これからの事
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私は…………二人に話を聞いていたのに、どうしてこんな事になったんだろう……。この仕事を始めて、こんなにも力不足を感じたのは初めてだった。
私に専門的知識があれば、もっと話を聞き出せたかもしれないし、もっといいアドバイスができたかもしれない。二人が離れる事も無かったのかもしれない。そんな考えが頭に浮かんだ。
私は…………やっぱりこの仕事向いて無いのかな……?
そんな話を聞いてもらいたくても…………一番聞いてもらいたい人とは、断絶状態だった。
バスケの試合の後、日野君と一緒に住む事が具体的になってきた。
でも、その後…………
珍しく日野君が、約束に遅刻してきた。
「どうしたの?珍しいね。」
今まで遅刻してきた事なんか一度もない。
「あの…………正直に言います!別れ話してました。いや、俺はとっくに終わってたと思ってたんですけど……話がなかなか終わらなくて……。」
「…………。」
その言葉に言葉を失った。
はぁ?
心の声はこうだった。
待って?私と同棲するとかどうとか言っておきながら、他の女と付き合ってたの?
あり得ない……。
「日野君、やっぱり……一緒に住むのは止めよう。」
「どうしてですか?あんなに乗り気だったのに……。もしかして、正直に言ったのがダメでしたか?でも、隠すのは違うと思って……。」
「日野君の言いたい事はわかる。けど…………」
聞きたく無かった。
正直に言ってもらった事は嬉しい。でも…………知りたくなかった。
こう、思いたくなかった。
日野君はやっぱり…………って。
日野君は小崎君とは逆で、思った事をストレートに伝えて来る。だけど、その素直な言葉は…………逆に怖くなる。
私を追い詰める。
他の女の存在は、日野君が好きならきっと腹が立つはず。でも、私、そんなに腹立った?
今ならまだ間に合う。ちゃんと考えてみよう。私は本当に…………日野君が好きなのかな?
「わかるけど……何ですか?やっぱり…………信じられない。ですか?」
「…………。」
日野君は覚悟の上で言ったんだ。
私、試されてる?
「わかるけど、もう少し時間をください。」
「時間っていつまでですか?」
「…………夏休みが開ける頃かな?」
もうすぐ…………夏が来る。
夏休みの間、これからの事、ちゃんと考えよう。