」

「は?何それ!?」

魔法が解けたからって、開き直っていい事にはならないでしょ?魔法が解けたとしても……誰かを傷つけていい理由にはならない。


「ちーちゃんはさ、私に加島と付き合って欲しいの?欲しくないの?どっちなの?」

「それは…………欲しいよ!だって、加島が告白したんでしょ?だったら上手くいって欲しいよ。」

「そう。やっぱり、ちーちゃんは…………私より、加島君が好きなんだね。」

は…………?


私が……?加島を好き?


「加島君とキスしたら好きになっちゃった?だから、私の事は嫌いになったの?」

「そんな事ない!」

「じゃあ……何で私だけ責められるの?どうして私だけが悪者なの?」

それは…………違う。ミホだけが悪い訳じゃない。そうじゃないけど……。


やっぱり…………ずっと連絡が無視されたのはそのせいだったんだ……。


「ごめん……ミホ。」

「ずるい。ちーちゃんはいつも自分だけ先に謝って、自分だけ安全な所にいる。加島君とキスしといて、自分だけ関係ないふりしてる。」


何も…………言えなかった。


「私、めんどくさいよね。ちーちゃん、めんどくさいの嫌いだよね。だから加島と付き合うようにさせたんだよね?でも、加島君が好きになったから私が嫌いになったんだよね?」


それはまるで…………私自身が、今まで逃げて来た事への、代償を払わされてるみたいだった。


「全部、ちーちゃんの思い通りなのに、何が不満なの?」


不満とかじゃない。自分でも、何なのかわからない。加島に嫉妬なのか、ミホに嫉妬なのか、小崎に嫉妬なのか、何なのか……わからない。


「私、茂木先生と泳いで来る。邪魔しちゃ悪いかもしれないけど……。」

「ちょっと、ちょっと待ってよミホ!!」

私はミホを追いかけて、プールサイドのベンチの近くで引き止めた。


この亀裂を今放置してしまえば、このまま完全に引き裂かれる気がした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ