後悔はない
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いっそのこと…………野々村に催眠術をかけられたらいいのに。
「加島、今日学校?」
「野々村、お前も?」
駅でバッタリ、野々村に会った。
今日は日野さんに、バスケとプールに誘われた。可愛い子達が来るって言って言ってたけど…………まさか……。
「今日、日野さんからプールの誘いがあって……」
「やっぱり……。」
「やっぱりって?加島も?じゃあ……。」
おそらく、小崎と芦原さんも呼ばれてるはず。そう、二人同時に考えたのか、野々村はこう言った。
「日野さん、私達の事、茂木先生から聞いたのかな?」
「だとしたら、茂木先生は小崎か芦原さんから聞いたかな?」
「何か……ムカつく。カウンセラーって話聞くだけでしょ?話聞くだけの奴がどうして首突っ込むの?」
野々村、今日はやけにイラついてるな。
「大体、人の話聞いてどうこうしてやろうって考えがムカつく。話聞くだけなんだから、余計な事すんなっての。」
「どうした?野々村?」
「何でもない。」
何でもない訳が無いだろ……。本当にそう思ってたら、今ここに来てないはずだ。
「だって……ミホが悪いんだよ?」
「芦原さんと喧嘩でもした?」
「聞いてないの?全然悪気無かったから、謝れって言ったんだよ。」
どうやら、小崎との事に野々村は腹を立てているようだった。
「謝ってもらったよ。」
「悔しくないの?」
「別に?」
何故?とは思ったが、不思議と腹は立たなかった。
「バカじゃない?あんたがそうゆう態度だからバカにされるんじゃない!」
「バカにしてる?芦原さんは俺をバカにしてるから小崎とキスしたと思ってんの?」
「そうだよ!そうとしか考えられないよ!」
もういいんだ。俺は芦原さんに、箸にも棒にもかかってない事くらい、わかってる。
「でも、それはお互い様だろ?」
「はぁ?私達のそれは違うでしょ!?そうゆんじゃないでしょ?」
確かに、そうゆんじゃない。小崎と芦原さんも、そうゆうんじゃないって言われたら……それまでだ。
「そんなの、どっちでも関係ないだろ?俺、芦原さんに謝ったよ。野々村とした事。」
「ミホに言ったの!?」
「え?何か不味かった?こうゆうのは正直に言った方が……」
野々村は急にばつの悪そうな顔をした。
「…………最悪。」
そんな話をされても、俺はどこか小崎を信じてた。小崎は友達をバカにするような奴じゃない。
「最低。ミホも加島も小崎も最低!!」
「あははははは!お前もな。ホント、最低だな。あははははは!」
「笑い事じゃないでしょ!?」
本当に最低だ。野々村に面と向かってそう言われて、何だか笑えた。
「お~!二人とも、乗って!乗って!」
日野さんは、何の説明もなく、俺と野々村を車に乗せた。
「よ!やっぱみんな呼ばれたんだ!」
車の中では、隣の野々村はずっと黙っていた。後ろの小崎と芦原さんと全然目を合わせようとしない。実際こうやって四人同じ車に乗っても、上手くは話せなかった。そのうち…………全員が黙った。
俺は外の風景を眺めながら、野々村をこんなに悩ませるなら……いっそのこと催眠術かけて、忘れさせてやれたらいいのにな~とか、ふと思った。
それは、何も無かった事にしたいって事か?何も無かった事にしたら…………俺の気持ちはもっと恐ろしい物になっていたかもしれない。そう思うと、俺は野々村とキスした事に後悔は無いのかもしれない。




