悪役
28
小崎が資料室を出て行こうとすると、野々村が俺を見つけるなり手を上げた。
「あ、加島!さっきいい忘れてたけど……資料室、小崎もいる…………って…………もう遅いか。」
ちょうど野々村と小崎がすれ違った。
野々村は俺の様子を見て言った。
「あれ?何かあった?」
「野々村が小崎もいるって言わなかったせいで、小崎と芦原さんを間違えた。」
「間違えて告った?告っちゃった?」
何でそんなに嬉しそうなんだよ……。
「告ってねーよ!お姫様抱っこしたわ!」
「ぎゃはははは!!お姫様抱っこ!?」
笑いすぎだ野々村!!
「それで何故か、小崎を賭けて芦原さんとバスケ対決する事になった。」
「あー、加島と勝負って……さっきのはそうゆう事なんだ。」
芦原さんは早速、野々村を誘ったらしい。
「好きな人とライバルを賭けて勝負……?何だか…………加島って…………可哀想な奴だね……。」
「止めろ……。そんな目で見るな。」
そんな憐れみの目で見られたのは生まれて初めてだ。今まで可哀想なんて言われた事は記憶にない。
「それ、試合で本気出せば出すほど誤解されるじゃん…………ぶっくっくっくっ…………」
野々村は手で口をふさいで笑った。笑い事じゃねーよ!!
「でもさ、そんなに心配した顔しなくていいって。ミホ、バスケやった事ないと思うし。」
「はぁ?」
やった事ないのに勝負って何故?!負ける気って事か!?芦原さんの考えが全然わからない。
「わからないけど、勝ち負け以外に目的があるんじゃない?」
勝ち負け以外に目的…………?
もしかして…………小崎のやる気を削いで、心を折るつもりか?!バスケの試合をやって、未経験者でも普通はこれくらいできるって小崎に見せたいんじゃ……。そこまでして俺から遠ざけたいのか?いや、遠ざけたいんだろうな……。普通に俺が遠ざかりたいんだけど。
何だろう……俺悪役?悪役なの?悪いのは俺?いや、親友の幼なじみ好きになった時点で悪役だよ?うん、けどこれ、なんか違う。なんか違う気がする!!
「頭の中、忙しそうだね。」
黙って考えていると、野々村がそう言った。
「まぁ、せいぜい悩みなよ。悪役さん!」
野々村はそう言って笑って去って行った。
え?俺、声に出てた?