望み通り
38
「目覚めた時には…………加島を好きになる。」
悠太がそう言った。その真意がわからない。
自分の好きな人を好きになって欲しいって事なのか、男として加島君とつき合えって事なのか…………どっち?
どっちにしても、私…………フラれてる。私…………フラれた?
私はその時、何も考えられなくて…………何も言わず部屋の外に出た。やっぱりヤダ!!もう一度、部屋に入ろうとした。
でも、そのドアは開けられなかった。次にこのドアを開けたら、悠太にどんな自分で接すればいいの?
催眠術にかかったふりして、加島君を好きになったふりをすればいい?それとも…………潔くフラれなきゃダメ?
悠太の部屋のドアは…………あまりに重く、厚く感じた。
今まで、悠太の側にいても、何も言われなかった。だから、悠太も私の事好きでいてくれてるのかと思ってた。何も言わないのは……好きだからじゃなかった。私が勝手に…………そう勘違いしてただけなんだ。
今までの二人の時間って…………何だったの?
何故か……涙は出なかった。放心状態のまま、悠太の家を出ると、加島君とバッタリ会った。
「あ、芦原さん。今帰り?これ、小崎の忘れ物届けて…………」
「加島君、私と付き合って。」
「はぁ?!」
催眠術に、かかればいいんだよね?
「どうしたの?突然?」
「催眠術にかかったから。」
「はぁ?」
催眠術に、かかれば……。
「付き合ってくれるの?くれないの?」
「小崎は……?小崎は何て?」
「悠太は関係ないでしょ。」
かかればいいんでしょ?かかれば!!だったら望み通りにするだけ。悠太のバカ!!