裏切り者
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突きつけられた事実は…………思ったより重かった。今でも、昨日の事を思い出すと…………胸が苦しい。
罪悪感で…………加島の顔がマトモに見られなかった。
せめてもの救いは、夏休みに入って、加島と顔を合わせるのは部活だけという事だ。
「お前ら…………何かあった?」
「え?」
先輩にそう言われて、加島と声がハモってしまった。
「今日、なんかお互い、よそよそしくねーか?」
「おい、そこは突っ込むなよ。お前野暮だな。そりゃ、こいつらにもそれなりの事情はあるだろ。」
それ……どんな事情ですか?
「いやいや、先輩、違いますよ?痴話喧嘩とかじゃないですからね?」
痴話喧嘩…………痴話喧嘩って恋仲の間でやるもんだよな?
「…………。」
「小崎!黙るな!!黙るな小崎!!」
「お前らもうキスとかしたの?」
「キスぅ!?」
また加島と声がハモった。
「お前、それはさすがにデリカシーの無い質問だろ。」
「い、いやいや、先輩、だから俺達違いますよ!」
加島、動揺しすぎだ。それじゃ、まるで僕達が本当に何かあったみたいだぞ?
「…………。」
「だから、小崎!黙るな!!黙るな小崎!!」
黙らずにはいられなかった。何も言葉が出ない。だって…………昨日の事を思い出して…………心臓が破れそうなくらい、胸が苦しかった。
「え……なんか、小崎の顔が赤いぞ?」
「え…………。」
その場にいる先輩達が僕を見て、その後、加島を見て…………引いていた。
「違っ!小崎!顔を赤くするな!お前、マジで勘違いされるから!」
「…………ごめん。ごめん、加島……。」
「いやその、リアルに謝る感じやめろ!」
その後、先輩達も謝っていた。
「謝るとか、リアルな雰囲気になるじゃないですか!やめて下さいよ!!」
ごめん…………加島…………。
僕はバカだ。
僕にはもう、加島と笑う資格なんかないんだ。僕は…………裏切り者だ。