頭に入らない
20
負けた…………。押し負けた……。
「悠太、何すねてるの?」
まさか……!!嘘だろ?高校生になったのに……。まだ美帆乃に押し負けるとか……無い。はず!!
「話、聞いてる?」
どんだけ僕は力が弱いんだ!?いや、どんだけ美帆乃が強いんだ?霊長類最強女子か?レスリング?レスリングやってんの?
「悠太、あのね……。私、本当は催眠術にかかってなかったの。」
ドアを押し負けた事がショック過ぎて、全然話が頭に入って来ない。頭に入って来ない!!
「ちょっと、冗談のつもりが、なかなか言い出せなくて……ごめんね。」
身長だって僕の方が高くなったし、体重だって…………体重の事は色々考えるのは止めよう。また美帆乃に怒られる。でも、美帆乃はデブじゃない。どこから?どこからその力が…………?
「ねぇ、聞いてた?」
「え?は?…………うん。」
僕は自分のベッドにうつぶせに倒れ込んだ。
そうだ、京都へ行こう。
みたいなノリで思った。
そうだ、筋トレをしよう。
そして、また茂木先生の所へ行こう。
「ねぇ、悠太!起きて!」
美帆乃に揺さぶられた。でも、相手をする気にはなれなかった。
「あのさ…………悠太は、加島君の事が好きなの?」
それは…………どっちの意味で?
「好きだけど?」
うつぶせのまま答えた。
「それは、友達としてだよね?さっきのは冗談だよね?冗談で……その……」
「…………。」
「ええっ!なんで黙るの!?ねぇ!!」
黙るしかなかった。黙れば…………
「そんなの嫌!だったら私、男になる!!」
「あーそうしてくれ!!」
美帆乃が男だったら良かったのに……。そう、何度も思った。
いや、だからそうゆう意味じゃないって。