無視
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「小崎!」
くっそ無視か!?
「おいこら小崎!!」
「あ、すまん。考え事してた。」
いや、今の絶対無視だったよな?
「あ、どこ行くんだよ!」
「…………。」
くっそ無視か!?
「あ、すまん。考え事してた。」
いやいや、今のこそ絶対無視だよな?
「だからどこ行くんだよ?」
「…………。」
「小崎!黙るな!!黙るな小崎!!」
明らかに様子がおかしい。
「あ、ちょっと待て小崎!」
俺が小崎の後を追っていると、野々村に止められた。
「何?加島、どうして男のケツ追っかけてるの?」
「好きで男のケツ追っかけてんじゃねーよ!できるなら女のケツ追っかけたいっつの!!」
何のカミングアウトだよ!!
「小崎とちゃんと話がしたいのに、あいつ明らかに逃げてるんだ。」
「話?」
あれから1週間、芦原さんも俺も、付き合っている事を誰にも言えずにいた。
と、言うより、俺達本当に付き合ってるのか疑問すら感じる。一緒に帰った事も、一緒にお昼を食べた事も、ましてや手をつないだりハグしたりなんて、一度もない。何もない。夢か?あれは夢なのか?
「何が夢なの?」
「あ、いや、芦原さんと付き合う事になったのは夢で、俺の勘違いなんじゃないかと……。」
「へぇ……。あんた達付き合い始めたんだ。」
そうそう…………ってスベった~!!
「え?さっきのボケ?それはスベってるわ。」
「そうゆう事じゃねーよ!」
「加島さ、たまに心の声漏れてるよ?自覚ないの?」
そうゆう事かぁ~!!
「まぁ、正確にはそう言ってるだろうなって事が伝わるって話だけどね。」
「じゃあ、俺の態度で、小崎は何となく言いたい事がわかってるのか……だから逃げてるんだろうな……。」
「だろうね。ぶっちゃけ小崎だけじゃなくて、クラス中わかってるよ。」
クラス中…………!?
「噂だよ~?加島に女ができたから、小崎が嫉妬して無視してるって。」
「おい、ちょっと待て!それ、俺と小崎が付き合ってる前提の話だよな?」
ダメだ。小崎に話しして、公言する!!芦原さんと付き合ってると!!
バスケ部にはいるはずだ。バスケ部の部室に入ろうとした。中から、小崎と先輩の話声が聞こえて、思わずドアを開ける手が止まった。
「小崎、お前そんなに下手くそなのに、何でバスケ部辞めねーの?」
「辞めるべきですか?」
「いや、辞めろとは言ってねーよ。でも、このままじゃ3年間一度もレギュラー取れずに終わるぞ?いいのか?それより、自分に合った事やった方がいいんじゃねーの?」
要は…………バスケ部で無駄な時間過ごすより、他の事をやった方がいいという率直なアドバイスだった。
「でも、ある人に言われてから、何でも諦めない事にしてるんです。苦手な事を、やれないと言ってやらないよりは……格好悪くてもやった方がいい。そう、言われたので……。」
それは…………誰の言葉?ある人って…………。
「いや、でも、小崎はあれだろ?ほら、加島目当てだろ?」
「え?そうなの?まぁ、それなら…………」
いやいやいや!!違う違う違う!!
「…………。」
「小崎!黙るな!!黙るな小崎!!」
思わずドアを勢いよく開けて叫んでいた。
「ちゃんと否定しろ!!」