試合
31
日曜日…………。
全然上達が見られないまま、試合当日が来た。俺は菜都実先輩に頼まれて審判をやる事になった。日曜暇って……試合も来いって事かよ!
「今日はよろしくお願いいたします!」
「ハーイ!☆@%$!」
ハーイ?おーい!英語の先生呼んだの誰だよ!?大きさ違いすぎて反則だから!子供に大人混ざるみたいなもんだから!芦原って子、勝つ気満々だな。
「加島君、これは男と女の戦いだからね?恨みっこ無しよ?加島君!!」
「芦原さん……。今日はよろしく。」
男と女の戦いって何?今時の高校生の考える事ってわかんね~!
それぞれ一列に並んで、波乱の試合が始まった。
小崎にパスが来た。おぉ!!小崎が取れた!!小崎がボールを取れた~!!クララが立ったぐらい感動的だ!!
もう、俺、小崎がパスが取れただけで満足なんだけど……。もう感無量。泣きそう……。
その後、隣に走って来た女子に、あっさりとボールを取られていた。
「小崎、気にするな。」
「悠太、次、次パスするからね!」
「いや、敵チームなんだから、美帆乃が俺にパスするのはおかしいだろ?」
妙に小崎の奴、気ィ使われてるし……。まぁ、気も使うわな。あのポンコツじゃ……。
また小崎にボールがまわって来た。すると…………
「加島!!俺にパスすんじゃねぇ!!」
おいおい!!そんなキレ方あるか?パスよこせ!は聞いたことあるけど、パス来てキレるやつとか初めてだよ!!
バスケでまだまだ初体験があるとは意外だったな……。
「トラベリング!」
「ファウル!」
「ダブルドリブル!」
反則の嵐で試合が全然進まねぇ!!
菜都実先輩が隣に来て言った。
「まぁまぁ、審判、そこは甘くしてあげてよ。試合って言ってもお遊びなんだから。」
そうだけど…………。お遊びって言っても試合だろ……?
でも……このポンコツ達が楽しくできる方法はなんだろう…………?
俺は笛を吹いて宣言した。
「みんな反則しすぎ!!……なので、これからは悪質な反則以外、反則取りません!!ですが…………」
「ですが?何?」
「そこのサッカー部!胸でボール受けるの止めろ!手を使え!!あと、そっちの女子バレー部!トスすんな!!ボールを地につけろ!!せめてこれだけはお願いします。それじゃ、再開!!」
バスケやってて初めて言った。手を使え、ボールを地につけろとか。
「日野君、ありがとう。」
「何がですか?」
「日野君のそうゆう所、いいなって思う。」
そう言った菜都実先輩の笑顔は…………終了の笛を吹くのを忘れるほど、印象的だった。