本心
50
ミホを玄関で送った後、体育館に行った。体育館では、小崎がまだ練習していた。
「これで本当に良かったの?小崎。」
「うん、助かった。」
そう言って小崎はまたシュートの練習をしていた。
ミホと加島の反応で、薄々そうじゃないかな?とは思ってたけど……実際加島にミホを譲るとなると、少し寂しかった。
「しっかし、相変わらず下手だねぇ~!教えてあげる。ひじ、こう。角度90度保って。」
「野々村は……バスケ経験者?」
「中学までね~!」
未経験でここまでできるわけがないでしょ。
「小崎はどうして急に始めようとと思ったの?」
「一番……無理だと思ったから。」
「はぁ?普通、無理な事じゃなくて、できそうな事やるんじゃないの?」
相変わらず、私には理解できない。
小崎はそれから、何度も何度もシュートをするけど…………全然入らない。
「こうやって、集中して打ち込んでいれば、忘れていられる。バスケの事を考えていれば、他の事を考えなくていい。」
「まぁ、ボール触ってると余計な事考えたりしないよね。」
余計な事…………?余計じゃないよね?
「小崎!バカ!バカか小崎!!」
「バカ……下手じゃなくて?バカ?」
「ちゃんと考えろ!!本当はミホの事どう思ってるのか、ちゃんと考えろ!!」
他人の事言えないけど…………。
「考えて…………答えが出たんだよ。」
答え…………?これが?
「僕は恋人が欲しい訳じゃない。友達が欲しいんだ。」
「それ、どっちかなの?どっちも欲しいとは思わないの?」
「野々村は欲張りだね。」
欲張り?それが普通じゃない?
「あのさ、小崎、本当にシュート入れたい?」
「は?」
「入ればいいな~とか、何となくこのくらいかなとか、そんなんじゃ、いつまでたっても入るようにはならないよ。絶対に入れる!シュート決めてやる!!自分のボールに最後まで責任持ちなよ。」
小崎が本心でバスケを上達したいとは思えないよ…………。だって、本当にやりたい奴に、普通そんなアドバイスしない。
「やっぱりいた!」
体育館の入り口からミホと加島が入って来た。え?何で?さっき、二人で帰ったはず……。
「ミホ!どうして?」
「校門で日野さんに会ったんだよ!」
「日野さん来てるの?」
日野さんって…………茂木先生の彼氏?が、何しに?
「茂木先生といい感じになってるからみんなで見に行こう!」
いやいや、いい感じになってたら邪魔じゃない?それ、邪魔しに行くって言うんだよ?