怪しいやつ
47
好きだと伝えれば、伝えられたその人は自然と好きになるとか…………それって脈のある人だけじゃね?
その脈って…………どうすりゃわかるの?一体誰が教えてくれるの?
菜都美先輩と連絡が取れなくなって、2週間近く経つ。今さら何の弁解もしようがないけど…………来てしまった。やっちまった……。
ヤバい。俺ヤバいよ。
職場の前で待ち伏せって…………俺、ヤバくない?一応菜都美先輩に連絡したけど……既読にさえならない。
あ、知り合い出てきた!えーと、あれは確か小崎の幼なじみの……。
俺が話しかけようと近づくと、何やら二人で話をしている様子だった。
「芦原さん、俺、芦原さんの事、本気で好きなんだ。」
えぇええええ!!このタイミングで告白!?ここ校門だぞ?ムードもへったくれもない!!
あれ?あの子…………芦原さんだっけ?隣にいるのは…………よく見たら小崎…………じゃない!!小崎の友達のバスケ少年の方だ!!じゃあ……これって……三角関係!?
この前、男と女の勝負って言ってたけど……むしろこっちが本当の勝負だな。
「加島君…………あのね、あの…………無理!!」
「いや、無理とか無理!!」
「いやいや、無理だよ。」
「いやいやいや、無理とか無理だから。」
バスケ少年、それ断られてるよ!ガッツリ断られてるから!そこまで粘るとか……ハートが強いな!!
「芦原さんが俺の事好きになるまで待つ!!それまでは…………何もしない。」
そこは紳士だな。偉いぞ少年。
「でも、できるなら…………これから沢山、二人の思い出作りたいな。」
俺は思わず自分の顔を隠した。自分が言った訳じゃないのに、何だか恥ずかしい。マジかぁ…………これが若さか~!なんだろう……甘酸っぱいというか、ほっこりするというか……。
「あ、日野さん!」
ヤバい!芦原さんに見つかった!立ち聞きしてたのがバレる!!
「やぁ、偶然だね。」
高校の校門の前で偶然装ってる大学生ってやっぱり怪しいよなぁ……。