懺悔
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「あのさ…………芦原さん、もう夏休みだよね?夏休みって、学校休みだよね?」
「だって、夏休みも話したい事があったら茂木先生にアポ取って学校来ていいって教頭が言ってたから~!」
茂木先生はそこは気を使ってよ……という顔をしていた。この前の事があってから、対応が雑になった気がする……。
「それより、この前の事、忘れてないよね?」
やっぱり茂木先生怒ってるよね~!
「この前はごめんなさい!茂木先生のパンツを守れなくてごめんなさい!」
「謝る所違うから!」
「あ、じゃあ、鼻血で日野さんを死にそうにさせてすみませんでした。」
茂木先生は恥ずかしそうに顔を隠した。
「そこも聞いてた~?もう嫌~!」
それでも、何となく茂木先生の雰囲気が柔らかくなったような気がする。きっと日野さんと上手くいってるんじゃないかな?そう期待しちゃった。
「先生、今日はもっと懺悔する事があって来ました……。」
「もっと懺悔!?何?また閉じ込めるの?」
先生は立ち上がって少し身構えた。
「あ、先生にイタズラ予告とかじゃないです。」
先生は椅子に一旦座ると、もう一度椅子に座り直した。
「懺悔って…………何したの?」
「彼氏の友達とキスしました。」
「は…………彼氏?」
私と加島君が付き合っていると言ったら何故か…………先生は悲しい顔をした。
悲しい顔をして言った。
「前にね、小崎君に言ったの。おとぎ話の魔法はキスで解けるって…………魔法は解けた?」
「解ける訳無いですよね?だって……最初からかかってないんだもん。」
「かかってない…………?だって、小崎君あんなに一生懸命元の美帆乃に戻って欲しいって…………」
「魔法にかかっていたとしたら、それは、悠太の方かもしれません。現実を見ようとしなくて、私の存在を小学生のまま心に閉じ込めて、閉じ込めた心から背を向けた。小学生の私なら、恋愛としての好きや嫌いは関係ないから……。」
「小崎君にかかった魔法が、早く解けるといいね。」
きるなら、キスで魔法が解けて欲しい。
「あーあ、本当に好きな人がゴーレムだったらいいのに。」
私のその一言に茂木先生は吹き出した。
「ぶっ!あはははは…………あ、ごめんなさい!ここ笑う所じゃないよね?」
「いえ、笑う所ですよ?」
先生の笑顔を見たら…………何だか少し……ホッとした。
私はずるい。
本当は…………絶対に責めないってわかってて、先生に話した。