ポイント加算
34
「ちーちゃん、元気無いね……。大丈夫?」
教室でお昼ご飯を食べていると、ミホに突然訊かれた。
「え?あ、うん。大丈夫だよ。」
「何かあった?それとも私のせい?」
ミホのせいかどうかと訊かれると……そうかもしれない。
「私が落ち込んでるから、ちーちゃんまで暗くなっちゃったんだよね。ごめんね?」
「違うよ。ミホのせいじゃないよ。」
「ちーちゃんは優しいから本当の事言わないんだよね。思い切りがいいようで意外と気にしすぎな所あるよね。」
「私が落ち込んでるのはね、加島君がいい人だったから。だって、ちーちゃんを助けてくれたんだよ?隣に好きな人もいたのに、ちーちゃんを助けてくれた!」
「うん、確かに加島はいい奴だけど……。」
足が引っかかった小崎の方は、床に倒れた。でもそれは、単純に私の方が近くにいたから。あの状況で、好きな人かどうかなんて判断できる?できないんじゃない?私を助けたんじゃなくて、たまたまそこにいた誰かを助けただけなのに……。
その勘違いを加島にそれとなく伝えたら…………
「マジで!?芦原さんに認められた!?」
と言っていた。
加島のやつ、何喜んでんの?ミホがそんなに簡単に落ちるなら、お前は今頃苦労してないんだよ!!
加島のポイントが上がる=加島にポイント加算
ではなく、
加算のポイントが上がる=小崎の相手としてふさわしい人間かどうかのポイントか上がる。
「加島君がいい人だと……二人の仲を認めなきゃいけないじゃん?それになんだか納得いかなくて……。いっそのこと加島君が嫌な人だったら良かったのに……。」
ほぉらぁ~!だから早く告れって!バカ加島!!
「だから早く告れって言ったのに……。」
思わず口から本心がこぼれ出ていた。
「そうなんだけど……加島君は、フラれたら親友と好きな人同時に失う事になるでしょ?なかなか難しいんじゃない?」
親友と好きな人を同時に失う…………?それは、ミホに告っても同じだ。ミホと小崎、同時に失う可能性がある。やっぱり……私、全然他人の事考えられてない……。
もう、加島に告れって言うの止めよう。そして、謝ろう……。
「催眠術にかかったふりなんかしてないで、私もちゃんと告白すれば良かった……。そうすれば、こんな形で失恋しなくて済んだのに……。」
「ミホ、まだ失恋と決まった訳じゃないよ。」
落ち込んだミホに、そんな事しか言えなかった。
「何だか私、二人の仲を邪魔する悪者みたいだよね。」
「そんな事ないよ!幼なじみでしょ?小さい頃からの付き合いが邪魔だと思うなら、とっくに小崎はミホから離れてるよ。」
「そうかな…………?」
そう言ってミホは、窓の外の曇天を眺めていた。
「本当に好きな人ができたら……必要なくなって、捨てられちゃうんだと思う。」
そんな事…………ミホが言わないでよ。何だか……泣きそうになった。
「ごめん、トイレ行って来るね。」
本当に好きな人ができたら…………必要なくなって、捨てられちゃうの?それって…………友達も?
頭の中で、加島の言葉が私を責めた。
『お前さ、芦原さんと友達なんだろ?芦原さんの事までめんどくさいとか思ってる?』
『それって……自分の事しか考えられてないんだな。だから捨てられるんじゃね?』