似てる
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「可愛いね~!何歳?」
「……。」
「黙るな雅!何歳か聞かれてるぞ!」
あの後、私は加島君の家に行った。加島君の弟は…………何だか誰かさんに似ていた。
「2歳……。」
「あの、犬の年じゃなくて……」
「8。」
あ、8歳なんだ。
「ちゃんと話をしないと、ケンタはとりあげるぞ。」
そう言って加島君は子犬を弟から取り上げた。
「……。」
「あの、突然お邪魔してごめんね。雅君も、ごめんね。」
「いいよ。芦原さんならいつでも大歓迎だよ。」
「……。」
あ、やっぱ弟は黙る。
「こいつ、似てるだろ?」
「え?」
「小崎に。弟と似てるんだよな~だから、小崎の事ほっとけないんだ。」
「ケンタ……。」
「何?ケンタ返して欲しいならちゃんとそう言えよ。」
「…………。」
「雅、黙るな!黙るな雅!」
加島君意外と弟に厳しい……。
「ケンタ……返して。」
弟にそう言われて、加島君は子犬を弟に返して言った。
「あいつ、ケンタの事になると必死になるんだ。苦手な朗読の宿題も、縄跳びも、必死でやるんだ。弟見てるとさ、ケンタが芦原さんに見えて来るんだよね。小崎はさ……あいつは、芦原さんの隣にいる事に必死なのかもしれないなって。」
「は?」
「そこに横取りする悪い俺。あははははは!」
そこ笑う所?加島君は悪者じゃないよ。ただの被害者だよ。
「小崎、喋るの苦手なのに、俺にはよく喋るから……なんか愛着が沸いてさ、一緒にいるようになったんだよ。」
やめてよ……。そんな事聞いたら悠太との事…………話しづらいよ。悠太にとって、加島君がどれだけ大事かわかる。だから……加島君を好きになるように言ったんだ……。
「だったら、私の事も譲ればいいのに。」
「ダメ。譲れない。芦原さんは譲れない。そんな事言いに、家まで来たの?」
そうじゃないけど…………
やっと気がついた。自分のしでかした事に…………。私がした事は、加島君も、悠太も苦しめる。
本当の悪者は私だ……。ちーちゃんに責められても仕方がない。それほどの事をしたんだ。
加島君の弟が犬の散歩に出かけて行くと、二人きりになった。
謝らなきゃ……。
「あのね、加島君、私……」
「ごめん。」
は…………?
私が謝る前に、加島君に謝られた。
「この前、事情があって、野々村とキスした。あの、別に浮気とかそうゆうんじゃないから!」
「今…………誰とって言った?」
「野々村……って……。」
どうして?どうしてなの?ちーちゃん…………