練習
30
こいつらが…………菜都実先輩を悩ませる高校生、芦原と小崎……。
が…………今は俺を悩ませている。
「どう?どうにかなりそう?」
「見てわかりますよね?」
全然上達が見られない。
もはやセンスどうのの問題じゃない。原因は多分、そもそもの筋力の無さ、持久力の無さだ。自分の体を自由に操れるほどの筋力がない。こればっかりは教えてどうにかなるものじゃない。
「師匠、体が痛くてもう無理です!」
小崎君は俺の事を師匠と呼ぶようになった。
「悠太どうしたの?怪我?怪我したの?」
「触るな……多分、筋肉痛。」
筋肉痛……って事は本人気にして最近筋トレとか始めた感じか?
それにしても…………ポンコツだ……。パスさえ取れないって、試合になるの?
「菜都実先輩、あいつ……小崎は……類いまれなれな才能の持ち主ですね……。」
「えぇっ!嘘!!芦原さんが小崎君は運動苦手だって言ってたのに!」
「ある種の才能ですよ…………!!こんなにできない奴、今まで会った事ないですよ!!」
先輩は安心したような納得したような反応だった。
「あ……そっち?でも、そこを何とか!!」
教えますよ。教えはしますよ?
でも…………彼らがこれ以上できるとは思えない……。
「じゃ、まずは一度レイアップやって見せるから、見てて。」
俺は軽くレイアップシュートをやって見せた。
「おお~!」
「おお~!!じゃないよ!これやるんだよ!」
「え…………。」
戦意喪失早っ!!二人とも顔に無理って書いてある……。いやいや、これできなきゃどうやって点取んの?とりあえず、リングに届かなきゃお話にならない。
菜都実先輩が拍手してくれた。
「日野君がバスケしてる所、初めて見たけど……カッコいいね!」
……よっしゃ!!ポイントゲットしましたぁ!!
ポンコツにバスケ教えて良かった!!引き受けて良かった!!
……と、喜びに浸っていたら…………
ゴンッ!と頭にボールを当てられた。
「あ、ごめんなさい!」
それを見ていた先輩が爆笑していた。カッコ悪……。マイナスポイント……。これじゃプラマイ0だ。
よし、こうなりゃこいつらを試合に出せるように特訓だ!!
「そうだ、日野君、今度の日曜暇?」
日曜日…………?